Nicotto Town



名作リメークの難しさ

今度はサイボーグ009がリメークされるそうだ。

http://www.ph9.jp/

最初のマンガ連載が始まったのが1964年だから、半世紀近い人気を保っている名作なのだが、それだけにリメークは難しい。
これは他のマンガ作品にも言える事なのだが、時代の変遷によってオリジナルの世界観を忠実に再現する事が不可能な物が多いからだ。

特に日本製アニメの名作には「ブラック&シリアス」の傾向を強く持っている物が多く、これが魅力の源泉であると同時に、人権意識の進展によって、日本国内でさえ現在ではタブーになっている場合がある。

これが近年の新作なら開き直って作っているので、コアなファンに受け入れられればOKである。
例えば「Black Lagoon」や「ヨルムンガンド」は現代日本の人権感覚ではとんでもないストーリーだが、世界の現実はこうだ、という突きつけ方をする事によって受け入れられている。

サイボーグ009も発表当初はかなりブラックな設定だった。
それが何十年も再製作が続いた結果、映像作品では設定が変更され、その結果オリジナルが持っていたブラックさが薄れていく。

これはサイボーグ戦士たちのコスチュームにも表れている。
初期の作品では009だけは戦闘服の色が違っていた。
009は白っぽい服に赤いマフラー。他の8人はグレーの服に白いマフラーだったと記憶している。

これは他の8人がいわば試作品だったのに対し、009はその研究結果の集大成としての完成品であるという設定だったからだ。
だから009は9人の中でも特別な存在であり、一人だけコスチュームが違っていた。

カラーの映像作品になると、003フランソワーズ・アルヌールのコスチュームも赤い服に黄色いマフラーになり、009,003、その他のメンバーという区分けになった。
が、後期の作品では全員が赤い服、黄色いマフラーに統一されるようになった。
最新作もコスチュームはこのパターンだ。

この変化は日本社会、特に学校教育でエリート教育やリーダー養成が否定されてきた歴史と一致している。
009はリーダー的存在ではあるが、だからと言って一人だけ服装が特別なのはどうか?という意識が働いてきたのだろう。
003が女性だからと言ってこれまた服が別なのも男女平等の精神に反するという考えがおそらくは無意識的に製作者の頭に生まれてきたのだろうと思う。

しかし現代のそういう「良識」を当てはめていくとオリジナルの持ついい意味での「毒」を消してしまう危険がある。
サイボーグ009の各メンバーの人格設定は1960年代の世界情勢、日本の社会情勢の負の部分を背負っていたからこそ魅力があった。

001イワン・ウイスキーは脳改造を受けた赤ん坊。
実際20世紀半ばには「ロボトミー手術」と言って、脳の前頭葉という部分を切り取ってしまうという、今から考えれば乱暴極まりない精神病の治療手術が世界中で行われていた。
001のキャラ設定はそれが元になっていると思うが、これを現代先進国のモラルに抵触しないで表現できるのか?

002ジェット・リンクはニューヨークのストリートギャング。
原作漫画では対立グループのリーダーをナイフで刺して逃走中にブラック・ゴーストに拉致された。
最低でも傷害事件、下手すれば殺人事件の犯人だ。

003はフランスで誘拐されたバレリーナ志望の少女。
行方不明になった後も、周囲は「よくある事」で済ませてしまったという設定。

004アルベルト・ハインリッヒはドイツが東西に分裂していた時代に、東ベルリンから恋人を西側に連れ出そうとして失敗。
車を銃撃され恋人は即死、自分も全身を銃弾で撃ち抜かれ、その結果全身武器のサイボーグにされた。

005ジェロニモ・ジュニアは米国でのインディアン差別が原因でブラック・ゴーストの誘いに乗った。

006チャンチャンコは当時の中国の農村部の貧しさが原因でブラック・ゴーストに自分を売った。

007グレート・ブリテンは身を持ち崩した舞台役者だが、その原因は今で言うアルコール依存症。

008ピュンマは奴隷に売られかけたアフリカの黒人。

009島村ジョーは日本人と白人のハーフ。
ハーフであるが故に差別を受けて少年鑑別所に入れられ、そこを脱走した時ブラック・ゴーストに拾われた。
実際戦後でも見た目でそうと分かる外国人とのハーフに対する日本での差別は根深かったから、そういう世相を反映したキャラなのだ。

またブラック・ゴーストという組織も、よくある「世界征服を企む悪」ではなく、武器商人。
東西両陣営に武器兵器を売って儲けている組織で、009たちは究極の兵器として開発されたサイボーグ兵士。

ギルモア博士によってブラック・ゴーストの手から逃れ、この死の商人と戦う側になるのだが、だがブラック・ゴーストが存在しているのは冷戦構造の下で世界中が武器兵器を必要としているから。
これ、突き詰めれば009たちが戦っている相手は人類そのものという矛盾をはらんでいる。

こういう風に初期の009作品は微妙に毒を含んだ世界観だった。
そしてそこが魅力の源泉でもあった。
これが仮面ライダーとの大きな違いで、歴代ライダーの敵は全て「絶対的な悪」だったのに対し、009シリーズの敵には「勝った場合、相手はどうなっちゃうの?」という心配が常につきまとう。

そういう意味でマンガ、アニメといえども時代の変化と無縁ではいられない。
現在まで名作として残っている作品には必ずと言っていいほど、現代日本でそのまま出したら人権団体などから猛抗議を受ける内容が含まれている。

そういう毒を取り除くと古くからのファンには魅力がなくなったと思われるし、かと言って毒をそのままにしては映画やテレビでは公開しにくい。
名作のリメークはこの点でも、非常に難しい。

アバター
2012/08/20 23:15
私もこのリメークは「イヤ」なんだよね。
何故かというとジョーが学生服。。
学生服=年下。

かつて漫画の中でカッコいいお兄さんだったジョーが(泣)
原作でも学生服なんて着てないと思うけど 今風にすると学校行かないのが問題なのかな??
アバター
2012/08/17 09:34
http://www.youtube.com/watch?v=vrmbrbQ6c40
こんなんありやす♪

アバター
2012/08/14 21:32
それぞれのお国柄もあるし、、、

難しいですよね?

アバター
2012/08/13 21:06
思うに人権というのは「よくないと思うものをとにかく排除しよう」と考えた時点で自己矛盾していると思う。
排除されることで部落差別も人種差別も男女差別も起きているのに、別の何かを排除することで解決しようというのがね・・・

デビルマンも原作読んだときはぶっ飛んだものなぁ・・・
あのままお茶の間に流すわけにはいかなかっただろうけど、ソフトにした結果、原作者の意図も曖昧になってしまうというのも残念な話です。
R指定みたいに「過激な表現や思想が含まれているけど価値がある」作品を出す場を作ってしまうというのも手かも。

「地獄少女」は設定がそもそもぶっとんでるから現状でも結構厳しいストーリーがあったような・・・




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