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終身雇用という幻想

政府が雇用に関する国家戦略特区の創設を断念したそうだ。
野党からは「解雇特区」と批判されていた物で、一定の地域を特区に指定し、そこでは労働者の解雇を普通より容易にする、という構想だった。
厚生労働省からも反対の声が上がって、今回はあきらめたようだ。

だがこの議論、最初から現実とずれている気がしてしょうがない。
そもそも特区構想自体が、日本は隅々まで終身雇用だということを前提にしている。
また、解雇規制緩和が日本企業に労務管理の高度化を促すためではなく、外国企業を呼び込むため、とされていた点も無理があった。

はっきり言って日本に文字通りの終身雇用があるなどという話は幻想に過ぎない。
幻想を前提にした特区構想が、あちこちから批判を浴びて断念に追い込まれるのは当然だろう。

現在、文字通りの終身雇用の恩恵に浴しているのは、ごく一部の大企業の正社員と公務員だけである。
おそらく労働人口の2割にも満たないのではないか?

中小零細企業では不景気になったらクビ切りは当たり前のように行われているし、大企業でも非正規雇用の割合を増やしてきた結果、いつでも解雇できる労働者の方が圧倒的に多い会社は珍しくない。

そもそも日本で指名解雇を意味する「リストラ」という言葉が流行語になったのは1990年代末の事だったはずだ。
消費税が3%から5%に上がった時期にアジア通貨危機という世界的な経済の混乱が重なり、日本全体が大不況に陥った。

この時、規模の大小を問わず正社員が大量にクビになるという現象が社会問題にまでなった。
特に解雇されたのは40代、50代の中高年社員が多かったため、家庭崩壊や自殺の急増が起きるところまで行った。

「リストラ部屋」という慣行が始まったのもこの頃だ。
やめて欲しい社員を窓もない部屋に一日中押し込めて、何もさせないが部屋から出るのは禁止するなど、ありとあらゆる精神的な嫌がらせをして自分から退職する様に仕向ける、というやり方だ。

これで精神を病んで、職を失っただけでなく、その後の就労にも支障をきたす人が大勢出た。
指名解雇が出来ないなら、どんな卑劣な手を使ってでも「依願退職」せざるを得ない状態に追い込む。
その程度の事はもう15年以上前から起こっている事だ。

あるいは子会社に移籍させて計画的に倒産させる、という手もある。
クビにしたい正社員を集めて、不要になった子会社に最初は出向という形で移籍させ、その子会社をわざと倒産させるわけだ。
この場合、その子会社に移籍が完了している社員は全員を解雇できる。

そもそも正社員をクビに出来ないという話自体に根拠がない。
会社の業績不振のために正社員をクビにする事を「整理解雇」と呼ぶが、日本の労働法令は決してこれを禁止などしていない。

直接この手の解雇を規制しているのは1979年の東京高裁判決で示された4要件の方である。

(1) 人員整理の必要性
つまりクビ切りをしないと会社がもたないという客観的な合理性が示せるか。

(2) 解雇回避努力義務の履行
クビ切り以外の努力を先に尽くしたかどうか。現在では希望退職を募れば、この要件は満たしたと判断される場合が多いようだ。

(3) 被解雇者選定の合理性
解雇される人と残れる人の線引きが公平かどうか。

(4) 手続の妥当性
退職金や解雇一時金などをちゃんと払ったか、解雇手続きが法律通りちゃんと行われたかどうか。

この4要件のすべてを満たせば、実は大企業の正社員だってクビに出来るのだ。
だから解雇規制緩和の特区を作るのは、屋上屋を架す行為でしかない。

これまで裁判沙汰になるような解雇を巡る騒ぎは(2)から(4)の要件に関して起きている。
裁判の争点が(1)だった事例の方が珍しい。

現在、むやみと非正規雇用の割合を高めたり、パワハラで自主退職に追い込むという事をやっている企業には、最低二つ共通点がある。

一つ目は古いビジネスモデルにしがみついて、チャレンジをしない会社だという事。
典型的な例がしばらく前までのシャープで、液晶テレビという過去の成功体験にしがみつき続けた結果、海外のライバルにどんどん先を越されて経営危機に陥った。

二つ目は管理職が任期制であるという事。
特に大企業は部長級から2~3年の任期で、特定の部署のトップを務める。
実はこれが日本企業の最大の弱点になっている。

現在のように経済環境がきびしく、かじ取りが難しい時代には、過去の成功体験は通用しない。
しかし大企業の管理職ほど前例至上主義に陥っている。
極端に言えば、新しい事にチャレンジなど絶対するな、チャレンジなんかするぐらいなら座して死を待つ方がいい、という態度だ。

大企業の管理職だとだいたい50前後だから、それで会社の部署の一つぐらい潰しても、自分は他に行き場がある。
あるいは管理職としての早期退職優遇額の退職金をもらえれば、自分は生活には困らない。

こういう管理職がはびこっている結果、会社全体が活力とやる気を失っているのが日本企業の現状であり、ひいては日本経済全体が低調になっている。

政府に解雇規制緩和を求める前に、民間企業は自ら生き残りのために血の汗を流すという努力を本当にやっているのか?

今回の解雇規制特区にしても、「どうせ日本企業の経営者なんかに思い切ったチャレンジなんか出来るわきゃないんだから、外国企業を呼び込んで日本人をもっと雇ってもらおう」という発想が根底にあったのではないか?

経団連に所属しているような「伝統的大企業」の偉い人達にこう言いたい。
あなた方は政府から馬鹿にされてたんですよ。

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2013/10/20 21:56
企業の経営難は、相変わらずです。

社長は言いたいこといってるけど、何もわかっちゃいない。

影で、支える私は、大変だ。

一生懸命育てようとしても、社員は育たない。面倒なことから、逃げる傾向にあると思われる。

年金がもらえるかわからないし、それだけで、もらえても生活できず、働かなきゃならない。

独身人口増加と高齢化・・・。この先日本はどうなるの?と、いつも考えてします。

年内は、仕事があるが、その先なんて、何もわからない。

場合によっては、解雇かな?それとも、自ら、彼らは、辞めるのか?

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2013/10/20 20:50
大企業の正社員もそうですが、公務員も実は首切りがあります。
分限免職という形で人員の整理削減は可能。
ただ滅多にお見かけすることがないのは国や自治体の特性に負うところが多いようです。

解雇規制特区ですが、仮に今回ゴーサインを出して実際に導入する自治体があったとして、雇用される側のメリットって何だったんでしょうね。
外資だろうが国内企業だろうが働く人がいてこその企業活動だと思うのですが。
あの地区では従業員を簡単に解雇できるのがウリですってのは本当にウリになるんだろうかというと甚だ怪しいし企業イメージとしてもどうなのかと。

ただ、ホワイトカラーエグゼンプションは今後もう少し検討されてもよいかもしれない。
10人必要なところ5人しか雇用しないでサービス残業を強いている企業は論外ですが、適正雇用している企業で業務分担もそんなに偏りがない部署であっても残業がやたら多い人とほとんどない人がいたりする。
企業側からしたら有能なのは定時に定められた仕事をこなせる人なんでしょうが、実際には残業している人の方が勤評を換算しても多くもらっているというのはざらにあります。
終身雇用を保障していないのならトップから新入社員まで能力をどう見極めるかという意味で新しい雇用形態が検討されてもよいのでは。
一部の企業ではアルバイトから社長へなんて話もあったくらいですし。
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2013/10/18 00:01
政治家の感覚って、、おかしくない?




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