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エルピーダが残した教訓

エルピーダ・メモリーという会社が会社更生法の適用を申請、つまり倒産した。
借金、株式を一旦清算して、破綻企業としてやり直す事になるのだが、日本政府の産業政策能力の劣化を象徴する話に思えてならない。

エルピーダはいわゆる「国策会社」である。
DRAMというパソコンや家電に広く使われている半導体チップの専業メーカーとして設立された。
DRAMは1980年代まではNEC、日立、三菱電機などのエレクトロニクスメーカーが生産していて稼ぎ頭の一つだったのだが、パソコンの普及とともに韓国、台湾のメーカーが参入してきて、人件費の高い日本での生産は採算が取れなくなった。

日本のメーカーが相次いでDRAMの生産から撤退すると言い始めたため、政府がDRAMの国内生産の維持を目的として働きかけて設立されたのがエルピーダである。
DRAM無しではIT、ハイテク製品が作れないので、日本にメーカーが無くなると、万が一生産国が日本への供給をストップさせたら大変な事になる、という理由だった。

しかし、1990年代後半にはもうDRAMは世界的にありふれた製品になり、かつ価格も低下の一途をたどった。
これはどんな製品でもたどる経過で、コストの高い日本国内での生産にこだわり続けた結果、莫大な政府の資金援助をつぎ込んだ挙句に倒産してしまったわけだ。

第1の教訓は、20世紀に成功した日本の「モノ」作りに固執すべきでない、という事だ。
人件費の安い新興国で同じ製品が作れるようになったら、日本のような高コストの先進国が太刀打ちできないのは分かり切っていた事だ。
それを経済原則を無視して国内生産にこだわった結果、政府資金、つまり国民の払った税金をどぶに捨てる結果にしてしまった。

第2に、日本資本の企業製のDRAMの供給を確保するのが目的なら、国内で生産する必要はない事を政府が分かっていなかった事。
DRAMの工場は人件費の安い途上国に置いて、その会社が100%日本資本、あるいは過半数の株を日本資本が押さえていれば、供給途絶は起きなかったはずだ。

第3に、官僚の質の劣化。
エルピーダを巡っては経済産業省の当時の審議官が、その株式に関するインサイダー取引の疑いで逮捕されている。
国策会社だから、その経営方針に関しては経済産業省の強力な支援と、それに伴う指導があったはず。

こういう悪徳官僚自体は昔からいたから、その事には驚かない。
だがいかに国策会社とは言え、エルピーダ自体は民間の株式公開企業なのだから、この役人が自分の金銭的利益を得るために、経済合理性に明らかに反した決定を経産省内部でやっていたはずだ。

企業経営、経済合理性という観点からどう考えてもおかしい、という点に経済産業省の幹部が全然気づかなかった、あるいはそう思っていても止められなかった事になる。
そもそも台湾のメーカーと業務提携を模索し始めた時点で「日本資本によるDRAMの生産を継続する」という大義名分が怪しくなっていた。

マイクロン・テクノロジーとの提携では、資本提携まで視野に入っていたのだから、「日の丸メーカー」という前提自体が完全に崩れている。
ならばエルピーダをもう国策会社として扱う必要はなくなっていたはずで、民間の論理に委ねずにいつまでも国策会社扱いしてきた事が、破綻の最大の原因ではないのか?
この点をおかしいと思わずに逮捕された官僚の暴走にストップをかけられなかったという点にこそ、経済産業省の無能ぶりが表れている。

国策会社を作るなら他に急務の分野はいくらでもある。
最近読んだ本で気づかされたのだが、日本は外国からサイバー攻撃を受けた時に致命的な弱点を抱えている。
それは日本資本のセキュリティソフトウェアのメーカーが無い事だ。

今日本でポピュラーなウィルス対策などのソフトのメーカーは、まずシマンテック、マカフィー。いずれもアメリカの企業。
ウィルスバスターのメーカーであるトレンドマイクロ社は日本に本社を置いているが、設立は台湾資本で、2010年末の時点で58%超の株式を外国法人が所有している。
日本に本社があっても完全な外資系企業である。

現在スマートフォーンに対するハッキングや犯罪目的のソフトの流入が懸念されている。
とある日本の通信会社が自社のスマホ用のセキュリティソフトを開発してくれるよう頼みに行ったのだが、相手はカスペルスキーという情報セキュリティ会社だったと聞いた。
これはロシア企業で、株式が非公開である事から、ロシアの国策会社の可能性がある。

先進国、新興国でサイバー攻撃の危険に敏感な国はほとんどが自国資本の情報セキュリティ会社を持っている。
自国の情報セキュリティを外国、それも領土問題を抱えている国の会社に頼みに行かざるを得ない、というのが日本の現状なわけだ。

今日本に必要な国策会社はこういう分野であって、前世紀の遺物に税金をつぎ込むのはもうやめにして欲しい。

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2012/03/04 10:58
こんにちは*ご協力ありがとうございました*
とっても分かりやすく助かりました*
本当にちょっとしたお礼なのですが プレゼント
させていただきたいのでもしよろしければ、
お友達申請いたしますのでOKしていただければ
嬉しいです。送った後は解除してくださっても構いません。
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2012/03/02 21:50
外地に工場を作って、製品だけ輸入すれば良いってのは、一朝何か事が起これば、

  1.肝心の製品は手に入らなくなる
  2.知的ノウハウも含めた生産資源を根こそぎ相手方に奪われる

訳なので、抵抗が有るのは判るんですけどね。

ただまあ、元々太平洋戦争を始めないといけなくなったのは、諸外国が日本への石油輸出を止めると決定した為なので、所詮日本は輸入に頼らないと生きてけない国なのは、間違いないです。だからこそ外交大事なのにな。

んでもって、IT系は世界一速いスーパーコンピュータ作れても、OSから何から総て国産の物は無いのですよね。べりサインみたいな認証機関、RSAみたいな暗号管理機関、唯一国産の牙城だった携帯電話のOSもガラケーとか言われて、ボロボロだし。国産検索サイトはもちろん無し。

不知詠人 さんは兵器関係調べられてるので、ご存知と思いますが、日本が持ってる偵察衛星は気象衛星がほんの2台ほど、経路誘導用のGPSとかアメリカの一存で使えなくなると言う状況。アメリカがその気になったら、自衛隊とかメクラでツンボも同然です。アメリカに逆らえる訳がない。

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2012/03/02 09:15
ですね、、

もう、、、呆れるばかり、、、、
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2012/02/29 02:27
トレンドマイクロ社の外国株(法人・個人合算)ではこんなページも。
http://www.kabupro.jp/code/4704.htm
確かに外国の比率が高いですね。

例えば炭鉱を自国で燃料を確保できるからと今に至るまでエネルギー政策の中心に据えていたら今の日本はなかったでしょう。
生糸は明治の一大産業でしたが、いつまでもそれに固執していたらやはり現在の日本はなかったでしょう。
次に何が必要か、ある時期の人たちまでは見えていたように思われます。
それは官僚のみならず大企業の経営陣にもいえることでしょう。
見えなくなっているから泥沼に陥りつつあるような気も。

情報の価値がわかっていたら議員のウイルスメール騒動なんて起きていないんじゃないかなぁ。
本来はおっしゃるように国策にすべき価値があるものだとは思いますが。




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