東京電力は資金繰りが苦しく青息吐息の状態のようだ。
値上げは頭にくるが、いいかげん原発を今後どうするのか、東電の分は政府がはっきりさせてやらないと決断のしようがない面もある。

まずは福島第二原発をどうするのか？
福島県知事の要望通り廃炉にするのか、世論の動向次第でまだ使うのか。
その場合、東北電力に売却する、という手もあるだろう。
もし東北電力が買ってくれたら、賠償金の原資になるし、地元の電力会社が運転する事になるなら安全面にももっと気を使うから、利用者も今よりは安心出来る。

もう一つは東通（ひがしどおり）原発の建設を続けるのか、やめるのか、そろそろはっきりさせた方がいい。

福島原発の事故後になって初めて、東電の原発が東北地方にある事実を知って驚いた人も多かったと思うが、この東通原発は青森県にある。
それも下北半島。ほとんど本州の北端だ。

ここには東北電力の東通原子力発電所もあって、原子炉１基で既に稼働していたが、福島の事故の後、再稼働できずに今は停止中である。
この隣の敷地に東京電力が、同じく東通原発という名の原子炉２基からなる原子力発電所を建設中なのだ。

当然この工事はストップしているようだが、今から５年後ぐらいに稼働させる予定だったというから、この工事を続けるべきか、やめるべきか、いいかげん東電には決断させないといけない。
しかしそれには、原発の新規建設を今後認めるのかどうか、政府の方針をはっきりさせないと東電も決断の下しようがないだろう。

既存の原発の再稼働さえ不可能な状況なのだから、東電の原発を新たに一か所東北に開設する事が、果たして可能だろうか？
原発に関しては、各電力会社の管内にしか作れなくなる可能性もある。

さらに政府が新規原発を認めないという事になれば、東電の東通原発は完成する事はない。
建設工事は中断していても、土地や設備の保有コストはそれなりにかかっているだろうから、いつまでも決まらないままほったらかしだと、余計な出費がかさむ。
その結果東電の資金繰りが悪化すれば、福島原発事故の賠償に支障が出たり、東電管内でさらなる料金値上げという悪循環に陥る危険がある。

東電の東通原発を認めない場合、建設途中の状態で東北電力か独立系電力供給会社に売却するという手もある。
建物の土台は完成している状況らしいから、今からLNG火力発電所に改造する事も可能だろう。
もし売れれば、これも賠償の貴重な原資になる。

あと東北電力の能代火力発電所に建設中のNaS蓄電池施設の状況も気になる。
８万キロワットの蓄電が可能な優れ物なのだが、電池を稼働させるには２００度の高温に保っていなければならないため、火災を起こしやすい。
今年の１月には稼働する予定だったのだが、どこかの同型の電池が火災を起こしたため安全が確認されるまで、工事は中断しているらしい。

もしこの施設が成功すれば、日本中で大型のNaS電池蓄電施設を造って、夜間などのオフピーク時に余剰電力を貯めておけばいい。
相当ピーク時の需給調整が効くようになるはずだ。
また原発を再稼働させる場合、夜間の発電をこのタイプの蓄電施設で大規模に吸収するという方法もある。

春や秋の夜間は電力需要は相当低くなるが、火力と違って原子炉はそう簡単に出力を落とせない。
使い道のない電気を使うために揚水発電の施設があるのだが、直接蓄電出来るに越した事はないはずだ。

原発が今後数年ぐらい再稼働できない場合、東電に限らずピーク時の最大需要をどうやって賄うか、は頭の痛い問題になる。
再稼働出来たとしても、東電は福島第一と福島第二を失う可能性が高いから、大量蓄電の出来る施設は持った方がいいのではないか。

あと海外への原発プラント輸出もそろそろやるのか、やめるのか、政府が決断しないと将来にわたって禍根を残す。
トルコへの輸出はほとんど決まっていたのだが、建設後のメンテナンスの契約から東電が降りざるを得なくなったため、トルコ政府がしびれを切らせている。

他の電力会社に引き継がせてトルコへの輸出をするのか、それとも原発輸出はもうあきらめるのか？
これも政府が方針をはっきりさせないと、民間企業は身動きが取れない。

あと福島の除染の今後を考えたら、最終処分場の話をもっと早く進めるべきだ。
この場合、最終処分場は果たして一カ所でいいのか？という点から議論をするべきだろう。
原発からの廃棄物は各電力会社の管内で最終処分を、という意見が出たら、日本全国に複数の最終処分場が必要になる。

いずれにしても、首都圏で使う電力を本州の北端からはるばる送電する、というようなやり方は世論上も、安全上も、いつまでも続けられるものではないような気がする。