Nicotto Town



お雑煮の起源

「日本全国お雑煮文化圏地図」というのを見つけた。

http://tg.tripadvisor.jp/Zouni/

よく西日本は丸餅、東日本は角餅と言うが、確かにそういう傾向があるようだ。
これは餅の性格付けと起源である料理法が原因であるする説がある。

中世まで文化の中心だった京都では、正月の餅は「鏡餅」として神前に供える物だった。
正月の七日、あるいは元旦をはさんで前後七日、飾っておき、八日目に割って小豆と一緒に煮て、今で言えば餅入りのお汁粉みたいにして食べるのが餅であった。

この場合、神様に供えた餅をお下がりで頂くわけだから、鏡餅は刃物で切ってはいけない。切るという行為は、神様に対して不敬となり縁起が悪いからだ。
木槌で文字通り「割る」のが正式な作法である。
これに対して角餅は「切り餅」とも言って刃物で切り分けるから、同じ餅でもルーツが違う事になる。

朝廷文化での餅は多分、鏡餅の人間用のレプリカだったのではないだろうか。
鏡餅は七日が過ぎるまで食べるわけにはいかない。
とは言え、人間も餅を食べたい。そこで鏡餅と同じ形の小さい餅を作って人間の食事用にした。
だから刃物を使わずにちぎって、手でこねて鏡餅と同じ円盤型にした。

切り餅の起源は武家社会の携帯保存食ではないかという説が有力だ。
遠出の時、特に戦争の遠征の時には、そのまま持ち運べて火にくべて焼くだけで手軽に食べられる。
いわば野戦でのインスタント食品として広まったのだろう。

だから手で円盤型にこねるなどという手間のかかる製法は取らず、刃物で切り分けるという方法を取った。
お供え物ではなく実用性重視の結果だ。
だから武家文化の影響が強い東日本では圧倒的に、雑煮の餅も焼いてから入れる方が多い。

またお雑煮と言うとハレの日のご馳走というイメージが強いが、「雑」の字が入っているところから見て、本来は「粗末な食事」というイメージだったはずだ。
遠征中の武士が野原や山の中の陣などで、焼いた餅に山菜や狩った鳥などの肉を煮た汁をかけた野戦食がその起源だろう。

公家文化の影響が強い地域では、餅はハレの日の特別な食品なので、食べる際には焼かずに煮る、という手間のかかる調理法を厭わなかった。
また餅を鏡餅のレプリカだととらえるなら、それを直接火にかけて焼くのは縁起が悪い。
西日本に「餅を煮る」雑煮が多いのはそのせいではないだろうか?

現在のような形で「正月には雑煮」が常識になったのは、江戸時代初期だという説がある。
徳川家康が、天下が平和になって武士の食全般がぜいたくになって来たので、それを戒めるために正月にウサギの肉入りの雑煮を自ら食べて見せたのが起源だという話もある。

もし本当ならこの雑煮は明らかに野戦食であり、戦場の苦労を忘れるな、という意味になる。
だからこの場合の雑煮はご馳走ではなく、粗末な野外食である。
正月だからこそ、雑煮という「粗末な物」を食べて気を引き締めよ、という話だった事になる。

やがて公家、武家両方の起源の食文化が庶民に普及していく過程で両者の融合が起こり、現在のような多種多様な雑煮が「正月のご馳走」として定着していったのだろう。

また正月に餅が定番になったのは、神様が人間世界に来ている正月前後の七日間はかまどで火を使わない、という風習が広がったからである。
餅なら火鉢だけで焼くなり煮るなりするだけで食べられるので、かまどを使う必要がない。
これがいつしか、正月三が日はかまどを使わないという風習になり、家の女性陣を家事から解放する事になった。

副食もそのまま数日間常温で保存出来るメニューになり、これがいわゆる「おせち料理」である。
正月三が日は女性が家事から解放され、火鉢だけで調理出来る餅と保存食であるおせちだけ食べて過ごすようになったわけだ。

現在の便利な生活様式ではピンと来ないだろうが、これが雑煮やおせち料理のおおまかな起源である。
最近はおせち料理が逆に洋風や中華風など豪勢になる傾向にあるが、正月ごとに昔の日本人の生活、食文化を再考する契機にしたい。

今後日本はますます国際化の潮流に直面するようになるだろうが、そういう時代に最も大事な事は自分の文化的ルーツをきちんと知っておく事である。
その上で肯定する、否定するは個人の自由だが、自分のルーツをちゃんと知らないまま大人になると周りに振り回されやすくなる。

餅、おせち、その他いろんな伝統文化に接する事の多い正月は、その絶好の機会である。

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2012/01/05 22:57
勉強になりました。同じジャンルの料理でも全然違うのですね。
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2012/01/03 23:10
日本の伝統文化は一つ一つが奥深いものがあります
こういう文化が少しでも失われないようにしていきたいものですね
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2012/01/02 22:53
関西から見ると関東の四角い餅は不思議な存在であったりもします。
「いつ食べるんだ、それ?」みたいな。
スーパーでも普通に丸餅売っているし、田舎では餅つきも親類縁者集まって行っていたり・・・
つきたての餅は格別です。

鏡餅、関東にはないんですか?
鏡餅とかざりつけで三種の神器を表しているのだとか、鏡餅は蛇神様が原型だとか、山岳信仰につながるとか諸説あるみたいですが、信仰上のものであることは間違いないようで。
神様のものをいただくのだから少々かびていても問題なしと昔は言われていたそうですが、本当はよくはないらしいです。(見えなくても菌糸が中まで入り込んでいるので・・・)

お雑煮といえば餅もそうですが、何仕立てにするかも重要ですよね。
うちは普通にかつおで「すまし」にしますが、京都は白味噌が多いように聞きます。
四国では白味噌にあんこもちという地域もあるのだとか。
赤味噌の地域、あご出汁などバリエーションも豊富なのが面白いところですね。
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2012/01/02 20:17
民俗学は意外と面白かったりしますね^^
是非、時間があればそういった知識にも
見分を広めてみたいですね~(´∀` )ホノボノ
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2012/01/02 09:31
お餅やおせちにそんな伝統文化があったなんて凄い!!
ちなみにコロん家はお餅を焼き焼きしてお醤油仕立てにネギ鶏肉つう~
まぁ~貧乏ぽいぽいお雑煮!でも美味しいスヨ♪
三つ葉や柚子の皮もちびっと投入♪
お餅も深いんだぁ・・・(//ω//)←毎年~餅食っちゃ寝てデブするコロ




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