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「終戦のエンペラー」の感想

映画「終戦のエンペラー」を見た感想である。
「今歴史の真実が明かされる」みたいな宣伝文句だが、アメリカ映画だから正直あまり期待していなかった。

だが、この映画が我々日本人に突きつけた問題は、極めて重大である。
また、あれだけGHQの内輪の事情を描いている以上、米国政府が全面的に協力したとしか考えられない。
アメリカという国家の意図にも関心を払わなければなるまい。

一般の日本人にとって新しい史実は主に2点。
占領直後のGHQが昭和天皇を戦争犯罪者として処刑する、という選択肢を真剣に考慮していた事。
もう一つは、1945年8月14日から15日未明にかけて起きたいわゆる「宮城事件」が、昭和天皇の暗殺まで意図していた、という点である。

特に宮城事件の真相は、日本人の歴史観そのものを根底から覆しかねない話だ。
政府や宮内庁は知っていただろうし、一部の識者やジャーナリストが書籍などで言及した事がなかったわけではない。

しかし多くの一般の日本人は、降伏に反対する一部陸軍将校が皇居に突入するも、大山鳴動して鼠一匹、という結果でしかなかったと聞かされてきた。
だが実際には、同じ日本軍の皇居守備隊との間で、6度にわたり激しい銃撃戦が行われ、同士討ちでのおびただしい犠牲者を出した挙句に、玉音放送にこぎつけたという事だったわけだ。

また、昭和天皇の戦争責任に関しては、ポツダム宣言の受諾、降伏を、ずるずると引き延ばした事が終戦直前の無用な犠牲を増やした点が、特に問題視されてきた。
しかし「終戦のエンペラー」の内容が正しいなら、昭和天皇が降伏やむなしという結論に達していたのは、1945年3月、遅くとも5月の東京大空襲の時点だった事になる。

我々戦後教育を受けた日本人は、戦前の日本の政治体制は天皇を国の主権者とする絶対君主制であり、それ故にファシズムに陥ったと教わってきた。

しかし、絶対君主にして現人神であった昭和天皇の、ポツダム宣言受諾の意志を、3か月ないし5か月以上、平然と無視した結果だったとするなら、少なくとも戦争末期の昭和天皇は完全にお飾り扱いされていた事になる。

ましてや、昭和天皇の御前会議での降伏すべし、という命に逆らって、玉音放送を阻止すべくクーデターを決行、昭和天皇の暗殺まで考えていたと言うのなら、戦前の日本が「絶対君主制」であったという歴史観そのものが、根底からひっくり返る。

これは現代の靖国神社問題にも重大な新しい論点を投じる。
もともとA級戦犯14名が靖国神社に合祀されるまでは、昭和天皇は参拝していた。
A級戦犯が合祀された時から、昭和天皇は参拝をやめた。

この理由については謎だった。中国、韓国に対する遠慮から、という説もあり、これが現在の「日本人が靖国神社に参拝して何が悪い」という論調の基礎になっている。

だが、靖国神社に合祀されているA級戦犯の中には、終戦当時の陸軍指導者、陸軍出身の政府首脳が多数含まれている。
このA級戦犯の中に、宮城事件に責任のある人物がいたらどうなるか?

昭和天皇暗殺まで視野に入れた皇居襲撃を主導した者、けしかけた者、黙認した者が混じっている可能性は無いのか?
そこまで行かなくとも、陸軍の指導的地位にあった者なら、皇居襲撃を止められなかったという間接的な責任は否定できない。

これが昭和天皇が、靖国参拝をやめてしまった理由であるという推測も成り立つのではないか?
もしそうだったら、A級戦犯の合祀は、昭和天皇に対する不敬行為であったとさえ言える。

合祀を決定した時、靖国神社側はその事を把握していたのか?
歴史的経緯を知らないまま、あくまで善意でした合祀だと信じたいが、もし昭和天皇が靖国参拝をやめた理由がそれだと言うのなら、真剣にA級戦犯の分祀を考えるべきだろう。

