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情緒的平和主義は戦争を防げない

今日8月15日は言わずと知れた終戦記念日。犠牲者を悼むとともに、日本は二度と戦争は繰り返さないという誓いの日でもある。
しかし、後者の点について我輩は将来への不安を禁じえない。
テレビなどに出てくる子供、若者の「二度と戦争はして欲しくない」という言葉があまりに情緒的過ぎるからだ。

日本人は昔から情緒的なエネルギーをうまく爆発させると、世界を驚かせるような事をやってのける民族性を持っている。
だが、その情緒的なエネルギーの向かう方向は、何かきっかけがあると180度逆転する性向も持っている。
いいかげん時代遅れな「反戦教育」「平和教育」から卒業すべきだろう。

そもそも日本に限らず、戦争という物が何故起こるのか?
この点を世界史的な視点から考察する教育がほとんど行われていない。
日本が戦争でどんな悲劇を味わったか、だから戦争は二度としない。
日本は侵略でアジア諸国をはじめとする諸外国にこんなにひどい事をした、だから戦争は二度としてはいけない。

現在の平和教育は半世紀一日のごとく、こういう視点からしか子供に物を教えない。
これで身につく「反戦の誓い」はしょせん情緒的な物でしかない。
21世紀のこれからの時代には、戦争を防ぐ役には立たない。

人類の歴史は戦争の歴史と言ってもいい。だが、戦争の目的は徐々に変わっている。
一番古いタイプの戦争は、生産手段の争奪戦だろう。

古代ギリシャ、ペルシャ帝国などの戦争はたいてい土地を奪う事が目的だった。
当時の主要産業は農業なので、農産物を生み出す土地こそが貴重な生産手段であり、戦争を仕掛けてでも奪う価値があった。
負けた方は皆殺しか、遠い土地に逃亡するしかない。

やがて直接土地を奪うより、農民への課税権を奪取した方が利益が大きいという理由で戦争を仕掛ける例が出てきた。
たとえばモンゴル帝国が中国全土を制圧し、元王朝の基礎が出来た時、漢民族を皆殺しにして全土を遊牧地にする案は退けられ、漢族を支配下に置いて農作物などを税として徴収した方が得だ、という案が採用された。

ヨーロッパが大航海時代を迎えた後は、征服地の住民を奴隷同然にして、自国に都合のいい作物を栽培させるための戦争が頻発した。
いわゆる植民地のプランテーション化で、生産手段と労働力をセットで収奪するわけだ。
この場合、征服地の住民を皆殺しにするのは馬鹿げている。

英国で産業革命が起こり、近代的工業が発達すると戦争の目的も変わった。
ヨーロッパ列強の場合は、自国工業製品の市場を確保するための戦争になった。

植民地型プランテーションの時代が続いていたアメリカ大陸、特にアメリカ合衆国では大量の「ただでこき使える労働力」を手に入れるために奴隷貿易に依存した。
戦争とは呼ばれていないが、アメリカ大陸に売りつける奴隷を確保するために英国はじめ欧州諸国はアフリカで奴隷を集めるための武力行使をやった。

19世紀末から20世紀初頭にかけて、先進工業国であった欧米列強は自国の産業維持に必要な石油などの資源を確保するために戦争を行うようになった。
第一次世界大戦は、大雑把に言えばオーストリア・ハンガリー帝国とオスマントルコ帝国を解体して、その市場を奪い、かつ帝国の支配下にあったアラビアなどの資源供給地を奪うための戦争だった。

戦前の日本が行った「侵略戦争」は、この最後のパターンである。
農業生産と鉱業資源を求めて満州を占領し、日本の工業製品の市場を確保するために中国に無理難題を吹っかけて日中戦争へ突き進んだ。

しかし、日本がそうせざるを得ないとまで思いつめたのは、世界恐慌後の欧州列強の世界経済のブロック化が原因だった。
朝鮮半島と台湾ぐらいしか植民地がなかった日本、第一次大戦で敗れ植民地を全部失ったドイツ、第一次大戦では最後に寝返って戦勝国になったものの植民地の分け前にありつけなかったイタリア。

当時の新興工業国であったこの3か国を世界市場から締め出してしまった結果、3国を同盟させて窮鼠猫を咬むような状況に追い込んだ結果起きたのが、第二次世界大戦。
勝った方の連合国もこの点は反省して、だから戦後は自由貿易を世界的なルールにしている。

TPPのような貿易自由化交渉は、このブロック化によって起きた世界大戦という教訓に基づいているのである。
ならば、戦争反対を声高に叫ぶ人と、TPP絶対反対と叫ぶ人が同じだったら、それは論理矛盾ではないのか?

