Nicotto Town



安保反対派のトンデモ英語にNO!

安倍政権の安保政策に反対の論陣を張り続けている、大学生などの若者の戦争反対キャンペーンが、ひところ程の勢いではなくなったが、まだいろいろと行われているようだ。
海外にもアピールしようという狙いか、英語のプラカードが安保法制反対デモでは目立ったし、最近はTシャツやバッジなども配布しているらしい。

それを見ていると、日本の若者の知的劣化もここまで来たかと暗澹とした気分になる。
彼らの主張の内容に対してではない。
集団的自衛権の行使が、将来国民の望まない戦争、武力行使につながってしまう危険性は、理論的な可能性としては絶対に無いとは言えない。

また、政治や社会的なテーマに無関心と言われ続けてきた若者が、その主張への賛否はともかく、声を上げ行動するという事自体は大いに結構な変化だと思う。
だが、そのやり方が、あまりにも子供じみた無知無教養に満ちているのは、かえって危険だという感想を持ってしまう。

「憲法9条バッジ」みたいな物が出回っているようだ。

http://健康法.jp/archives/7184

「遂に安倍政権の言論弾圧が始まった」みたいな声も出ているらしいが、まず国会や議員会館に入る時に制止されるのは当たり前だ。
下に「NO WAR」と書いてあるから、全体として見れば、安保法案の審議の経緯からして「安倍政権は憲法9条を破壊し、戦争を始めようとしている」という野党側の反対論をイメージ化した物と解釈するのが常識的な反応だ。

入館時にはずすか隠せという指示は、このバッジが特定の政治勢力の特定の主張を示威するためという理由で、それは妥当だろう。
「憲法改正支持」とかのバッジ付けた人は素通りできた、という状況なら「言論弾圧」だという言い分もあり得るだろうが、このバッジを隠せと言われたから言論弾圧だなどと言うのは馬鹿馬鹿しい。

このバッジのデザインの最大の問題点は「No. 9」と書いて憲法第9条の事だと主張している事である。
日本国憲法の「第9条」の英語表記は「Article 9」である。
これは日本政府の公式英訳だ。

http://www.japaneselawtranslation.go.jp/law/detail/?ft=2&re=01&dn=1&yo=%E6%86%B2%E6%B3%95&ia=03&x=0&y=0&ky=&page=1

国際的にも認知されている条文の英語訳なのだから、ああいうバッジとかTシャツ作るなら「Article 9」という文字列でデザインしないと、インテリ層には笑われるだけだ。

戦争反対のデモなどで「War Is Over」と書かれたプラカードなどを得意げに掲げている写真も見かけるが、出典を知っている世代の我輩にとっては、非常に目障りだ。
反戦デモでこのセンテンスが使われるようになったのは、ジョン・レノンの「Happy Christmas」という曲がヒットして以降の流行だと思う。

その歌詞の一節を取ったものだが、歌詞の本来の表記はこうである。
「War is over, if you want it.」
だが「War is over.」だけだと「戦争は(遂に)終わった」というニュアンスにしかならない。

ジョン・レノンがこの曲を始めてリリースしたのは1971年。当時彼は米国に移住しており、彼の平和反戦運動の直接のターゲットはいわゆるベトナム戦争だった。
ベトナム戦争が終わったのは1975年だから、この「War is over」というキャッチフレーズが流行った時点では、戦争はまだ終わっていないどころか、泥沼化の一途をたどっていた。

英文法に忠実に書くと「War will be over, if you want it.」になるはずの一文。
「あなたたちが本当に望むなら戦争は終わる」という意味。
そこを敢えて「is」と現在形にしたのは、戦争は終わらせられる「はずだ」という、強い意志と願望を表現するためだろう。

つまり「War Is Over」という表現は、現在進行形で起こっている戦争の当事国の国民が掲げてこそ説得力があるのだ。
今の日本はどこの国とも戦争などやっていないし、いかなる意味でも戦争の当事国ではない。

それに日本人が「War Is Over」というメッセージを掲げる事に違和感、苛立ちを持つ海外の人も相当多いのではないか?
イラク、シリア、南スーダンその他世界各地で、今まさに「War」が進行しているからだ。
国際法上「戦争」と定義されないだけであって、内戦も武力紛争もテロも今まさにそれに巻き込まれている非戦闘員にとっては「War」以外の何物でもない。

そういう「War」の脅威と無縁の生活を送っている日本人が、紛争地帯を含む世界の他の地域に見える形で「War Is Over」を誇示する行為は無神経以外の何物でもない。

どうしてもそういう英語のプラカード掲げたいなら「No More Wars」とでも書けばいい。
日本発祥の「No More Hiroshimas, No More Nagasakis」という有名なキャッチフレーズを、今の日本の若者は知らないのだろうか?

繰り返すが、我輩は若者たちが安保法制反対を主張し、デモなどの示威行動を行う事自体は否定しないし、反対もしない。
英語のキャッチフレーズを多用するのも、もっと多くの若者が気楽に参加できるようにという意図なら、反対はしない。
ファッション性重視のやり方を不真面目と批判する向きもあるようだが、これについてはジョージ・オーウェルという先達がいる。

ジョージ・オーウェルは「1984」「動物農場」など、社会主義国家の言論弾圧などのファシスト的傾向を痛烈に批判した著作で知られる。
ではオーウェル自身は反共主義者だったのかと言うと、正反対で、彼は英国の社会主義運動のリーダーの一人だった。

当時の西ヨーロッパ諸国の社会主義運動に対してオーウェルは「社会主義運動にはポピュラーソングの味が欠けている」と批判した。
社会主義者でありながら社会主義諸国を痛烈に批判し、一般大衆の心に響かない社会主義運動のやり方を公然と批判したわけで、安保反対運動をやっている今の日本の若者は、ジョージ・オーウェルの姿勢をこそ学んで欲しい。

英語のキャッチフレーズ多用が単なるファッションだとしても、関わっている若者たちはその写真をSNSに投稿するので、リアルタイムで世界中の人の目に留まる。
ここが昔と大きく違うところで、もろ刃の剣である。

英語のキャッチフレーズを使いたいのなら、出典の歴史的経緯まで含めて、正しい英語を使ってもらわないと日本人全員が国際的に恥をかく。

その主張や目的が、たとえ正しかろうと、いかに高尚であろうと、海外のインテリ層から失笑、嘲笑を買ってしまうような表現方法を使うのは、キャンペーンとしては逆効果にしかならないのではないか?

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2015/10/12 15:40
確かに、、、、




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