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中国は第2の「大躍進政策」時代?

中国における「シャドーバンキング」が日本を含む先進国の間で注目されている。
中国発の次の世界恐慌の引き金になるのでは? という不安からだ。

シャドーバンキングというのは、銀行を介さない大規模な融資の事で、日本で昔あったノンバンクという物に表向きは近い。
ノンバンクそのものは日本でも決して違法ではない。
返済が滞った債務者に「目玉売れ! 腎臓売れ!」と脅しつけるような手法が問題とされただけだ。

中国は経済は自由経済とは言いながら、金融業界は社会主義特有のガチガチの規制下にある。
大きな銀行のほとんどは国有銀行であり、預金の利子率などは北京中央政府と中央銀行によって横並びで統一されている。

また融資を受ける場合、国有企業が最優先されるため、民間の中堅以下の企業はなかなか資金を調達できない。
株式市場は外国人の取引が未だに制限されているし、証券市場が未発達なため、たとえば社債を発行して直接資金を調達する事が難しい。

そのギャップを埋めるために、銀行以外の業態の資金調達のチャンネルが当然必要とされる。
そのためのノンバンクなら別に問題はない。
現在中国では「理財商品」と言われる物が庶民の間で大量に出回っている。日本で言いう投資商品であり、出資者として金を出して、配当をもらうという仕組みだ。

これも適正に運用されているのなら別に問題はないのだが、かなりの理財商品が年利15%から20%もの高い配当を謳っていると聞いて、どうも怪しいんじゃないかと思っていた。
中国の経済成長率は世界的に見て高いと言っても7%から8%である。そういう時期に二桁の利率は行き過ぎだろう。

先日のテレビの報道番組でその一端が垣間見えた。
どうも、少なくとも一部の理財商品は「官製ファンド」ではないのか? という疑惑が出てきたのだ。

ノンバンクや投資ファンドは民間企業である限りは、正常な経済活動の一環であり、儲かるか損するかは自己責任の世界である。
しかし一部の理財商品は、中国の地方政府が民間企業を装った投資会社を設立し、民間企業への投資と偽って庶民から金を集め、それを密かに公共事業に注ぎ込んでいる疑いが出てきたのだ。

そういう「民間の投資会社」が破たんして経営者も社員も夜逃げしてしまい、庶民が買った理財商品が紙くずになる、という事件も既に起きているらしい。
地方政府が裏で糸を引いての計画倒産だとしたら、地方政府による詐欺も同然だ。

仮にこれが本当である場合、なぜ地方政府がそんな真似をするのか?
役人が私腹を肥やすためか? と思いがちだが、それほど単純な話ではないようで、中国全体の経済体制が抱える矛盾が、ここにきて遂に噴き出した、という可能性がある。

中国は鄧小平が掲げた「社会主義市場経済」の政策に沿って過去20年間、驚異の経済成長を遂げた。
しかし一党独裁の社会主義国家であり続けている結果、中央政府が毎年の経済成長率を決定するという構造が残ってしまっている。

本来経済の成長率は国家が直接にコントロールできる物ではない。
民間企業の経済活動の結果、自然と決まる物であって、国家、政府はある程度の刺激策、引き締め策などで間接的に影響を与える事しかできないはずだ。

しかし現在の中国では北京中央政府がたとえば「今年の経済成長率は最低7%」とか決定すると、それが事実上のノルマになってしまう。
そのノルマは中央政府から各省政府へ、省政府から主に市の政府へ転嫁されていく。

だから市政府は、ノルマを達成するために、何が何でも域内のGDPを7%なら7%上昇させなければならない。
それが出来ないと、市の幹部は出世できない。場合によっては解任される。

ある域内のGDPを上げる最も手っ取り早い方法は、公共事業、特に工業団地、都市開発などの、いわゆる「ハコ物」を多数作る事だ。
そのための資金は各地方政府が自前で調達しなければならない。

しかし国営銀行からの融資額は厳しく制限されている。正規の銀行以外のチャンネルから金を借りるしかない。
このお金の流れが「シャドーバンキング」と呼ばれているわけだ。

このハコ物建設プロジェクトが、勝算のあるものであれば、シャドーバンキングはむしろ有益である。
問題は地方政府が経済成長率のノルマを達成するために、必要性が疑わしい大規模公共事業に金をつぎ込んでいる場合だ。

