Nicotto Town



クールジャパンは衰退する?

日本の、少なくとも既存の、ポップカルチャーコンテンツはもう衰退期に入っていて未来はないのではないか?
そんな風に思わせられたのは、10年ぶりにゴジラの新作が公開されるからである。

ただしアメリカ製のハリウッド映画としてである。
予告編はこちら。

http://www.youtube.com/watch?v=64c6VLNJQiE&feature=youtu.be

ゴジラシリーズは日本が産んだ世界に通用するポップカルチャー作品の一つだが、もう日本のコンテンツメイカーには「今までにない斬新な作品」を生み出す力量はないのではないか?
日本のゴジラシリーズは2004年に公開された「ゴジラ Final Wars」が最後。

ハリウッド版としては1998年に「Godzilla」として製作された事があるが、ゴジラの造形があまりにも日本のそれと異なっていたため、少なくとも日本人のゴジラファンには評判が悪く、続編を意識したラストであったが、パート2は製作されなかった。

2014年版のハリウッド製ゴジラは、造形が日本のオリジナルに近く、かつ宣伝用画像の他のバージョンでは1954年のビキニ環礁での水爆実験に言及しているシーンがある。
明らかに1954年の第1作の完全リメイクのようだ。

これを日本ではなく米国が作ったという点が、日本のコンテンツメイカーの凋落ぶりを表している。
先日日本の映画館で日本向けの予告編を見たが、使われているシーンが全く異なっていた。
そしてその相違が、なぜ日本人が新ゴジラを作らなかったのか、を何よりも物語っている。


ハリウッド製ゴジラ2014は原発事故のシーンから始まる。米国の原発だが、原因不明の大事故に襲われて崩壊し、犠牲者も出る。
ついにゴジラが人前に登場するシーンでは、その前兆として津波が町を襲う。
言うまでもなく東日本大震災と福島第一原発事故からインスパイアーされたイメージだろう。

だから日本では作製できなかったのだろう。
被災地、特に原発事故の被害を受けた人たちから抗議を受ける事を恐れたのではないか?
ハリウッドに作らせれば、もしそうなっても日本側の関係企業は責任を取らなくて済む。

これは推測に過ぎないが、もしこの通りだとしたら、日本のポップカルチャー、コンテンツメイカーはもうだめだ。
政府のクールジャパン戦略も、作り手がレベルダウンする一方だというのなら、いずれ破綻する。

放射能被害を受けた人がいるのに、怪獣映画のネタにするのは不謹慎だという批判は1954年の第1作の時もあったはずだ。
まだ広島、長崎の原爆の記憶が生々しかったし、ビキニ環礁沖では日本の漁船が死の灰を大量に浴びて犠牲も出た。

しかし、だからこそエンターテインメント作品の題材にして、広く世に問うべきだという意見が勝り、日本が誇るポップカルチャーの傑作が生まれた。
歴史的に評価が定まっているゴジラ作品でさえ、批判を怖れて作れなかったというなら、日本のエンタメ産業は終わっている。

今の日本は映像作品は過去の名作のリメイクが目立つ。その事自体を悪いとは言わない。
またコミックや小説作品も、日本人にしか受けない作品ばかりがもてはやされる。これもそれ自体が悪いとは言わない。

エンターテインメント、ポップカルチャーという分野は、玉石混交の何でもあり、という状況の時が一番面白い。
ひたすらバカバカしい面白さもあれば、ほろりと泣かせる深刻な作品もあるし、見た人読んだ人を2,3日考えこませるようなハードな社会派もある。

そういう多種多様な作品が成功、失敗を問わず次々と世に問われ、その中から特に優れた物が定番として残っていく。
やがて定番では飽き足らなくなった人たちが出てきて、また新しい玉石混交が始まる。
日本に限らず、エンタメ、ポップカルチャーというのはこのサイクルを繰り返す事で進化してきたのだ。

だが、日本の既存の有名、大手と言われるコンテンツメイカーは、次の時代を切り開く力量を喪失してしまっている事がはっきりした。
これは映画に限らず、出版、テレビなどでも同様だろう。

かく言う我輩もネット上だけだが、ポップカルチャーとしての小説を発表している身だから、暗澹とした気分になった。
では希望は無いのか?というと、険しいが道はちゃんとある。

長引く国内経済の不振で、エンタメ業界は自社の内部に抱え込む形でクリエイターを育成できなくなっている。
その結果まだ20代、30代の若い人たちがインディーズレーベルとして、新しいコミック、アニメ、イベントなどのポップカルチャーを生み出そうとしている。

ビジネスとしては極めてハイリスクな物が多いが、既存大手がチャレンジ精神を完全に失っているのであれば、これから世に出ようという人たちは、そういうインディーズベンチャーと組むべきだ。

もう一つの道は外国のコンテンツメイカーに認めてもらおう、というものだ。
特に西ヨーロッパ諸国には、小さいが質の高い映画製作会社がたくさんある。
第2次世界大戦後、疲弊した欧州諸国にハリウッド作品が大量に流入したため、自国の映画産業の衰退を怖れて、特にフランスなどは国費を大量に投じて国産作品の生き残りを図った。

だが、単純な娯楽作品ではハリウッドには太刀打ちできないので、ハリウッドには作れないような芸術性の高い作品を作れる製作者だけを生き残らせた。
だから自分の小説の映画化を夢見ているなら、フランスの映画会社に認めてもらう事を目指した方が確実だ。

あとは新興国のコンテンツメイカー。特にイスラム圏の経済新興国。
たとえばトルコ、UAE、パキスタン、マレーシア、インドネシアなどだ。

日本もそうだったが、経済が成長して暮らしが豊かになると、エンタメ作品の需要が高まり、輸入品だけでは供給が追い付かなくなる。
その結果国産のエンタメ作品が作られるようになる。
その原型、原作に使ってもらえるような作品を目指せばいい。

どうやって? という点はそれほど心配しなくていい。
自分で外国に売り込みに行くのは大変だが、レベルの高い外国のコンテンツメイカーは東京、大阪などに小規模だが情報収集の拠点を既に置いている。
SNSを駆使すれば、そういうコンテンツメイカーに見出してもらう事は可能だ。

今後日本は人口が減少していく。それはあらゆる商品のマーケットが国内では縮小する事を意味する。
エンタメ、ポップカルチャー作品の市場も例外ではない。
同時に高齢化が進行する。これは「若者」「まだ若い」世代の絶対数もまた減少するという事だ。

ライトノベル、アニメなどの新しい潮流は若者向けであり、若者か若者並みの柔軟な頭を持った人にしか作れない。
だがそういった新しい潮流の作品のマーケットは日本では今後どんどん小さくなる。
当然クリエイターの収入も今後は右肩下がりになっていくはずだ。

我輩のように新しいチャンネル、新しいトレンドに乗ってエンタメ、ポップカルチャーの世界で羽ばたこうと思う人たちは目指す方向を間違えない方がいい。
既存大手が今後狙うのは、決まりきったパターンの高齢者向けのコンテンツだ。
ビジネス戦略としてはそうせざるを得ない。

今後この分野で世に出ようという人たちは、老若男女を問わず、インディーズベンチャーか外国のハイレベルなコンテンツメイカーに認めてもらえるよう頑張る。
これが正しい道である。

アバター
2014/04/18 17:59
なるほど、、、、、

そうなのか、、、

@@;




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