酒井法子の逮捕劇はファンにとってはショックだったが、はからずも日本の芸能界が国境を越えた影響力を持っている事を日本人自身に再認識させる良いきっかけになったのではないだろうか？

どこの国でも芸能人の薬物問題なんてありふれていて、ビートルズのメンバーだって何度も麻薬で逮捕されている。
そういう意味ではのりピーの件も我輩個人としてはそれほど驚かない。

が驚いたのは近隣アジア諸国のマスコミの反応である。
香港では新聞が１面で報じ、テレビも逮捕の速報を流した。中国でもネットで話題騒然だそうである。

それだけのりピーがアジア諸国で大人気だったという事。草なぎ剛の時も韓国で非難ごうごうだったが、裏返せばそれだけ彼が有名だったという証明だろう。

だからアイドルたるもの身を慎んで・・・などというお説教はどうでもいい。
日本人が今回の騒動から学ぶべき事は、日本が近隣のアジア諸国に対してけっこうな影響力を持っているという事実だ。

「ハードパワー」「ソフトパワー」という言葉がある。
ハードパワーとは軍事力、経済力のようにその気になれば物理的に他国の行動や意思決定を左右できる力。
ソフトパワーとは文化的影響力などによって間接的に他国の国民の行動をコントロールする力だ。

この点アメリカはハードパワー大国であると同時に、かなり意識的にソフトパワーを駆使する事で世界中に影響力を及ぼしてきた。
ハリウッドの映画や米国製テレビドラマが他国、特に発展途上国の国民に与える影響は大きい。
日本も戦後の復興期、高度成長期にテレビでアメリカのホームドラマが多く放送され、そこに映し出されたアメリカの中産階級の豊かな生活にあこがれて、アメリカ流の産業が多く日本でも育った。
またアメリカびいきになった日本人が圧倒的多数になった。

韓国、台湾、中国などの一般庶民にとって、今の日本は昔の「日本にとってのアメリカ」に近い位置にあるのかもしれない。
だからこそ、こう言っては失礼だが、年齢的にはもはや現役のアイドルとは言えないのりピーの事件が、それほどまでにホットな話題になるのだろう。

だから日本人は近隣アジア諸国の反応から、日本が持つ意外なソフトパワーを読み取るべきなのである。
日本で成功したアイドルは男女を問わず、他のアジアの国でも通用する人気を持てる。言葉は悪いが商品価値がある。
そしてそれはその国の人たちの行動を無意識的、間接的にせよ、コントロール出来る可能性を秘めているのである。

近隣アジア諸国とは第二次大戦時のネガティブな問題を未だに引きずっているが、それは政治や外交の世界の話で、日本のアイドルやポップ音楽、アニメ、マンガなどのポップカルチャーが「反日的」と言われる国の一般市民を日本びいきにする事も可能なのだ。

これまで芸能界で海外進出というと欧米、特にアメリカでデビューする事ばかりに注目が行っていたが、市場としてならアジアの方が大きいし、人種的に近い分成功する可能性はより高い。

日本は既にそういうソフトパワーを持ち合わせている国なのである。だとすれば、それを日本人自身がもっと自覚して、前向きな方向に使う事を考えるべきではないだろうか？

今回ののりピー騒動は、そういう事を改めて日本人自身に教えているように思える。