戦後の冷戦期の戦争はアメリカ陣営とソ連陣営の代理戦争が大半だった。
不安定な国を自分の陣営に引きずり込んで、その経済圏に組み込むための戦争だ。
朝鮮戦争しかり、ベトナム戦争しかり。
ここで見落としてはいけないのは、アメリカとソ連の直接対決、すなわち第三次世界大戦が避けられたのは大量の核兵器による「相互確証破壊」という理論が結果的に正しかったという事実だ。

もしアメリカとソ連が直接全面戦争を始めたら最後は数百発の核ミサイルが世界中に飛び交って人類滅亡もあり得ると言われた。
アメリカとソ連が直接戦争をしなかったのは、やったら双方とも破滅という「恐怖の均衡」が有効という理屈が正しかったからだ。
唯一の被爆国であるからこそ、日本人はこの冷徹な史実から目をそむけてはいけない。
これから目をそむけて叫ぶ「核兵器廃絶」は、これからの時代には説得力を持たない。

冷戦が共産主義陣営の敗北に終わり、ソ連が崩壊して冷戦は名実ともに終わったが、世界に平和は訪れなかった。
最大のライバルがいなくなった米国は調子に乗って世界中にちょっかいを出し、行き着いた先はイラクとアフガニスタンの泥沼だった。

また冷戦時代にはアメリカとソ連という大親分の顔色を気にして表に出てこなかった各地の民族、宗教対立が数えきれない程戦火に発展した。
ユーゴスラビアという国家をばらばらにしたユーゴ紛争がその典型だ。

さらに中国が経済大国として台頭してくると、中国を味方にして米国などの従来の大国と張り合えるかも?という野心を持つ途上国が出てきた。
アメリカと中国の間では核兵器による「恐怖の均衡」が機能するだろうが、それ以外の国はどうなるか分からない。

さて、日本が再び戦争を始めるとした場合、どこの国と、何を狙って戦争するのだろうか?
日本の工業製品のお得意さんである国を、侵略して皆殺しにして日本人が移住するのか? 国内が人口減少の今の時代に。

ある国の石油資源を奪うためにその国を侵略、征服するのか?
あの軍事大国アメリカでさえ、それは出来なかった。

「アメリカの侵略戦争の手先として使われる」という人もいる。
だがシェールガス革命を成功させて、向こう百年はエネルギー資源を自給できるようになったアメリカが、どの国を侵略したがっている?

一方、内戦、民族紛争などの「戦争」とは呼ばない武力紛争は後を絶たない。
「戦争、内戦、武力紛争をさせない、あるいは止めるための国連軍」が創設された場合、それに日本が参加するのは「侵略」なのか?

こういう点をろくに考えもしないで口にする「二度と戦争はしない」は、情緒的過ぎてこれからの複雑な時代には役に立たない。
他人から教わった言葉だけの平和主義は、情緒的であるがゆえに、何かきっかけがあれば簡単に、そのエネルギーのベクトルが戦争容認論に向く危険がある。

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2013/09/01 08:50
アメリカはシリアとやりますね。
シリアはやられたらイスラエルを攻撃するしょ。
イスラエル大チャンス!
言いだしっぺのキャメロンは不味い~
アメリカはもともとイギリスの保険機構を破綻させたいって狙ってるんでぇ~
イギリスを経済破綻させるカモ。
イギリスが経済破綻した場合・・・
中東の破綻とアフリカの破綻⇒中国が今より不味いコトに・・・orz
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2013/08/22 07:39
アメリカに侵略欲はありません。
資源を自国で賄える上は中東も怖くなくなってるにゃん。
でも自分正義の戦争はず~としていて終わったコトがありません。
中国はにほんが欲しいのは日本を軍事基地にしてアメリカのハワイを落としたいから~
ハワイはソレがわかってて
「アメリカの軍隊なんだから沖縄に居ないでハワイを固めてくれ」って州長が言うよ。うん。
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2013/08/16 20:48
日中戦争開始の件以外はほぼ同意です。
(当時中国国内は内乱状態でしたから。)

日本における憲法改正論者が9条を改正したがるのは素直に読めば自主防衛の権利を放棄しているようにしか思えない条文を解釈で自衛隊合憲ということにしている状態を危ういと感じているからだと思ってます。
解釈次第でどっちにも取れる条文なんて意味がありませんから、最高法規は改正しつつ条文に厳密であるべきだと思います。

で若者の「二度と戦争をしてほしくない」というのが、自衛隊自体の否定なのか、それとも戦前のように国情によっては海外にも出るという状態を否定しているのかという疑問もあったりします。
もしくは特に限定はしていないけど自分は戦場に出たくないということなのか。

確か以前不知詠人さんが指摘されていたかと思いますが、専門的知識が多い昨今の軍隊で徴兵制は現実的ではないかと。
国内に侵攻された場合を想定して、成人男女に自衛組織を営ませる覚悟があるというなら別でしょうが、今のところ日本の議論はそちらに向いてない気がします。

おっしゃるように軍事といっても何を想定するのかによって国家のあり方はかなり変わってくると思われます。
軍事は外交の一部門ですからまず「どんな日本にしたい」という理想があって、そのために具体的になにをするのかという現実があるのですが、「戦争はしたくないが具体案は考えたくない」では確かに話は先に進まないでしょうね。
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2013/08/15 18:56
いつもながら、、鋭い分析ですね


一体、、どうなるんでしょう?




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