Nicotto Town



アメリカ人の知性は健在

最近日米関係までがギクシャクしてきているが、これは二つ双方に原因があると思う。

一つは文化、価値観の違いを認識できる能力が、どちらの国の国民にも低下してきている。

日本人が「アメリカ人は~」と言う時には、それはほとんどの場合、学校の英語の教科書で習ったWASPを指している。

WASPは White, Anglo-Saxon, Protestant の略。白人、アングロサクソン系の民族的ルーツ、キリスト教プロテスタント派、という事。

これを全部満たしていないとアメリカ合衆国では主流派にはなれない、という時代も確かにあった。

だが、今では知っている人も多いだろうが、米国にはWASP以外にも数えきれない程のエスニックグループがあって、米国人=WASPという図式はもう成り立たない。

政治の世界でのその走りが故ジョン・F・ケネディ大統領。

暗殺された悲劇の大統領というイメージばかりが有名だが、実は米国史上初めてで、かつ現時点では唯一のカトリック教徒の大統領である。

米国大統領はプロテスタントでなければならないという「常識」を覆した人物だった。

カトリックにはローマ法王という、全世界のカトリック信者を統べる指導者がいてバチカン法王庁がある。

米国でカトリックが大統領になれなかったのは、米国の利害とローマ法王庁の利害が対立した時に、大統領がカトリックだと国益を損なうのではないか? という懸念からだった。

J・Fケネディはそのような場合でも米国の利害を優先する姿勢を明確にして、それまでの政界の常識を覆した。

彼の前例がなかったら黒人大統領の誕生はもっと遅かったかもしれない。

バラク・オバマ大統領がケネディを政治の手本と公言してはばからないのは、そういう理由もあるのだろう。

日本は「単一民族国家」というフィクションがまかり通ってしまうぐらい均質性の高い国家だが、それでも価値観は相当多様化していて「日本人の考え方」はそれこそ千差万別になっている。

が、アメリカ人はどうもまだ日本人というと十把一絡げに「こう考えているはず」と決めつけがちなところがある。

もう一つの原因は、日本人のみならず最近はアメリカ人も「思考停止」に陥りやすい人が増えているという事。

「思考停止」とは、自分自身の頭で物事を考えるのをやめて、なんとなく正しそうな人の意見に付和雷同してしまう事。

日本人は戦前からそういう傾向があったが、理性と知性を尊ぶはずのアメリカ人にもそういう傾向が見られるようになった気がする。

特に2001年9月11日の同時多発テロ以後は、中東からの移民というだけで迫害されたり、イスラム教の礼拝所であるモスクが嫌がらせを受けるという事件が米国では頻発した。

その愚行の極めつけがイラク戦争。

大量破壊兵器を隠し持っているという理由で、国連の承認を得られないまま、米国と一部の同盟国だけでイラクと戦争した。

が、サダム・フセインを処刑した後になって大量破壊兵器など無かった事が判明してしまい、米国政府自身がその情報は誤りであった事を認めざるを得なくなった。

この時期アメリカ社会は相当数の国民が思考停止状態に陥っていたと推察できる。

ではアメリカは馬鹿ばっかりの国になったのか、というと、いやいや、アメリカ人の合理的知性はまだまだ健在だという事を、身を以って示してくれているアメリカ人がいる。

トニー・マラーノという年配の年金生活者だが、最近は執筆活動でも知られている。

日本では「テキサス親父」という愛称で知られている。

この人が日本で有名になったきっかけは、日本の戦時中の韓国・朝鮮人従軍慰安婦に関する米軍の調査資料をネット上で公開した事だ。

現在でも YouTube やこの人のブログで見る事が出来る。

http://propaganda-buster.blogspot.jp/

 

