Nicotto Town



ディーセント・ジョブの不足こそ深刻

アベノミクスが少しずつ効果を上げてきて、何となく世の中の景気が上向いてきているように言われている。
まず金持ちに消費をさせ、金を持っている企業から設備投資を始めさせ、その後で若年層の雇用環境改善、という順番で自民党政権は経済状態を良くするつもりらしい。

その理屈自体は正しいのだが、現在二十代、三十代、あと中高年で失業した経験のある人たちの場合、「雇用の質」とでも言うべき部分が、もう取り返しのつかない状態に陥っているのではないかという気がする。

「ディーセント・ジョブ」という言葉がある。英語の「decent job」から来ている。
簡単に言うと「まっとうな仕事」というような意味だ。
現在の日本ではこれが致命的に不足しているような気がする。
そしてこの問題は、景気がよくなって求人が増えれば自然と解決する、という話ではない。

ディーセント・ジョブというのは別に「大企業の正社員」という意味ではない。
非正規だろうと、アルバイトだろうと、派遣だろうと、その仕事が「汗水たらして働く」という物ならディーセント・ジョブである。

一方、「企業の正社員」であっても、悪徳商法や詐欺まがい商法の会社で働いていたら、それはディーセント・ジョブではない。
どうもそういうディーセントでない仕事に就いてしまう人が増えているように感じられてしょうがない。

単純な悪徳商法はもう東京のような都会では引っかかる人が少なくなって、地方に舞台を移しつつあるらしい。
最近東京で増えているのは「上がり込み商法」とでも呼ぶべき物のようだ。

どういう手口かというと、まず倒産したマンション販売会社の過去の顧客名簿や、大企業の社員名簿などをブラックマーケットで入手する。
そしてその時点でニュースで騒がれている、将来の不安を煽る効果のある話を探す。

たとえばマスコミが年金財政破綻の危機を盛んに報じていると、「もう公的年金はあてになりません。それに備えるいい方法があります」と来る。
震災後には「調査の結果、そちらのマンションは耐震性に問題がある事が判明しました」と言ってくる。

で、一度自宅に来て詳しい説明をしたいという事を電話で言ってくるのだが、具体的に何の話なのかは絶対に言わない。
ただひたすら「とにかく一度お宅に伺わせて下さい」と繰り返す。

電話の相手は若い女性か、朴訥だが誠実そうな口調の中年男性と相場は決まっている。
そこで自宅に呼んだら、強面のお兄さんが複数、一緒に押しかけてくる。
たいていは投資用マンションだの、怪しげな投資話が始まる。
そして一度家に上がり込んだが最後、契約するまで絶対出ていかない。

こういう手口の悪徳商法が今首都圏では流行っている。
どうして悪徳商法だと分かるのかと言うと、最初の電話が職場にかかってくるからだ。
普通まともな会社の勧誘なら、最初は自宅にかかってくるはずだ。

どんな会社でもそうだろうが、、いろんな所から電話がかかってくる職場なので、取り次がせないというわけにもいかない。
我輩はそういう手口を知っているので、のらりくらりとはぐらかす事も出来るが、職場にしつこく電話されて話し込まれると仕事に差し支えるので、つい自宅の電話番号を教えてしまう人もいるだろう。

さて、そんな悪徳商法の電話勧誘をやっている人たちはどんな悪党かというと、実は普通の善良な人である場合が多い。
だいたい詐欺や悪徳商法の最初の勧誘電話で、いかにも胡散臭い雰囲気の人間に電話させたら引っかかる馬鹿はいまどきいない。

そこで、就活に失敗したまま卒業してしまった新社会人や、リストラされて就職先を選んではいられない、という境遇の人たちを「正社員になれる」というエサで釣って、勧誘部隊にするらしい。

