Nicotto Town



トーキョー・シンドロームは起きるか?

「パリ症候群」という言葉をご存じだろうか?
これ、最初はパリを訪れた日本人旅行者が陥る精神的ショック症状の事だった。
世界に冠たる花の都で、知的なパリジャン、パリジェンヌとの交流を期待して胸躍らせて行ったはいいが、現地で非常につっけんどんな対応をされてショックを受けたという話だ。

最近これが中国人旅行者にも広がっているようで、観光地としてのパリの評判が一部で悪くなっているらしい。
さて日本も観光立国を目指してあの手この手で外国人観光客誘致を図っている。
これが成功した場合、パリと同じ現象が起きる可能性が高い気がしてきた。

パリ症候群ならぬトーキョー症候群というわけだが、日本人はフランス人と違って親切で「おもてなし」の心に満ちているから大丈夫、というような単純な話ではないと考えた方がいい。

パリで明らかに外国から来たと見える観光客に、冷たい対応をするという事態は、おそらく最初からそうだったわけではないだろう。
外国人観光客が増加し始めたばかりの頃のパリの市民は、ありったけの「おもてなし」を心がけていたはずだ。

ここからは我輩の個人的な推測に過ぎないのだが、非常にマナーの悪い一部の外国人観光客が地元の人たちの心証を悪くし、その結果外国人観光客全般に対して、つっけんどんな態度を取るウェイターや店員が増えたのではないかと思う。

政府のPRのおかげで東京にも外国人観光客が目に見えて増えている。
我輩の自宅は下町の観光名所に近いので、外国人観光客に道を聞かれたりする機会が急激に増えた。
だが一部の外国人観光客の態度の悪さに、はらわたが煮えくり返るような思いをさせられる事も増えてきた。

マナーの悪い外国人観光客、と言ったら「ははあ、中国人だろ」と思う人が多いかもしれない。
ところがそうではない。我輩が辟易したのは英語を話す白人観光客だ。

まあ米国かヨーロッパから来た観光客だろうが、とにかく態度が悪いのだ。
「ここは、あんたの国の植民地じゃねえぞ!」と怒鳴りたくなるのだ。

東京はJRの電車と地下鉄路線が網の目の様に入り組んでいて、たいていの場所へは電車で行ける点が売りなのだが、その分地元の人間でも分かりにくい時がある。
鉄道会社の駅員さんだって、全路線の駅と乗り継ぎ方を暗記している人なんてあまりいないんじゃないだろうか。

先日もある地下鉄の駅で外国人からいきなり「シンバシ!」と大声で言われてびっくりさせられた。
どこで電車に乗ればいいのか訊いているようなので、目の前のその駅だと教えてやったが、あきれ返った顔で「オー・ノー!」と大声を上げて、ぷいっと顔をそむけ、次々と駅員に食ってかかり始めた。

路線図を見て気づいたのだが、どうやらJRの新橋駅に行きたかったらしい。
その地下鉄は新橋駅に乗り入れている。だからその駅で地下鉄に乗れば、乗り換えなしで地下鉄の新橋駅へ行ける。

駅名が同じなら、大抵の場合地下鉄の駅とJRの駅は同じビル内にあるので、誰かがその地下鉄路線を教えてあげたのだろう。
だが本人は地上を走る電車に乗らなければいけないと思い込んでいるから、話が通じなかったわけだ。

それを教えてやろうと思って再度話しかけようとしたが、これみよがしにそっぽを向いて「ノー・サンキュー。フン」
その後も駅員にホームを指さされて教えてもらっても「オー・ノー!」とわめき散らしていた。
我輩も頭に来たのでそのまま放って立ち去った。

東京の鉄道網、京都のバス路線網などは、地元の人間でも普段使っている路線でもない限り、質問されても即答できないほど複雑だ。
まして観光地に近いと言っても住宅地の駅では、英語が通じない方がまだ普通だろう。

確かに日本人が英語が出来なさすぎるのは事実だが、欧米の植民地であった歴史がない日本で、英語がスラスラ通じないからと言って、だれかれ構わず怒鳴りつけるというのは、いくら観光客でも許容できない。
少なくとも見知らぬ他人に物を教えてくれと頼む時の態度ではないだろう。

もう一つ典型的に迷惑なのが、道端で通行人に大声で例えば「シンジュク! シンジュク!」とか大声を上げている連中だ。
これも目をむいた表情で怒鳴りつけるような口調で言うので、小さな子供なんかは怯えている。

やはり英語で話しかけたが通じず、キレてしまったのだろうが、我輩はそういう外国人見ても助けてやらずに素知らぬ顔で避けて通る事にしている。
話に聞いた事しかないが、かつて白人が植民地の現地人に対して取っていた態度は、こんな感じだったんだろうな、と思えるからだ。