もし靖国神社側がそのような事実はない事をきちんと調査した上での合祀だったと主張するなら、過去にどういう調査をしてそういう結論に至ったのか、客観的な根拠を挙げて説明するべきだろう。

戦後の日本は、象徴天皇の下に平和国家として生まれ変わった、というロジックで国際社会に復帰を果たした。
だが万一、昭和天皇暗殺未遂に加担、ないしは道義的責任のある人物が靖国神社に合祀されているとすれば、そこへ日本政府の総理大臣や閣僚が公式参拝する事は、戦後日本の「平和国家」路線の否定ではないか、と勘繰られても仕方がない。

靖国に合祀されているA級戦犯の中に、昭和天皇暗殺未遂に関わった人物がいないかどうか、この点は日本人自身で改めて検証し、万が一そういう人物が混じっているなら、分祀するべきだ。

逆にそのような人物はいないと証明できれば、「日本人が自国の英霊に参拝して何が悪い」と、中国、韓国、その他の国に対しても、堂々と主張できる。

これは今上天皇のお心にも関係する重大な話だ。
少なくとも戦争末期の昭和天皇は、ご自身のせいではないとしても、「国の主権者」としての責務を全うできず、その結果終戦のタイミングを逸した。
今上天皇が公務の負担軽減を頑として拒んでいるのは、父君のその苦悩を知っているからではないか?

であれば、今上天皇の肉体的、精神的な過労を防ぐためにも、昭和天皇の終戦の決定に関する責任を、肯定するにせよ否定するにせよ、日本人自身がよく議論して「歴史論議の決着」を図るべきだ。
そうでないと今上陛下は倒れるまで「国民への奉仕を怠るわけにはいかない」と思い詰めてしまうかもしれない。

それにしても、平成の世も25年目になってから、こんな重大な歴史の真相を、当時の敵国であり占領国であったアメリカの映画で初めて知った、という点が一番参った。
どうして日本人自身の手で明らかにできなかったのだろう。
日本人の一人として、これが一番情けない。

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2013/08/08 13:14
コロの知っている話しは真珠湾攻撃を多くの軍の上層部の多くが反対していた。と、言うことです。
軍部の上層部の多くはアメリカの物資+人員の多さに勝てると思っていませんでしたが・・・
少ない人数でも日本の軍部の中枢を握っている人間の暴挙には勝てないと言うコトです。
この事は言及もされませんが・・・・
当時の昭和天皇のお子様方は軍部に安全をはかると言う大義名分で隔離されていました。
その実は軍部の中枢の少数の人間のタメの人質でした。
天皇のお子様方を人質に取ったデス。
本当にアメリカと戦わないために頑張っていた軍人さん達もタクサンいました。
A戦犯の祀られている靖国に天皇が行かないのはそういう訳っす。
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2013/08/03 16:41
たぬきの休息さん、コメありがとうございます。

史実に関するご指摘はおっしゃる通りですね。
明治以降の皇室は英国流の「君臨すれど統治せず」を手本にしてきました。

一口に「戦前の天皇制」と言っても、時代時代で微妙に異なっているのですが、戦後教育は明治から終戦までを十把一絡げに「戦前の暗黒時代」と教えてきたため、それを鵜呑みにしている若者が多いのが気になります。

天皇機関説にしても、美濃部達吉らが学会を追放された「戦前の学問弾圧事件」という側面しか教えられていません。

昭和天皇の戦争責任に関しても、法的責任と道義的責任をごっちゃにしている感があります。
帝国憲法では天皇は主権者でしたから、法律論的な責任は免れないでしょう。
しかし、昭和天皇が個人として戦争を支持していたか、ましてや真珠湾攻撃を承認したのか、などという話は別次元の事です。

