Nicotto Town



集団的自衛権で自衛隊もし戦わば

安保法案の今国会成立はほぼ確実になったようである。
自民党と公明党は参議院で過半数を持っているし、仮に参議院で否決されても、衆議院で3分の2以上の議席を持っているから、憲法59条に基づき衆議院で再可決すれば法案は成立する。

さて反対派は「戦争法案」と呼んでいるが、我輩は反対派の論の張り方にいささかうんざりしている。
我輩だって戦争は嫌だし、それは何がなんでも避けるべきだという点に異論はない。
だが、太平洋戦争の時の日本国内の被害を言い立てて「戦争反対」と連呼されても、説得力を感じない。

どうせ安保法案の成立は阻止できそうにないのだから、「一体どんな形で戦争になるのか?」という点を考えるべきだろう。

仮に安保法案が戦争するための法律だとして、今現在の日本がどこと戦争をするのだろうか?
尖閣諸島を巡る対立があるため、中華人民共和国と戦争になると主張する人がいるが、日中の全面戦争は非現実的だ。

日本と中国が1対1で全面戦争をやったら、日本には100%勝ち目はない。
なぜなら、中国側の最後の切り札は核ミサイルだからだ。

中国が日本本土に軍事侵攻してきた場合は、日米安保条約によって、自動的に在日米軍が日本防衛のために介入する事になる。
が、その場合は事実上の米中戦争になってしまう。
米国も中国も核兵器保有国であり、両国が全面戦争になったら、最後は核ミサイルの撃ち合いにエスカレートする危険がある。

米国、中国とも政治指導者がそれを理解できない程馬鹿ではないはずで、その引き金になりかねない日中全面戦争など、米国が許さないはずだ。

日中間で武力衝突が起きるとしても、尖閣諸島での一時的、局地的な戦闘に留まるだろう。
安倍首相が今回の国会論戦で例示した、日本の島嶼が武力で占領されるという事態はあり得るかもしれない。

その場合の備えは既に出来ている。
我輩の見る所、海上自衛隊の最新型護衛艦でありヘリ空母である「いずも型」がその備えだ。
いずも型は空母かどうかという点ばかりが議論されたが、あれは同時に強襲揚陸艦でもある。

もし中国側がトチ狂って尖閣諸島を武力で占領したら、いずも型を中心とする自衛隊の奪回部隊が上陸作戦を決行する事になるだろう。
そうなったとしても、あの小島の上と周辺で陣取り合戦みたいな局地戦になるだけで、日本全土が空襲される事態は考えにくい。

今自衛隊の海外派遣先として一番可能性が高いのは、多国籍軍の一員として中東の紛争地域に派遣される事だ。
輸入原油の80%を中東に頼っている日本が、米国から強く要求されたら断りきれない可能性がある。

だが、そこで自衛隊が戦うのは、中東の主権国家のどれかとの正規の戦争ではないだろう。
現在のイラク、シリアの北部のような、当該国家の統治が崩壊している場所に、治安維持部隊として自衛隊が派遣される。
これが一番ありそうなシナリオだ。

これこそが自衛隊にとっても日本国にとっても、もっとも危険なシナリオだ。
自衛隊が仮に戦闘を行う場合、相手はその国の正規軍ではない。
反政府ゲリラや国際テロ組織などの、非正規の武装勢力と戦う事になる。

これは典型的な「非対称戦争」になる。
民間人と見分けがつかない武装民兵などが、一般人に紛れて接近し、自衛隊部隊に突然ゲリラ攻撃や自爆テロを仕掛けてくる。
これをやられると、いかに自衛隊の精鋭でも対処しきれない可能性が高い。

主権国家の正規軍ではない、武装ゲリラやテロリスト集団との戦闘がいかに危険かは、米軍がイラクとアフガニスタンで嫌というほど経験してきた。
特にイラクでは、サダム・フセイン政権の正規軍との戦争はあっという間にかたがついたのに、米軍の死傷者は戦争が一応の終結を宣言された後の方がはるかに多かった。