勧誘電話での話し方はマニュアルがあるようだ。
会社名も人も、売りつけようとしているとおぼしき商品、サービスの種類が全然違うのに、話の流れが全く同じだからだ。

投資用マンションの場合だと、まず最初に断ると、全然違う名前の会社から一週間ぐらい間を開けて似たような「今なら儲かりますよ」という勧誘電話が次々に入る。
それも全部断った頃合いで最初に断った会社から「どうでしょう? お考えは変わりましたか?」という話が来る。

この違う名前の会社、実態は全部同じ組織。
一つのオフィスビルの一室に五つもの会社が入っているケースもある。
いかにもマンション投資がブームであると思わせるための自作自演だ。

こういう共通パターンもある。
最初に中年の男性が勧誘電話をかけてきて、断り続けるとキレて失礼千万なセリフを口走る。
当然こちらは激怒して電話を切る。
数日後に、その上司と名乗る男性がお詫びの電話を入れてきて、担当者を変えたと言い、元気良さそうな若い女性が電話してくる。

これも全部最初から仕組まれた芝居である。
失礼を詫びて担当まで変えた、しかも男性である我輩には新卒か新卒同然らしき若い女性をあてがう。
そこまでしてくれたのなら、信用できる会社なのかなと思わせる、そういう筋書きである。

問題なのは、こういう勧誘員には自分のやっている事が「何か変だ」「なんかおかしいな」という意識が全然ない事である。
そんなマニュアル読まされた時点で、「あれ? これ変な仕事じゃないのか?」という疑問を全く持たないらしい。

たとえ正社員が増えても、こういういかがわしい仕事の「正社員」が増えたら、世の中にとっては決していい事にはならない。
また本人たちにとっても、その後まともな仕事が出来なくなる。

言葉巧みに人をだます、という行動に一度慣れてしまうと、他のまっとうな仕事に就けたとしても必ず昔の癖が出てしまう。
またそういう悪徳商法の会社に一度でも在籍すると、ブラックリストに載せられてしまっている場合がある。
転職先に出す履歴書に前の勤務先を書くと、その社名見ただけで採用担当者は落とす。

東京のような大都会で、なまじ四年制大学を出ていると、どうしてもホワイトカラーの職に就きたいのが人情だろう。
だが、ホワイトカラーの正社員というエサに釣られて、ろくでもない企業に入ると「ディーセントでない仕事」に染まってしまう。

そうなるぐらいなら、どんなに低収入でも派遣やアルバイトでディーセント・ジョブに就いている方がはるかにましだ。
どうも東京の若者や再就職組には、そういうディーセントでない仕事に就いてしまった人が増えているようだ。

景気が良くなって雇用が増えても、そういう人はまっとうな労働市場からははじき出されてしまうし、運よくちゃんとした企業に再就職出来ても、必ず問題を起こす。

雇用問題の解決は職を増やす、つまり「量」も大事だが、ディーセント・ジョブが増えるのかどうかという「質」の問題も、同じぐらい重要である。

アバター
2013/04/07 22:59
下々は、、、暮らしにくくなるだけじゃないんでしょうか?

アベノミクソ。。。。。
アバター
2013/04/07 22:38
うちの職場にもその手の電話はたまにかかってきます。
しかも株の話なら現在やっている人、マンションの話ならまだ自己所有の家はないけど貯金していて展示会とか行ってる人、みたいにピンポイントできます。
あと、友人のように会社名を名乗らずに自分の名前だけ告げるパターンも。
同僚や上司の交友関係を把握しているわけではないのでむやみに拒否できないことがわかってるんでしょうね。
そしておっしゃるように大半はソフトな語り口です。

その手の勧誘電話に慣れてしまったら、まともな企業にもし就職できても会社や部署の方針や利益より自己の利益を優先する癖がついて馴染めなくなるかもしれません。
でもそういった企業は頻繁に名前や場所、電話番号などを変えてしまうので根絶が難しいのも事実。
景気浮揚とまともな職場の求人数がつながれば、必然的にそういった企業に入る人の質も落ちてくるのですが、上手くつながりますかどうか。
アバター
2013/04/07 22:08
そこまで真剣に政治にも考えて貰いたいものです。




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