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自衛隊のイメージアップ

昨日横浜で開港祭というのがあったのだが、その一環として海上自衛隊の「やまぎり」という護衛艦が一般に公開された。
実物に乗った事はなかったので、ちょうど仕事が休みの日だったので行ってきた。

「護衛艦」というのは日本独特の用語で、意味する所は「武装した軍艦」である。
日本は憲法9条の関係で自衛隊は「軍隊ではない」ことになっているので、戦闘用艦艇は全て「護衛艦」と呼ぶ。
「やまぎり」は戦前なら「駆逐艦」に分類される小型の戦闘艦である。

が、小型と言っても間近で見ると結構でかい。操舵席のある「ブリッジ」と呼ばれる場所は見上げるような高さだった。
一般公開と言っても艦首から片一方の甲板を通って艦尾へ抜けるというコースで、甲板上の一部を見られただけだが、それでもいろいろと珍しい物が見られた。

現在海上自衛隊の最新型は「あきづき型」というタイプである。
「あきづき型」も「やまぎり」も「汎用護衛艦」というタイプで、自衛隊ではDDと呼ばれる。
事実上のヘリ空母である「ひゅうが型」やイージス艦を除けば、「やまぎり」は「あさぎり型」と呼ばれるDDの2番艦で、「あきづき型」から数えると、DDとしては三世代前の型になる。

一般の日本人は「戦闘用軍艦」と言うと戦前の艦砲を多数並べた姿を今でも連想しがちだが、旧型に属する「やまぎり」も武装は驚くほど簡素であった。

まず艦砲だが、艦首部に一門しかない。砲身は想像以上に細く、大人の手なら両手でぐるっとつかめる程度の直径だ。
一見頼りなく見えるが、なんと1分間に60発前後の連射も可能という。
砲弾のテクノロジーも進歩していて威力が高いので、戦前の駆逐艦の艦砲9門と同じぐらいの威力をたった1門で発揮できるらしい。

現代の艦隊戦の主力兵器はなんと言ってもミサイル。
「やまぎり」は艦首主砲とブリッジの間に長方形の金属の箱が数個並んで、回転する土台の上に乗っている。
これは「アスロック」と言う対潜水艦用のロケット魚雷の発射管。

いざという時はこの箱からロケット弾が飛び出し、敵の潜水艦の至近まで飛んで、先端の魚雷が切り離されて海中に突入して、潜水艦を撃破する。

甲板の中央には別に3本ワンセットの魚雷発射管がある。
これは近距離の潜水艦や敵艦に向けて直接魚雷を発射する装置。
現在の海上自衛隊の魚雷は、自分で目標を探知して追いかけて行く事が可能だそうで、特に潜水艦は逃げられないと言う。

艦尾にはヘリポートがあって、対潜哨戒ヘリを搭載できる。
ヘリの格納庫のドアのすぐ外には、昔の戦闘機のコクピットのようなガラス窓が甲板に埋め込まれるようにある。
ここに飛行管制官が入って、ヘリに発艦、着艦の指示を出すそうだ。

艦尾の最後部には、やはり回転する土台に乗った長方形の金属の箱が並んでいる。
こっちは「シースパロー」と呼ばれる対空ミサイルのポッド。
一個だけ蓋が開けてあって、信管はオフにしてあるのだろうが、実物かレプリカの対空ミサイルが展示されていた。
大人なら両手で抱えられそうな大きさで、意外と小さいのに驚いた。

対艦ミサイルである「ハープーン」の発射装置はブリッジがある構造物の屋根というか上部に取り付けられていた。

このように「やまぎり」は、潜水艦、水上艦艇、航空機、全てを相手にできる武装を持った戦闘艦で、これを「汎用護衛艦」と言う。
尖閣諸島沖で中国の軍艦に火器管制レーダーを当てられたのは、こういう種類の船だったのだろう。

案外知らない事もあった。
こういう護衛艦に搭載されるヘリは航空自衛隊の所属かと思っていたのだが、海上自衛隊に航空部隊があるのだそうだ。
また「やまぎり」のような艦は常時ヘリを搭載しているわけではなく、航海などで出動する際にその都度、別個に運営されている海自航空団からヘリが派遣されるそうだ。