これはまだ戦時中の1944年に、米軍が日本軍を追い出して占領した地域で聞き取り調査を行った時の記録で、秘密指定が解除されて公開された物。

この中では従軍慰安婦を「職業的売春婦」と結論している。

日本と戦争している最中の米軍の調査報告書なのだから、日本にとって都合の悪い話はでっち上げてでも載せたかったはず。

その報告書でさえ、従軍慰安婦が「強制連行された性奴隷」とは言えないと書いてある。

テキサス親父さんは米国内に建てられた従軍慰安婦像を州や市の政府が撤去するよう求める署名活動を始めた。

だから日本人、特に若い世代には大変人気の高いアメリカ人だ。

だが、ここで一つ注意すべきなのは、テキサス親父さんは決して「親日派」ではない、という点だ。

彼はイタリア系のごく平凡なアメリカ市民であり、特に日本や日本人との接点はない。

韓国による慰安婦像設置に反対しているのは「日韓のもめ事をアメリカ国内に持ち込まないでくれ」というのが最大の動機だそうだ。

上に紹介したブログなどのタイトルは「I Love Japan」とかではない。

あくまで「Propaganda Buster (プロパガンダ・バスター」である。

プロパガンダとは、大衆を特定の意見に賛同するよう誘導するための宣伝活動の事。

たとえば第二次世界大戦時の日本の大本営発表などはプロパガンダの典型だ。

だからプロパガンダには虚偽、意図的な曲解などが含まれている。

テキサス親父さんは韓国の「慰安婦は性奴隷だった」という主張をプロパガンダ、つまりアメリカの国民に間違った判断をさせる有害な宣伝工作と判断した。

そこで韓国のプロパガンダを米国社会から排除すべく、慰安婦像の撤去運動などをやっているわけだ。

だから彼は別に日本の味方をしているつもりはないのだろう。結果的にそうなっているだけだ。

テキサス親父さんの行動原理はどこかの国の味方をする事ではなく、自分の国と同胞であるアメリカ国民を外国のプロパガンダから守る事である。

それが理性と平等を尊ぶ「アメリカ的価値観」であるから、アメリカ市民としてそれに従っているだけだ。

だから日本が批判されて然るべきと判断した時は、日本に批判的な言動を遠慮なく取る。

繰り返すがテキサス親父さんは、別に超エリートでもインテリでもない。普通のサラリーマンとして人生の大半を過ごした人に過ぎない。

だが「自分の頭で物事を考え、自分の頭で是非を判断する」という生き方を貫いている。

是々非々の判断、と口で言うのはたやすいが、自ら実行するのは意外と難しい。

日本人は日本に好意的な人を見つけると、万事に関していつでも味方をしてくれると思い込み、そうでない行動に移ると「裏切られた」と言い出しやすい。

だが、是々非々の判断を自分の頭でやっている人なら、それが当たり前なのだ。

自分の頭で物事を考え、自分自身で是々非々の判断をし、安易に片方に肩入れしない。

このテキサス親父さんの「健全なアメリカ的合理主義」を、今こそ日本人は学ぶべきではないだろうか?

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2014/02/08 06:05
テキサス親父の動画は拝見したことがあります。
自国の資料で違うことが証明できるのに間違った考え方を押し付けようとしている人がいることが心底嫌という感じですね。
政治的思惑がないから自分の信念で動ける、といえば簡単ですが、確かに誰でもできるかといえばできないことではあります。

政治をワイドショーにしてしまってから日本の政治は幼稚になりました。
昔は圧倒的支持があった政治家にも全面委任はしなかったし不人気な人をそれだけで切り捨てもしなかったものですが、今は有権者自身がふらふらしている感じがします。
その意味でも今の選挙制度(比例区とか小選挙区とか)は再検討した方がよいのかも。
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2014/02/06 20:03
そうですね

そして、、、都議選、ようく考えて、、

明日に向けて(794)東京都知事選に思う・・・問われているのは民衆的な力の成長と拡大だ! http://ln.is/blog.goo.ne.jp/tomor/qPW6c … @toshikyoto




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