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福島第一原発のトリチウム

福島第一原発での汚染水が頭の痛い問題になっている。
メルトダウンして高熱を発し続けている核燃料を冷やすために、大量の水を原子炉内部に注入し続けなければならない。
ただ炉心を通過してきた水には放射性元素が大量に溶け込んでいる。

さらに地下水が破損した原子炉建屋の地下に流れ込んでいて、これがまた放射性物質に汚染された水になっていて、汲み上げなければいけない。
地下水の流入に関しては、原子炉の手前で井戸を掘って汲み上げて海に流す事が計画されている。

現在、原子炉から出た汚染水はセシウムだけを除去できる装置を通して、一部は炉心冷却水として再利用されている。
だが余分な地下水が既に大量に汚染水になって出てきていて、これはタンクなどに貯蔵しておくしかない。
この再利用に使えない汚染水が毎日数十トンとかの単位で増え続けているわけだ。

現在、原子炉プラントメーカーでもある東芝がALPS(アルプス)という多核種除去装置を建造している。
ALPSはセシウムだけでなく、ストロンチウム他数十種類の放射性元素をまとめて水から除去できる。
稼働開始が予定より大幅に遅れているのだが、これが稼働すればほとんどの放射性元素を汚染水から除去できて、大量の水は海に捨てられる……とばかり思っていた。

ところがALPSで浄化した後でも、原子炉から出た水は海に捨てられない事が分かった。
ALPSでも除去できない放射性元素が、それも大量に汚染水に残るのだ。
その元素は「トリチウム」である。

トリチウムは「三重水素」とも言う。
通常の水素は原子核内に陽子が1個だけ、周りを電子が1個回っている。宇宙で一番単純な構造の元素である。

自然界には、原子核内に陽子と中性子が1個ずつくっついている変わり種がわずかな割合だが存在する。
これを重水素と呼ぶ。さらに陽子1個、中性子2個の、通常の水素の3倍の質量数を持つ同位体が存在する。
これが三重水素、つまりトリチウムである。

重水素、三重水素自体は自然界にもごくわずかだが存在する。
宇宙線によって地球の大気上層で形成されるらしい。
ところが原子炉のような人工施設の内部でも、自然界より大量に生成されている。

核燃料は燃えている間、大量の中性子を吐き出す。
ウラン、プルトニウムなどの核燃料の原子から飛び出したばかりの中性子は光速の何十%とかのすごい高速である。
そのままだと核分裂反応が暴走する危険があるので、中性子のスピードを殺さないといけない。

中性子のスピードを下げる物質を「減速材」と言い、世界の商用原発の大半は水を減速材に使っている。
福島第一の原子炉も水を減速材に使うタイプであり、その水は大量の中性子線に晒される。

水は水素と酸素が結合した分子なので、核燃料に触れた時に水に含まれている水素原子が中性子を吸い込んでしまい、重水素や三重水素になってしまうらしい。
問題なのは、三重水素、別名トリチウムは放射能を帯びている事である。

陽子1個に中性子2個という原子核の構成はバランスが悪い。
そこで三重水素の中の中性子が1個、電子などを吐き出して陽子に変身する。
この現象をベータ崩壊といい、ベータ線と言う放射線が放出される。

トリチウムを除去できないのか? 科学研究機関の実験室レベルでは可能だし、実際に行われている。
だが、福島第一にたまり続けている、あれほど大量の水からトリチウムを取り出す事は不可能らしい。

重水素も三重水素も化学的な性質は通常の水素と全く同じなので、トリチウムと酸素原子からできている水の分子だけを、化学的により分ける方法はない。
トリチウムが混じっている水分子は普通の水分子よりわずかに重いので、その違いを利用して分離する方法はある。

重水素や三重水素は、たとえば核融合炉の研究に必要なので、実験室レベルでは海水から分離、抽出する事は既に行われている。
しかし、事故を起こした原子炉から出てくるトリチウムの処理などという事は、福島第一の事故以前には考えられた事もなかった。

トリチウムの半減期は約12年。ベータ崩壊が終われば、質量数3のヘリウム原子になって危険はなくなる。
だが半減期というのは、あくまで放射性元素の数が半分になる期間であって、12年経ったら無くなるわけではない。

もしトリチウムの量が許容限度の4倍だとしたら、12年経ってやっと2倍になる、という事。
その場合「もう安全」と言えるようになるまでは24年かかる計算になる。

つまりALPSが稼働したとしても、処理した水は海に放出などできないのだ。
ベータ線は外部被曝なら薄い紙一枚で遮断できるが、トリチウムを大量に含んだ水が生物の体の中に入ると、深刻な内部被曝の原因になる可能性が高い。

だから福島第一に並んでいる汚染水貯蔵タンクは、これからもどんどん増えていく。
メルトダウンした核燃料の取り出しが30年先とか40年先とか言われているのだから、汚染水の貯蔵タンクもその間増え続けるという事。
福島第一の敷地内だけでは場所が足りなくなるのは目に見えている。

ならばトリチウムを大量に分離する新しい技術が必要になるはずだ。
実験室レベルでは可能なのだから、今のうちから膨大な水を処理できる技術を研究し確立しておくべきだ。
その程度の事をやろうともしないで、どの面下げて「科学技術立国」を標榜できるのか?

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2013/04/29 16:43
我が社が開発に加わっているものがある。それなら、何とかなるかも・・・。なんて、思ってるんですけど・・・。

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2013/04/28 17:42
福島の事故はあってほしくなかったことですし、これからも起きてはならないことなのですが、日本人の悪癖として「悪いことは口にしない」というのがありますから、その影響があるのでしょうね。
実際にはおっしゃるように対応策を考えるべきだし、もし考えられているのならその実現性も含めて客観的に示した方が信頼が増すというものでしょう。
原発があるのは日本だけではないので、ヨーロッパなどの先進国の技術者も招聘して状況の改善や再発の防止に向けて取り組んでいただきたいものです。

しかし日本各地にある原発、今後どうしていくつもりなんでしょう。
国策として維持するなら安全が担保できなければ物騒だし、廃炉にするつもりなら独占企業とはいえ国策に則って推進してきた民間会社に後処理を全て押し付けるのはいかがなものかとも思います。
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2013/04/28 13:36
そこまでわかっていて、、なぜ?・(・・?(・・?

次のステップに、、進めないのでしょうか?

放射能汚染に関する勉強不足、、、信じられなーい、、馬鹿ですよね。
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2013/04/28 00:38
こうした知識不足で、これから先どうするのだろう?と心配だけ、してましたが、ラスト3行で、解決策があるのなら、急ぐべきだなと、思いました。日本の閣僚は文系出身者が多く、こうした対策が遅れてますね。この問題に限ったことではないですが。




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