必要性が疑わしい大規模公共工事、特に建設プロジェクトの場合、国内外のまともな投資家は当然相手にしない。
ならば、地方政府が直接「民間の投資会社」を設立し、理財商品で庶民から金を集め、それを地方政府自身の建設プロジェクトに注ぎ込むという構図になる。

こういう種類のシャドーバンキングなら非常に危険である。
日本の1980年代のバブル景気でも、後から考えれば無謀としか言いようのないベンチャービジネスが乱立し、わずか数年で次々に破綻した。

中国で同じ事が起こると、その影響は日本のバブル崩壊の比ではない。
さらに問題は、地方政府がおかしなシャドーバンキングをやっている事実を、北京中央政府がまず把握していないという事だ。
不正ぎりぎりの行為だから、地方政府が中央政府に正直に報告などするはずがない。

日本を含む西側のエコノミストの中には、こういう手法で地方政府のGDPはかなり水増しされており、その合計である中国全体のGDPとその成長率もまた実際より水増しされた数字になっているのではないかという危惧を表明する人も多い。

習近平指導部はこの状況に対して打つ手を持たず、上っ面の腐敗撲滅運動、共産党員の綱紀粛正を宣伝するぐらいしか、庶民の不満を和らげる方策を持っていないように見える。

今の中国の状況は、毛沢東時代の「大躍進政策」を思い起こさせる。
大躍進政策とは1958年から1960年にかけて毛沢東主導で行われた、一種の経済成長路線だ。
中華人民共和国が成立したものの、中国の経済は農業主体の貧しいものであり、またソビエト連邦との政治的な対立により、自前の経済発展が至上命題とされた。

大躍進政策では農業生産の飛躍的拡大、重工業製品、特に鉄鋼の生産拡大が最重要視された。
毛沢東指導部のもとには驚異的な増産達成の報告が相次いだ。

かつて日本の教科書にも載った有名な話だが、毛沢東が農村を視察した際、稲や麦がたわわに実って、巨体で知られた毛沢東が、植えられた稲や麦の束の上に座る事ができた、という写真が中国メディアで盛んに報道された。

だが農業をやった事のある人なら分かるだろうが、そんなに密植した稲や麦がまともに実をつけるはずはない。
視察直前にその場所に移植していたのだ。
鉄鋼の増産も、庶民の家から鍋、釜などを強制的に徴用して溶鉱炉に放り込んで生産量を上げたと言う例が多くあった。

そんな鉄鋼は質が悪すぎて、建築などの本来の用途には使えない。
つまり質より量の見せかけの大増産だったわけで、経済全体は大混乱に陥り、餓死者まで出た。
毛沢東はその責任を問われて一時失脚した。

当時の毛沢東は独裁者であり、彼が命じた「生産量」という数字のノルマを達成するために、見せかけだけの生産量アップを図った事が致命的な結果となった。

そのノルマが「経済成長率」に変わっただけで似たような事が起きている。
それが中国の現状である……そうでなければいいのだが。

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2013/10/05 12:14
日本もアベノミクスの為にGDPを公共事業で上げてるし~
8%の消費税はスーパーや小売に廻って実質10%強でしよ?
つまり私達は1割値段が上がった商品を買うになるし・・・
アメリカもヘタすると恐慌とは言わないけど・・・デフレになると思う・・・から~
アメリカにシッカリしてほしい!
中国のシャドーバンキング崩壊は目の前なのに
世界の金融を握っているアメリカがあんな調子だと・・・怖いと思ってます。
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2013/10/05 10:41
中国共産党政権は現在は集団指導体制なので、貧乏くじを引いて自分で始末をつけようという発想には至らないのでは。
基本的に共産党の利益が人民の利益より優先されるので、ノルマは今後も続いていくのでしょうね。
ひずみが限界を超えた時にどうなるかですが・・・
海外の企業は東南アジアにシフトしつつあるようにも思われますし。

経済的に関係の深い隣国なので他国の出来事と無視できないのが怖いところです。
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2013/10/04 20:48
中国にしろ日本にしろ、、、まともな、、、政治家は、、いないんですか(*´・ω・)(・ω・`*)ネー




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