涼宮ハルヒの憂鬱が視聴者のヒンシュクを買っているらしい。
ユーチューブに山本寛監督の「お詫びの言葉」なるものがアップされて、これがまた話題になっているとのこと。

もっとも山本さんは既に京都アニメーションを退職していてハルヒの第二期作品の制作には関わっていないのだから、この人がお詫びをするというのも変な話なのだが、それだけ「エンドレス・エイト」に怒り心頭のハルヒファンが多いという事なのだろう。

知らない人のために一応書いておくと、６月から「エンドレス・エイト」の一連のエピソードが始まり現在まで５話放映された。
この５話のストーリーがほとんど同じなのだ。「いつまで同じ話を繰り返すんだ！」と怒っている視聴者が多く、ネット上でも相当バッシングの書き込みがあるそうだ。

我輩も見ているが、一応話の展開が無いわけでもない。
エンドレス・エイトの一回目は夏休み最後の二週間の出来事を描いた。
同２回目の後半部分で、キョン君たち全員（正確には全地球が）夏休みの最後の二週間という同じ時間を、もう一万五千回以上も繰り返しているらしい、その原因は例によってハルヒの神のごとき能力らしい、と明らかにされる。
同３回目と４回目は、全く２回目と同じ話の繰り返し。
同５回目の最後の方で、ハルヒが８月３１日を「予備日として空けてあるけど・・・」と言ったセリフがカギらしい、と示唆されている。

原作小説読んだ人は結末を知っているだろうが、最低でもあと一話解決編があるのだから計６話をエンドレス・エイトのエピソードに費やした事になる。
これが１，２，５＆解決編の４話構成ならまだ理解出来るが、３，４回目はどう考えても余計で「ええかげんにせんかい！」と思った人が多かったのだろう。

我輩はそう批判、非難される事を計算に入れた上での確信犯だと思う。
ストーリーはほとんど同じ繰り返しだが、絵は毎回きちんと作り込んである。同じシーンでも登場人物の服とか周囲の風景とかのディテールは細かく描き分けてあるから、手抜きや回数稼ぎでない事は確かだ。

思うにこれは長門有希の視点を描いているではないか？
毎週毎週延々と同じようなシーンの繰り返しを見せられるというのは、まさにストーリー中で彼女が体験している事だ。
さすがに一万五千何回というわけにはいかないが、それを視聴者にも多少は体感してもらおうという意図ではあるまいか？

そうだとしても、視聴者からバッシングが起きるのは当たり前だが、演出上の実験、それも前例のない斬新な実験という意図なら、それはそれでアリだと思う。
批判、非難、バッシングを覚悟の上でやったというなら、ある意味勇気ある決断だ。

これを肯定するかどうかは人それぞれだが、我輩は今回の話知って、ファーストガンダムの第一回放映時の逸話を思い出した。

ガンダム第一作がテレビで放送された時、視聴者からもスポンサーからもバッシングを受けた。
当時のロボットアニメにはいくつかの約束事あるいは「常識」というべき物があって、ガンダム第一作はそれをことごとく意図的に無視した。

例えば、敵のロボットは毎回全く違ったデザインの物が次々に出てくる、というのが当時のロボットアニメの「常識」だった。ところがガンダムでは前半では「ザク」しか出てこない。
これは当時のスポンサーにとっては「非常識」以外の何物でもなかった。

また、ロボットアニメのストーリーは一話完結式がこれまた「常識」だった。が、ガンダムのストーリーは毎回切れ目なく連続していて、一回でも見逃すと話の展開が分からなくなる。
これは視聴者にも不評で、第一回放送時の視聴率は案の定低迷し、予定より短い回数で放映打ち切りにされた。

当時としては「非常識な作り方して打ち切り」という失敗作と見られていたのだが、しかし他に例を見ないリアリティが後日になって評価され、現在まで続編が作られる日本アニメ史上の金字塔的作品になっている。

今回ハルヒのスタッフがそんな事を考えて、あんな一見無意味な繰り返しをやったのかどうかは分からないが、バッシングを承知の上での大胆な冒険を敢えてやったのなら、それはそれでハルヒらしいと言えないだろうか？

とはいえ、個人的には「いつまでやるの？」と言う意見には賛成したくなってきた。来週こそ解決編見せてくれい！