Nicotto Town



キラキラネームのルーツ

「赤ちゃん名付け」というサイトが2014年のキラキラネームベスト30というのを発表している。

http://namae-yurai.net/rareNameKirakira.htm

これ、あくまで「アクセス数が多かった順」だそうで、実際にこういう名前を付けたのかどうかは不明。
ネット上では否定的な意見が多いのだが、「こんな読み方ありえねえ!」的な漢字の使い方は歴史的に見てどうなのか、考察してみよう。

漢字には音読みと訓読みがある。
音読みとは中国語の漢字の発音が多少訛って日本語に取り入れられた物。

例えば「中華(ちゅうか)」は現代標準中国語の発音では「チュンファ」みたいな感じ。
わりと中国語の原音に近い音読みと言える。

ただ、日本に伝わった漢字の読み方は時代とルートによって変化した。
中国語自体が、時代や、同じ時代でも地域によって発音の仕方が大きく異なる。
中国の地名で誰でも知っている「香港」は世界中で「ホンコン」だが、多分広東語での発音だろう。
現代の標準中国語(北京官話、マンダリン、普通話などとも呼ぶ)では、この漢字の発音は「シャンガン」みたいな音になる。

北京式標準語に統一された現代の中国本土では漢字の読み方(発音)は一文字一種になっているが、日本語の音読みは複数あるわけだ。

さて訓読みだが、これはそもそも全て「当て字」と言っていい。
万葉集で有名な「万葉仮名」は、日本語の発音に似た漢字を無理やりあてた物だが、平仮名、カタカナが普及してくると、やまと言葉に意味が共通する漢字をあてて、日本独特の漢字の読み方をするようになった。

これが漢字の「訓読み」の起源である。
たとえば「赤」と書いて「あか」と読むのは、完全な当て字。現代中国語の発音は「チー」だし、中国語では一文字1シラブルが原則なので、日本だけの読み方だ。

であれば、漢字の意味するところに元の発音と無関係な読み方をあてる事は、日本語の歴史としては普通にアリだったわけであり、一概にキラキラネームを否定できない面もある。

また国際化した現代では、漢字の読みに意味が近い英語などの発音を当て字として対応させるという事も、発想の仕方としては否定しきれない気もする。

さて件のランキングだが、「キラキラネームだと思う順」にアンケートしたら、1位は「黄熊」と書いて「ぷう」だったそうだ。
熊のプーさんからの連想なのだろうが、黄色っぽいテディベアのぬいぐるみとの関係はどうなるのだろうか?

あと役所の窓口で確実に突き返されそうな物もある。
「火星」と書いて「まあず」を百歩譲って認めるとしても、「じゅぴたー」と読ませちゃいかんだろ。
ジュピターは「木星」だぞ。セーラームーンを知らんのか?

こういう「トンデモ系」の読み方というのは、実は苗字では昔からある。
たとえば「小鳥遊」と書いて「たかなし」。
これは「鷹無し」の洒落。猛禽類である鷹が近くにいないと、襲われて食べられる心配がないので小鳥が安心して遊んでいる、という意味の言葉遊びだ。

あるいは「四月朔日」と書いて「わたぬき」。
これは旧暦四月の最初の日に、着物の中の綿を抜いて夏仕様に仕立て直す習慣があったからだそうだ。

日本を代表する旧国名である「大和(やまと)」も、よく考えると「あり得ねえだろ!」な読み方である。
一説によれば「和」は本来は「倭」だったそうだ。

魏志倭人伝で有名な邪馬台国の女王・卑弥呼に時の中華皇帝から返信が届き、日本の事が「倭国」と記されていた。
ただし「倭」という字は「劣った」というニュアンスがあり、大和朝廷の支配が確立すると、この字を嫌って「和国」と書くようになり、「大いなる和国」の意で「大和」となり、それに「やまと」という読みをあてたらしい。

こう考えると日本語の漢字の読み方は古代からけっこう「キラキラネーム」があった事になる。
現代のキラキラネームはその21世紀バージョンと考えると、頭ごなしに否定は出来ないような気もする。

それに漢字そのものが、一種の暗号のような文字である。
基本的な語彙の漢字が成立した後は、遊びで作ったような漢字もけっこうある。

例えば「驫」という漢字だが、意味は「とどろき」。
馬がたくさん走っているとその足音が轟音のように聞こえるからだろうか?
もっとも最近の日本の若者は「三馬鹿」という意味だと思っている人もいるらしい。

あるいは「嬲」。訓読みでは「なぶる」。
字が出来た時代では「なるほど!」と思える組み合わせだったのだろうが、草食化していると言われている今の日本人にはピンと来ないかもしれない。
今の日本の若者はこれを「しゅらば」と読むかもしれない。

アバター
2015/03/01 12:18
なるほどー!! 大変お勉強になりました。

昔から武士は出世魚のように名前を変えたり、たくさんの名前を持ってたりしましたが
それって暗殺予防策そして本人特定を困難にする為だったのかなぁなんて思ったり。
きらきらネームも本人を知ってる身近な人にしか読めないから似たような効果あるかも??
アバター
2015/02/26 18:40
昭和18、19年あたりに生まれた方の氏名を見ると、「勝利」だの「軍」だのの漢字がよく使われます。

それが昭和20年を境にピタッとなくなります。

無論、戦争の影響です。

読みにくい氏名は困りものですが、戦争にまつわる氏名よりはマシかも知れませんね。

広場




Copyright © 2024 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.