海上自衛隊では金曜には必ずカレーが出るという話も本当だった。
金曜の昼食がカレー、たまにハヤシライスという事もあるらしい。
驚いたのは航海中の艦内だけではなく、地上勤務の基地の隊員も、職場では金曜の昼は必ずカレーだそうだ。

曜日の感覚を保つためというのも本当だそうだ。
今回一番驚いたのは、説明してくれた小柄な、まだ若い女性隊員が機関士だったという事だ。
最初てっきり広報部員なのだろうと思っていた。

機関士の場合、船体の奥、外の様子が全く分からない場所で三交代とかで勤務するので、腕時計を24時表示にしておかないと、今が午前なのか午後なのかすら分からなくなるそうだ。
ましてや曜日の感覚をや、である。確かに曜日の感覚を保つためにカレーというのもうなずける。

そもそも護衛艦の一般人への公開は、海自の基地のある町などに限られていて、かつ自衛隊自身が開催するイベントだった。
今回の様に、首都圏である横浜で、それも民間のイベントの一環としてやったというのは珍しいのではないだろうか?

これはやはり、東日本大震災の救援活動によって国民の間での自衛隊全体のイメージが非常によくなった事が大きく関係していると思う。

外のテントでは幼稚園児ぐらいの子供に海上自衛隊の制服を着せてコスプレ写真を撮る、というサービスもやっていた。
数年前なら「子供に軍国主義の洗脳をしている!」と大騒ぎになったかもしれない。

自衛隊を「国防軍」にするのがいいのかどうか、相変わらず議論があるようだが、賛成する方も、反対する方も自衛隊の現場をどれだけ知っているのだろうか、という疑問がぬぐえない。

尖閣諸島を守り、はるばるアフリカ沖の海賊取り締まりなどで、最長で往復6か月の航海に出る護衛艦。
その機関部で、曜日や時間の感覚すら失うほどの激務をこなしているのは、場合によってはその辺の女子大生やOLと見分けがつかないうら若い女性だったりする。

イメージがよくなっている今こそ、自衛隊は軍事マニアでない、普通の一般人にもっと「素顔の自衛隊」をアピールするべきだろう。
そして一般国民も、憲法9条を巡る神学論争をひと時でも離れて、「現場の自衛隊員」の事をもっと知るべきだ。

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2013/06/14 10:41
大洗には戦車部隊が大戦しています!
(ガルパン【ガールズ&パンツアー】戦車道アニメ)
実在の街を実在の戦車を大和撫子な女子高生が戦闘するアニメです♪
自衛隊もちょっぴし協力ってききましたニョ♪

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2013/06/12 02:26
学校の教師が子どもに「自衛隊は人殺しだ」と言ってた時代からすれば隔世の感があります。
災害救助もそうですが、近年日本領が脅かされるようになって国民もいろいろと考える機会が増えたので意識が変わってきたのかも。

「国家の防衛」云々というとあれですが、結局のところ自分の大切に思う人や生まれ育った風土等を大切に守りたいということなんですよね。

護衛艦といえばアニメ「名探偵コナン」の劇場版で結構あちこち映像化されていてびっくりしました。
無論取材制限はあったのでしょうけど。
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2013/06/10 19:42
どんな名称で呼ばれても兵士。災害が起ったり、いざ戦闘がおこれば命令に従うのみ。
私たちに必要な存在をどうしたいのかみんなで考えたいですね。
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2013/06/10 14:20
TVで震災のときに海上自衛隊に救助された男の子が「大きくなったら自衛隊にはいる」と言っていたのが、すごく印象的でした。海を漂流する恐怖から救ってくれた自衛隊員は、その少年のヒーローなのだろうなと、思います。そうしたことを思い出しながら、読みました。

>「現場の自衛隊員」の事をもっと知るべきだ。

そうした使命感を抱いて何かを書く、伝えるということは、すごく大切なことですよね^^




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