Nicotto Town



STAP細胞の有用性

STAP細胞を巡る謎は解明されるまで、かなり時間がかかりそうである。
再生医療の道を閉ざすのどうの、という論調もあるが、今回の騒動の副産物としてMUSE細胞に光があたった事は良い事かもしれない。

Multilineage-differentiating Stress Enduring の略で、筋肉、神経など様々な種類の細胞に変化する事ができる。
そういう意味では、ES細胞、IPS細胞、そしてSTAP細胞と同様の「万能細胞」である。
発見したのは東北大学。

http://www.stemcells.med.tohoku.ac.jp/greeting/index.html

MUSE細胞はもともと人体に含まれている多能性細胞。多分全ての生物にある。
トカゲやヤモリの尻尾や足がそっくり切り落とされてもまた生えてくるのは、この種の多能性細胞が数多く存在し、効き目が強いためだろう。

一般に生物は下等なほど再生能力が強い。おそらく高等生物に進化する過程で、その代償に再生能力を失ってきたのだろう。
だがヒトのような高等動物でも完全に消失したわけではなく、成人した人体の中にもわずかながら残っている。

MUSE細胞はもともと人体の中に存在した物を「発見」したのであって、人工的に「作った」わけではない。
ES細胞は動物の「胚」という組織をバラバラにして作る。万能細胞としては「半人工」だろうか。
iPS細胞は遺伝子操作をして作るので完全に人工。
STAP細胞も実在するとしたら外部から刺激を与えて作るので人工。

MUSE細胞については既に日本国内で特許が成立している。

http://medpat.jp/patent_publication/JP05185443B.pdf

特許が取れているという事は、当然第三者による再現実験は複数回成功しているのだろう。
であれば、ヒトに応用可能な「第3の万能細胞」はMUSE細胞の方である。
STAP細胞は「第3の人工万能細胞」と言った方が正確だろう。

現在STAP細胞の正体はMUSE細胞という説がある。MUSE細胞を分離したのを、人工万能細胞を作ったと勘違いしたというわけだ。
またiPS細胞はMUSE細胞を活性化させた物だという論争もある。

この辺は科学者にしか証明できないし、まだ決着がついていないので、ここではSRAP細胞は存在すると仮定しておく。
またES細胞、iPS細胞、MUSE細胞、STAP細胞は全て別の物だという前提で論じる。

まずMUSE細胞が論文として発表されたのは2011年の事である。
だが一般紙などのマスコミが今までに取り上げた事は、一紙あたり片手で数える程の回数しかない。
発見者の筆頭が女性の教授、つまりリケジョであるにも関わらず、である。

これは投稿した科学誌の差だろう。
Proceedings of the National Academy of Sciences of the USA という科学誌で、一般の人は聞いた事もないだろう。
我輩のような素人でも名前だけは知っている Nature のような有名誌ではなかったから注目を集めなかったのだろうか。

さて臨床現場での有用性という点ではどうだろうか?
ES細胞はそのまま育てれば胎児になり得る胚を壊すので、ヒトに応用するのは問題が多い。

これを解決するために人工万能細胞として開発されたのが iPS 細胞。比較的作製に手間暇がかかるのと、癌化の危険がゼロではない点が弱点とされている。

STAP細胞は遺伝子操作が必要なく、倫理的問題も生じない。しかし今回の騒動で、移植できる細胞塊に育てるまでは結構手間暇がかかる事が分かった。
実在するとしても作製に天才的職人技が必要だとしたら、より簡単にできる万能細胞かどうかは心もとなくなった。

STAP細胞は胎盤の細胞に分化できる点でES細胞や iPS .細胞より多能性が優れているらしいが、人工的に作った胎盤を必要とする再生医療の治療というのがどの程度あるのだろうか?

MUSE細胞はもともと人体にある物を分離するだけだから、工程は比較的単純。
さらに本人の体から分離したMUSE細胞を培養して増やして体内に戻すのなら、拒絶反応の心配もない。

MUSE細胞は発見されて間もない理論なので、多能性がどの程度なのか、どういう使い道があるのか、はこれからの研究課題である。
だが、もし高等生物はMUSE細胞が少ないので再生能力が低いという事なら、体外で大量に増やして本人の体内に戻せば、損傷した臓器を再生できる可能性がある。

さらにMUSE細胞は、分化の方向をコントロールする必要がない。
ES細胞、iPS細胞、STAP細胞のいずれも、実際に移植するにはあらかじめ何の細胞に分化するか、化学物質などを加えてコントロールしないといけない。

MUSE細胞はいわば「壊れた体の修理屋さん」みたいな細胞であるらしく、人体の血液中に放り込んでやれば、勝手に必要な種類の細胞に分化するらしい。
再生医療の臨床現場で「どれだけ役に立つか?」という点では、一番便利な万能細胞ではないだろうか。

STAP細胞、あるいはSTAP現象の存在が証明されるとしても、MUSE細胞と iPS細胞を組み合わせれば大抵の再生医療が可能になるのなら、再生医療の実用化を待ち望んでいる現場の患者さんにとっては、「だから何なの?」という話でしかないかもしれない。

STAP現象が証明できたら確かに科学の常識を覆す大発見だ。
だがその重要性はあくまで、理系の科学者、研究者にとっての重大さでしかない。
MUSE細胞を、それで対応できない部分は iPS細胞で、という組み合わせで再生医療が可能になるなら、大多数の一般人にとってはそれで充分だろう。

STAP現象が実在するなら、それを証明する事の科学的意義は分かるし、それは是非成功して欲しいが、再生医療の実用化にどれだけ役に立つのか?
この視点からの議論を忘れてはいないだろうか?

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2014/04/16 23:19
Stimulus-Triggered Acquisition of Pluripotency cellsという定義はかなり曖昧なので
「合理性の高い仮説だ」という今日の笹井氏の会見はうまく逃げたなぁと感じました。
STAPを現象を仮説として残している点で否定はしないで、
「現象が存在するならばSTAP細胞も存在する」というロジック。
ここら辺はO氏と違って流石です。




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