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小泉改革の後始末が先

自民党の安倍政権が始動して、景気回復の期待が高まっているが、経済対策の本当の重要課題が分かっているのかどうか不安に感じる。
前回安倍さんが首相の座に就いた時、真っ先にやるべき事をやらなかったのが今の日本経済の惨状の原因だという事をちゃんと理解しているのだろうか?

日本銀行に大量に国債を買い取らせ、お金の流通量を増やし、意図的にマイルドなインフレを引き起こし、それによって景気回復、円高是正を図ろうという理屈そのものは正しいかもしれない。

しかし一番大事な事を忘れていないか?小泉改革の後始末である。
小泉純一郎氏が首相だった時に行った、派遣労働の大幅解禁などの経済政策、いわゆる「小泉改革」は新自由主義に基づく改革だった。
だが新自由主義改革は二段階で初めて完了する。

小泉改革は第一段階を行ったに過ぎず、本来ならその後継者であった第一次安倍政権が第二段階を行うべきだった。
ところがその第二段階に手をつけず、その後の福田、麻生内閣もこの第二段階に着手しなかった。

この第二段階とは、小泉改革で潤った企業に内部留保を吐き出させて労働者に富を還流させる事である。
これを法律、政策で企業に嫌でもやらせる。これが完了して初めて、新自由主義の改革は完成したと言えるわけだ。

だが実際には、小泉政権終了後、三代の自民党政権は抽象的なスローガンを並べるだけで、企業に内部留保を活用させる手を打たなかった。
具体的には、企業だけが潤った「戦後最長の好景気」の効果が続いているうちに、非正規雇用の規制を再び強化する、将来の成長分野と期待できる新規産業に投資させる、といった政策を行うべきだったのだ。

これをやらずに企業が内部留保を既存の製品の生産設備への投資などに注ぎ込む事を放置した結果、2008年秋のリーマンショックで一気に不況に落ち込んでしまい、非正規労働者は正社員になれるどころか、派遣切りに会って路頭に迷った。

また非正規雇用を野放しにしたままだったため、企業は正社員として雇用する人員数を極端に絞り込み、正社員になりたいのに派遣などの非正規労働者にしかなれない若者を激増させた。
これが経済格差を増大させ、現在の「格差社会」を招いたわけだ。

小泉改革は単純化して言えば、一旦労働者を低賃金の状態に陥れて、人件費負担が軽くなった企業だけを儲けさせる。
そして企業が充分に潤ったところで、正規雇用の職を増やす、従業員の給与収入を増やす、といった「企業から家計へ」のお金の流れを法的、政策的な強制で作り出す。

小泉改革はこの前段を行ったのであり、その後継者である安倍、福田、麻生内閣が後段の「新自由主義改革の総仕上げ」をしなければいけなかったのだ。
だが三代の政権がほとんど手をつけなかったため、格差だけが残ってしまった。

企業側も従来の製品、技術にしがみついてしまった結果、小泉改革でせっかく貯め込んだ内部留保を無駄な設備投資に使い果たしてしまった。
リーマンショック後はさらに低賃金を求めて海外移転を進め、ますます日本国内での雇用は減少する。

消費行動が最も旺盛であるはずの若者世代にまともな職がない、非正規雇用にしか就けず生活するだけで精いっぱいの収入しか得られない。
中高年も企業の賃下げ競争で年収は減る一方。

当然物を買わなくなるから在庫過剰になり、在庫をさばくには値下げするしかない。
しかし値下げして売ると企業の利益は減る。さらに正社員を減らし、非正規雇用で代替するようになる。
その結果失業者が増え、低賃金労働者が増え、大学を出ても就職できず、ますます物を買わなくなり、その結果企業はさらなる値下げを……

この状態を「デフレ・スパイラル」と言う。完全な悪循環である。
世間でお金が出回らないし、新規創業、起業などハイリスク過ぎて誰もやらなくなり、大口の借り手がいないから、銀行は本来の「起業の支援」の使命を放棄して、国債を買い漁って当座の利益を確保する。

ここで日本銀行がどれだけ大量の資金を民間銀行に供給しようと、国債の買い増しに注ぎ込まれるだけだ。
デフレの根本的な原因が現役世代の労働者の低賃金である以上、仮に景気が上向いたところで企業は儲けを内部留保、つまり貯金として死蔵してしまう。
あるいは数年後には新興工業国に追いつかれる既存の製品、技術の設備投資に注ぎ込んで、リーマンショック直後の惨状を再現してしまうだけだ。

公共投資にしても、やらないよりはマシだが、以前と同じ分野で同じような事業をやるなら、一時しのぎにはなっても格差社会の現実は変えられない。
日本全国で電線の地中化、照明器具のLEDへの一斉転換、などといった思い切った事をやらない限り、効果は一過性で終わるだろう。

健康上の理由があったとはいえ、一年で政権を投げ出した人がまた首相か?という批判は安倍首相も気にしているようだが、安倍首相や麻生副総理が「やり残した事」があるとすれば、小泉新自由主義改革の第二段階を一刻も早く完了させる事である。

安倍首相の罪は前回一年で政権を投げ出した事ではない。
小泉改革の仕上げを怠った事であり、その結果格差社会を常態化させた事である。
ここの反省がないまま行う「今までにない」経済政策は、日本を「美しい国」どころか、「貧すれば鈍するの醜い国」にする危険すらある。

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2013/01/02 23:43
今回の安倍内閣のブレーンは小泉改革のとき小泉首相の参謀役だった飯島氏らしいですが、彼がどのような視点で景気改善を考えているかはこの1年で出てくるんじゃなかろうかと思います。
とりあえずデフレ脱却という方向性ははっきりしていますが、これが国民の平均所得の向上につながるかどうかというのは確かに大きいと思います。
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2012/12/31 21:11
原発問題だけでも、もうダメなんじゃないかと、虚しくなります、、

こんな少年もいるのに、、、



食物システムの問題 11歳の少年による講演 遺伝子組換 モンサント
http://www.youtube.com/watch?v=eaNHCqkwl4c
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2012/12/31 19:26
企業の内部留保から家庭への還元は今でもできるものなのでしょうか?

不況である現在、企業のお金の拠り所は内部留保では……?
それを失うことになるのは企業としても困る。
企業の不評を買うのは安倍さんもしたくないのではと。
う~む、結局は安倍内閣がどれだけ思い切ったことができるかですね^^;
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2012/12/31 16:55
初めまして~^^読ませてもらいましたが、いい勉強になりました~政治のことあまり分からないですけど、新聞は読んでますw

私も今の方針では、ただの一時しのぎしかならないと思いますー
今の経済を立て直す為には、根本的なところをしっかり把握し、長期計画+思いきったことをしない限りは不可能だと考えてます。。

また訪問させて頂きます^^




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