世界最強の米軍の精鋭部隊でさえ、非正規の武装勢力に非対称戦争を仕掛けられたら犠牲者がとめどもなく増加し、ついにはイラク新政府を放り出す形で手を引いてしまった。

この非対称戦争を近代戦の歴史の中でいち早く経験したのは、実は旧日本軍である。
先の日中戦争において、日本軍が当初戦争状態にあったのは、国民党の政府軍だった。
この段階では正規軍と正規軍の戦闘であり、兵器の性能に優れた日本軍が一貫して優勢だった。

だがこの優勢は、中国の国民党と共産党が対日で手を握り、いわゆる国共合作の結果、共産党軍が参戦してから一変した。
日本軍に比べるとお粗末な武装しかなかった中国共産党軍は、日本軍に対して徹底的なゲリラ戦を仕掛けた。

特に「便衣兵」と呼ばれた、民間人とまったく見分けのつかないゲリラが執拗に攻撃を繰り返したため、最前線の日本軍部隊は、戦闘員と民間人を無差別に掃討するようになり、南京虐殺事件も、その規模は中国のプロパガンダだとしても、その結果起きてしまったのだろう。

これと同じ状況には後に米軍がベトナム戦争で直面した。
北ベトナムから密かに侵入した、やはり民間人に偽装したゲリラ兵の度重なる奇襲で、精神に異常をきたす兵士が増えた。
その結果引き起こしてしまったのがソンミ村虐殺事件。
ひとつの農村の住民をほぼ皆殺しにしてしまった。その原因は、誰がゲリラで誰が非戦闘員なのか判別不能だった事だ。

現在中東で起きている武力紛争は、全てがこの「非対称戦争」であり、そこに自衛隊がどんな名目であれ駐留したら、かつての中国戦線やベトナム戦争と同じタイプの泥沼に引きずり込まれる危険が高い。
そして南京やソンミ村と同じ事を引き起こしてしまったら、日本に対する国際社会、少なくとも中東諸国の信頼は回復不能なまでに毀損される。

先の大戦から教訓を得るべきだとすれば、「自衛隊が非対称戦争に引きずり込まれる事はなんとしても避けるべき」という事のはずだ。

本当に戦争を防ぎたいのなら、今現在の戦争のあり方と最新兵器の事を熟知していなければならない。
「戦争反対」の精神には賛成するが、説得の材料として70年も前の「空襲の悲劇」だの、旧日本軍の兵士の悲惨を持ち出すのは、時代錯誤としか言いようがない。

今後日本が海外の武力紛争に関与する場合、一番危惧すべきなのは、日本人が被害者になる事ではない。
非対称戦争の泥沼に引きずり込まれて、自衛隊が、ひいては日本が、再び「加害者」になってしまう事だ。

繰り返すが、我輩も日本が戦争する事には絶対反対だ。
だが、現代の戦争、武力紛争、武器、兵器の事を何一つ知らない日本人が、ただ「戦争反対」「平和を」とわめいていれば戦争や紛争が防げるわけではない。
情緒一辺倒で訴える「戦争反対」は、国際社会の現実の前では、無力である。

アバター
2015/09/01 08:35
尖閣には日本の海上保安庁が入ります。
徐々に入って尖閣は海上保安庁の占有地となるそうです。
海上自衛隊が入らないのは某国を刺激しないためと考えます。
海上がどんなに荒れても死守している海上保安庁。
尖閣専従部隊の幸運を祈りたいです。
アバター
2015/08/03 03:46
戦前は国民党もゲリラ攻撃をしていましたよね。
通州事件とか。

南京攻略の時も正規軍が住民の服を奪って便衣兵として紛れ込むという事態が発生しています。
(指揮官が兵士を放置して重慶に逃亡したせいでもありますが。)
なのでこの便衣兵の処刑を曲解して虐殺という話が生まれた可能性があります。

現在の便衣兵との戦闘を避けたいのであればイラクとの戦争に同意してしまったのはかなりの失点。
その当事者である小泉元首相への国民の評価を考えれば「日本はあれを過ちとは考えていない」とメッセージを送っているのに等しい。
つまりこの法案に関係なく日本は既に巻き込まれているんじゃなかろうかと。




Copyright © 2024 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.