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NISAは成功するか?

金融機関各社が、NISA(ニーサ)というサービスの宣伝を始めている。
これは政府の「貯蓄から投資へ」という、小泉政権時代からの政策スローガンを推進するための物で、正式には「少額投資非課税制度」と言う。

英国に「Individual Savings Account」、略してISAという制度があり、日本を意味するNを頭に付けてNISAという名前になった。
来年1月から使えるようになる。

どういう制度かと言うと、20歳以上の日本国民なら誰でも1個だけNISA専用の口座を金融機関に開設する事ができ、1年間に百万円までの投資商品を購入すると、それから得た利益は向こう5年間非課税になる、という制度だ。

たとえばNISA口座を開いて、それから1年の間に株式、投資信託などの金融商品を90万円分買ったとする。
この商品から配当金、分配金、あるいは売却して1万円の利益が出たとする。

通常の証券会社の口座などで同じ事をすると、その利益には一律20%の税金がかかる。
1万円の利益なら税金が2千円、自動的に徴収される。
NISA口座で行った取引に限り、開設時から5年間、税金はゼロ。
庶民の少額投資を促すため、非課税優遇をするという制度だ。

現在銀行預金の利息率は泣きたくなる程低い。
定期預金の利率でさえ1%にも満たない。
数千万円を定期預金に預けても、利息なんて小遣い銭にもならない。
預金が十万円程度という人だと、ATMの利用手数料とかで目減りする場合さえあるだろう。

さらに、大抵の銀行は預金されても、貸出先がない。
大手優良企業は銀行から借りずに、直接社債を発行して資金を調達するのが普通になっている。
銀行から借りたがっている中小企業やベンチャー企業には、リスクがあるからという理由で銀行が金を貸したがらない。

本来なら、これから成長しそうな企業を目利きして金を貸して、企業を育て上げて儲けを得るのが銀行の仕事なのだが、ほとんどの銀行がそれをやらずに国債を買い漁って帳尻を合わせているのが現状である。

そこで一般庶民にもっと株式などに投資してもらい、世間でお金を回そうというのが、NISAの狙いだろう。
しかしこの制度、趣旨は非常に結構なのだが、今の状況がこのまま続くと、一般庶民の大半は利用しないだろう。
一部の富裕層が利用するだけで、一般庶民が恩恵を受ける事は期待できない。

何故かと言うと、肝心の銀行が腰が引けているからだ。
政府に言われて仕方なく、形ばかり嫌々やってます、という態度が見え見えだ。

NISAの口座開設は今年の10月から、利用は来年1月から。
口座開設予約は順調に増えていて150万口座を越えたと聞く。
ただし、そのほとんどは証券会社のNISA口座なのだ。

富裕層とはお世辞にも言えない一般庶民がNISAを利用する場合、大半の人は口座を持っている銀行で、NISA口座を開設したいだろう。
ところが大半の銀行のNISA口座では投資信託しか購入できないのだ。

これまで預金しかしたことがないという人の場合、投資を始めるなら一番仕組みが単純な投資から入るべきだ。
それは現物株の長期保有である。

株を買うと言うと何千万円もの預金を持っている金持ちだけの話と考えがちだが、それは銘柄次第である。
たとえば中堅どころの小売業であれば、上場株でも最低売買単位なら十数万から二十万という金額で買える。

JRグループの中でも、最低購入単位なら100万円以内で買える企業もある。
そういう企業の株式を最低数、だいたい100株とか1,000株買って、そのまま保有し続ける。
そうするとその企業の業績がまあまあ好調であれば、年に2回「株主配当金」というのがもらえる。

配当金の金額は企業によって、年次によってまちまちだが、その利益率が銀行の定期預金の利息率を上回れば、投資としては成功と言える。

もちろんリスクはある。その企業の業績が悪ければ配当金無し、という年もある。
また万一その企業が倒産すると、株式の価値はゼロになり、株を購入するために注ぎ込んだお金はパーになる。

そこで、投資する金額を小口に分け、可能な限り違う業種の企業の株式を買っておく。
そうすると、どこかが無配になっても他の企業が配当すればそれなりの利益は出る。
万一そのうちの1社が倒産しても、資金がいっぺんにパーになる事はない。
儲けと損をトータルで見て、定期預金の利率よりマシだったら、それで良しとする。

これが株式投資の、少なくともビギナーにとっての、本来あるべき投資行動なのだ。
この一番単純な投資で経験を積んで、それから投資信託というより複雑な金融商品に挑戦する、これが本来あるべき「一般庶民による投資行動」なのだが、日本では順番があべこべになっている。

日本では長らく株式の最低購入単位が大きかったため、一般庶民には株式を買うなど無縁の世界だった。
1980年代後半のいわゆるバブル経済期に庶民も株式投資に参入したが、株価の上下を利用して売ったり買ったりを繰り返して利ざやを稼ぐ事を狙うという、いわゆるトレーディングが中心だったため、バブル崩壊で大損した人が多数出た。

その結果、日本の一般庶民の間では株式投資は「危険なギャンブル」というイメージが定着してしまい、誰も株式など買わなくなった。
直接株を買うのが怖いなら、小口の金を預けて専門家に投資運用してもらう、というのが投資信託。
投資の対象が不動産ならJ-REIT(ジェイ・リート)。

当初は投資信託は証券会社だけが取り扱っていたが、それでは一般庶民が敬遠するからというので、銀行の窓口で投資信託を販売できるようにした。
しかし、投資信託の中身の組み合わせが下手で、買った時より低い値段でしか売れなかった、いわゆる「元本割れ」が続出し、経済に疎い一般庶民は誰も手を出さなくなった。

だからNISAで少額投資を促すのであれば、普段から利用している銀行のNISA口座で、現物株も買えるようにして、ビギナー向けの一番単純な投資をできる様にするべきなのだ。

投資信託は仕組みが分かりにくいので、大半の庶民は敬遠する。
現物株を買いたいと言うと、銀行は系列の証券会社を紹介すると言うだろう。
だが、同じグループの会社であっても、「証券会社」と聞いたら、そこで大半の庶民は「なんか危なそうだから、やめた」という事になるだろう。

NISAそのものは優れたアイディアだと思うが、証券投資などに既に慣れている富裕層だけが利用し、一般庶民がほとんど利用しなければ、少なくとも庶民の所得を増やすという効果は期待できない。

NISAの利用形態が今のままだと、持てる者と持たざる者の格差を広げただけ、という結果になるのがオチだ。
政府にはこのあたりをもっと真剣に考えて欲しい。

アバター
2013/07/19 13:34
株はいつでも上がるとは限りません。
投資ファンドの餌食になりませんように。
アバター
2013/07/19 12:15
株にお金を回せる庶民は、、、どんだけ、、、、いるのかしら、、、??

うちは、、、無理です。。。




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