また日本各地に残る伝統的神道と、皇室が受け継いでいる祭祀神道、戦前の国家神道、靖国神社の神道は、一口に神道と言っても異なる物であり、これを一体不可分の宗教と考えるのは、中国人や韓国・朝鮮人の感覚です。
それを日本人が鵜呑みにして批判しているのが、いわゆる戦後左翼ですね。

右翼は右翼で、では昭和天皇や今上陛下の意図がどこにあるのかを深く考えようともせず、むやみと天皇や皇室のため、という大義名分を持ち出しては勝手な事ばかり言っている。

我輩が分祀した方がいいと思うのは、日本人全体が自国の歴史と伝統に無知であるがゆえに、靖国問題が諸外国、特に中国と韓国にとって、格好の「つけ込む口実」になっていると感じるからです。

それに、日本とドイツを軍事力による対外膨張主義に走らせたのは、第二次大戦の戦勝国である連合国が、世界恐慌後に世界経済をブロック化し、当時の新興工業国であった日本とドイツを世界市場から締め出した事が大きな原因であった。
それを戦勝国自身が自覚し、反省した結果、戦後の自由貿易体制堅持という国際的な常識が作られた。

天皇制であれ何であれ、歴史というのは正義か悪か、正か邪か、白か黒かで二分できる程単純ではない。
日本人自身が自国の歴史も伝統も知らず、左翼小児病的な善悪二元論を卒業して、たぬきの休息さんのような多面的な物の見方が出来るようにならないと、右であれ左であれ、この先また道を誤る危険があるんじゃないかと思います。
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2013/08/03 12:44
天皇に対する国民の認識は先の大戦の少し前から国民向けに異様に神格化されていただけで、それまでは「天皇機関説」が通説であり、昭和天皇自身も「それでよい」とおっしゃっていたと言われています。
帝国憲法がプロシセンの影響を受けた内容になっているので誤解されがちですが、あれは当時の自由民権運動への牽制という意図もあったようですし、実際のあり様としては戦前からイギリスの形態に近かったのでは。
また昭和天皇は2・26事件の時に閣僚を殺傷した兵士たちの処分を陸軍に迫った経緯がありますが、それについて最後の元老であった西園寺公望に「お立場を超えている」と諭されています。
ですから終戦の時に割合早い段階で「終わらせるべき」と考えていたとしても内閣が機能している限り強制はできなかったというのが実際のところなのでは。
終戦決定も内閣ではどうにもできないという前提で「天皇の御聖断」という流れになったようですから。

陸軍大臣は御聖断の後自害していますから、その後の暴動には関わっていません。
この事件でどこまでが関与していたかというのは今からでは特定が難しいし、黒幕が戦犯になっていない人である可能性もあります。
A級戦犯と言っても「国内で裁判しても何らかの罪はあったかも」という方から「とばっちりとしか思えない」という人まで様々なのでひとくくりにして考えるのも無理がありそうです。

また神社の考え方からすれば(仮にとんでもない悪人が彼らの中にいたとしても)一度祀ってしまえば皆神様という考え方ですし、分祀しても魂を他の場所にも分けているだけという発想なので靖国神社からいなくなるなんてことは教義上あり得ないでしょう。
(英霊の生前の行い云々ということになれば、そもそも一般の兵士が皆品行方正だったのかという話にもなりますし、逆賊扱いされていた西南戦争の薩摩方の兵士も祀られているはずなので「天皇に弓を引いた人は駄目」という発想も元々この神社にはないと思う。)

今上天皇が減らしたくない公務は「祭祀」の部分だったのでは。
宮内省の役人の中には祭祀を減らして地域イベントへの参加などを優先させたがる人もいて陛下の悩みの元になっているとどこだかで読んだことがあります。
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2013/08/02 17:38
考えさせられる問題ですね

そして、、今まさに、、軍国化へと向かおうとしていると思われる政権、、

このタイミングでの、、映画は、、、なんか、、、きな臭い感じがするんですけど、、

ジブリ作品にしても、、、(*´・ω・)(・ω・`*)ネー

ちゃんと、、検証してほしいですね。




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