もっと外国人に観光に来てもらおうという政府の方針には賛成だし、外国人に対するおもてなしを今から練習しておこうというのはいい事だと思う。
東京オリンピックを控えて日本人はもっと英語ができる様になるべきだというのも、それは全くその通りだと思う。

だが、それはあくまで「客」としての礼儀をわきまえた相手の場合だ。
上記のような傲岸不遜な白人観光客にはむしろ「来ないでくれ」と言いたい。
向こうだって、そんなイラつく経験ばかりなら、日本に旅行に来たって楽しくないだろう。

では中国人はどうかと言うと、少なくとも見知らぬ他人に道を訊く態度だけに関しては、はるかに中国人の方が礼儀正しい。
隣の国だけあって、中国語はおろか英語ですら日本ではなかなか通じないという事ぐらいは知った上で来ているからだろう。

英語も話せない中国人が相手の場合、身振り手振りだけで教える事になるのだが、辛抱強く時間をかけてなんとか理解しようとする。
分かった時はもちろん、結局行き方が分からなかった場合でも、愛想笑いの一つも浮かべて感謝の念を示してから去っていく方が、中国人観光客には多い。

乗り換えなどが複雑で鉄道が使えそうにないと思った時、中国人は迷わずタクシー乗り場へ直行する。
英語が通じないからといって簡単にキレる白人観光客は意地でもタクシーを使いたがらないようだ。
東京のタクシーは観光客にとっては決して安くはないが、運転手のマナーの良さと料金の透明性はロンドンと並んで世界で1,2を争うレベルである事を事前に調べてきているかどうかの差だろう。

こういう所は国の経済力の差も表れているのだろう。
誤解のないように言っておくが、我輩がムカついているのは上記のような英語しか話せない白人であって、同じ白人でもフランス人はもっと礼儀正しい。
フランス人は英語で質問してきて、英語が分からない日本人が身振り手振りで必死に伝えようとすると、いくら時間がかかっても辛抱強く耳を傾けている。

おそらく「不親切で冷たいパリのフランス人」というのも、そういう傲岸不遜な外国人観光客に連日接してきた結果、外国人全般に対して冷淡になったのではないだろうか。
中国人観光客のマナーの悪さというのは、かつてバブル景気の時に日本人観光客が世界中で言われていた事と共通している。

中国人のマナーの悪さは、国全体が「外交旅行の初心者」であるからだろう。
そう思えば、確かにはた迷惑ではあるが、まだ笑って許せるレベルだ。

さて、上記のような傲岸不遜な白人観光客は帰国した後、日本の印象を最悪に語るのだろう。
日本人は全然親切じゃなかった、というわけだ。
パリ症候群ならぬ「トーキョー症候群」なんて事が言われ出すかもしれない。

だが我輩はそれでいいと思う。
それで質の悪い外国人が来なくなるのなら。

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2014/11/16 14:36
たぬきの休息さん、コメありがとうございます。

沖縄の人たちの苦労が少しは分かるようになった気がします。

沖縄の米兵や基地関係者の傍若無人ぶりは、もっとひどいでしょうから。
アバター
2014/11/16 12:53
そういえば小林よしのり氏が漫画でそんな話を描いていたことがありました。

フランスに旅行に行ったが、フランス人はフランス語が話せる人には丁寧に応対する。
逆に白人であっても英語しか話せない人には見向きもしない。
英語をどの国の人も理解して応対できて当たり前と思わない方がいい。
みたいな。

イギリス人は隣国だからフランス人の気質も知っているでしょうし、おそらく冷たく対応されているのはアメリカ人なんでしょう。

日本の場合、駅名は大抵ローマ字でも表記されているので路線図を見ればわかると思うのですが、その手間をかける気がないのでしょうか。
日本人だって異国で電車に乗ろうと思えば、行きたい駅がどんな表記かくらいは調べてると思うのだけど。
(イスラム圏のように文字の違いがわからないとか、某国のようにいつ来るかわからないということもあるだろうけど。)
買い物目当てで来る人がいても構いませんが、目当てのものがどんなところに売っているのか調べずにくる人はあんまりいないのではと思うし、調べずに喚き散らされたら確かに迷惑。

中国人が迷惑がられているのはトイレなんでは。
あちらではトイレットペーパーを流すとつまるらしいので、流さずにその辺に放置して立ち去る人が少なからずいるのだとか。
日本人ってトイレはきれいであってほしい人が大半だから、そこは許容できないでしょう。
おっしゃるように場数をこなせばなくなるのかもしれませんが。

人類の歴史の中で白人優位の期間ってそんなに長くはないんですよね。
ローマ帝国を歴史の起源として語る国が西欧には多いけど、大半は当時支配されていた側の地域。
医療技術も戦争もイスラムや遊牧系の人達に押されていたのが現実。
今まで弱かったのが逆転して、これまでの反動で力押ししだしたのがまだ抜けてないんでは。

しかし他国に来て自国の文化だけで判断するのはもったいないことですね。




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