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中国のホーム・グロウン・テロ

中国の首都北京の天安門広場で起きた車の爆発が、自爆テロであったのではないかと日本でも話題になっている。
中国当局は新疆ウイグル族の仕業と発表しているが、もしそうだとすれば相当深刻な展開が予想される。

ウイグル族自治区はモンゴル、カザフスタンなどと国境を接する、面積だけで言えば中国国内最大の少数民族居住地帯である。
中国の国土面積の6~7分の1ぐらいあり、その南部はチベット自治区。
北京政府が神経をとがらせるのも無理はない。

今回の事件で漢族が一番ショックだったのは、天安門広場の毛沢東の肖像画を狙った可能性が高いという点だろう。
中国では少数民族には自治区という土地と自治権が与えられ、一部の少数民族には一人っ子政策の対象外であるなどの特典が与えられてきた。

この少数民族尊重の枠組みを作ったのは毛沢東時代の北京政府であり、そういう意味で少数民族にとっても毛沢東は「貧しかったが平等だった時代の象徴」であると考えられてきた。
しかし、国内最大の少数民族が毛沢東を「敵のシンボル」として見るようになったのなら、漢族にとって事は重大だ。

ウイグル族はもともと中央アジアに起源を持つ山岳遊牧民の総称で、モンゴル帝国、カラハン王朝の支配下にあった時代もある。
カラハン王朝はイスラム王国であり、この頃からウイグル族のイスラム化が進んだようだ。
現在ではかなりの数のウイグル族がイスラム教徒になっている。

テロと言うと、被害にあった国から見て「外国人」により引き起こされるというイメージが強いが、近年は自国民が知らない間にテロリスト化して、自国でテロを引き起こす例が増えている。
英国でもこの手のテロが増えていて、home-grown terrorists (ホーム・グロウン・テロリスト)と呼ばれている。

外国人によるテロなら出入国審査を厳しくして水際でストップするという手もあるが、自国民がテロリスト化するのは防ぎようがない。
中国は自国民が外国からの情報によって、共産党政権に対して不信や反感を持つ事を防ぐという点には非常に敏感だった。

しかし少数民族とは言え、自国民がテロリスト化するという事態は想定していなかったようだ。
テロは、暴動とは全く次元が違う。そして力でねじ伏せるのが非常に難しい。
ロシアのチェチェン紛争を見ても、警察力、軍事力でテロリストを根絶するのは極めて困難だ。

少数民族の反乱は王朝時代から漢族にとっては頭の痛い問題だった。
現代においてウイグル族がしばしば暴動を起こしてきたのは、北京政府による強引な漢族への同化政策が原因だと言われてきた。

チベットもそうだが、「少数民族自治区」とは名ばかりで、実際には漢族が大挙して移住し、現地の少数民族を強引に同化する政策を取っているらしい。
未だにやり玉にあげられる、日本の朝鮮半島統治時代の日本人化政策みたいな物なのだろう。
もしあれと同じような事をやっているのなら暴動ぐらい起きてもおかしくない。

だが暴動はあくまで少数民族の居住地内における漢族への反抗に過ぎない。
首都に自動車爆弾を乗り付けて毛沢東の肖像画を狙ったというのなら、これはもう立派なテロであって、深刻さの次元が違う。

もしこの手の「国産テロ」が増えてくると、二つの点で中国の将来に暗雲が生じる。

一つは「イスラム義勇兵」の国内侵入である。
シリアの内戦でも、反政府勢力に味方するという建前で、多数の外国人義勇兵がゲリラ攻撃を行った。

ウイグルのイスラム教徒はスンニー派なので、同じスンニー派の過激派としては、アル・カーイダの分派、タリバンなどが義勇兵を送り込んでくる可能性がある。
そもそも経済的に困窮しているはずのウイグル族がどうやって車を手に入れて北京に入り、かつ警戒厳重なはずの天安門広場まで到達できたのか?

既にイスラム過激派の国際テロネットワークがウイグル族と接触を持って、支援しているのではないだろうか?
交通を厳重に監視していると言っても、賄賂で役人や警官を懐柔するのは、今の中国の国情では簡単。
国際的なイスラム過激派の組織なら、その程度の金はいくらでも用意できる。

二つ目の心配は中国中央政府の財政。
中国は軍事費の膨張が国際的に懸念されているが、実は国内での公安予算が正式な軍事費を上回っている。

これは反政府勢力の取り締まり、都合の悪い外国人の活動の監視、インターネットの閲覧規制などに使われる国家予算。
日本で言えば、公安警察の年間予算が防衛予算より大きいという状態だ。

ただでさえ沿海部の賃金水準が高騰し、外国企業が逃げ出し始めている経済状況で、人民解放軍の表向きの年間予算を上回る金額を、国内の治安対策に投じている事になる。
この出費に、中国政府の財政がいつまでも耐えられるのだろうか?

チベットは仏教徒がほとんどで、実効性は無いとはいえ、ダライ・ラマという心の支えがあるため、チベット族はそれほど過激な手段には走ってこなかった。
だがウイグル族にはダライ・ラマのような精神的支柱となる人物がいない。

中国の国産テロリストがチベットではなく、ウイグル族から出たのであれば、この違いが大きいかもしれない。

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2013/11/01 16:28
どちらにしても、、テロは悲しい。。。




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