Nicotto Town



漢民族のナショナリズムの二重性

最近チベットに加えて、新疆のウイグル族と漢民族との感情的な対立が激化してきている。先日もウイグル族が漢民族を襲ったというニュースがあった。
これは単なる強盗事件で民族問題とは無関係なのだが、中国国内のネットには「ウイグル族を皆殺しにしろ」などと物騒な書き込みが目立っているらしい。

確かに近年の中国人、正確にはその中の漢民族の少数民族に対する態度は行きすぎがあるようだが、これをもって中国人悪者論が日本でまん延するのも困る。
まず日本人は「単一民族国家」という虚構が受け入れられるほど、国内の少数民族との深刻な摩擦の歴史がないので、漢民族のナショナリズムの複雑さを理解出来ていないようだ。

チベット人やウイグル族への弾圧を言葉で非難するのは簡単だが、漢民族のナショナリズムのいわば二重構造ともいうべき特質を知らないと、単なる誹謗中傷としか相手は受け取らない。それでは問題の解決に日本は寄与出来ないだろう。

王朝時代の中国には「領土」と「版図」という概念があった。
中原の民たる漢民族が住んでいる土地が領土、その他の異民族の居住地であって中華皇帝の直轄支配地ではない部分が版図。

王朝時代の中国はこの二つの要素で構成される国だった。
チベット、ウイグル人居住地(現在の新疆自治区)、蒙古人の勢力圏(現在の内モンゴル)などが当時の「版図」にあたる。

中国は漢民族主導の国と言われるが、歴史的には少なくとも2回、異民族王朝に支配されている。元朝と清朝である。国土の一部を異民族に実効支配された事も何回もある。

話が長くなるので清朝末期以後に限るが、辛亥革命直前の漢民族にとってナショナリズムとは「満州族から中原の支配権を漢族の手に取り戻す」事だった。
欧米列強に植民地化されるまで、漢民族のナショナリズムとは中国の中心部から異民族を追い出し、漢族の国家を再建する事だった。

だから日清戦争後、台湾を日本に割譲した時、中央の漢民族の間ではそれほど非難は強くなかった。台湾は当時の中国中央政府にとっては、文化的に遅れた野蛮な異民族の地であり、漢民族の支配復興という大きな目的の前には大した問題とは思われていなかったようである。

ところが欧米列強の強引な中国進出が始まり、半植民地化政策に苦しめられるようになると、「領土」と「版図」の両方を合わせて中国の「国土」という意識が漢民族の間で初めて広まってきた。

文化的には野蛮人扱いしてきた異民族の居住地といえども、欧米列強の植民地政策の前では等しく防衛すべき「自分たちの国土」だと、漢民族も考えるようになってきた。
また、ソ連が内モンゴルを含むモンゴル地区全体を自国の衛星国として中国から独立させようと謀り、外モンゴルだけに終わったとはいえ蒙古族の一部が中国から独立した。

その結果漢民族のナショナリズムが周辺異民族を含むいわば「大中国」意識へ傾倒していったのだが、そこへさらに油を注いだのが日本による満州国建国である。
中国のナショナリズムが「漢民族の独立」だけに焦点を当てていた頃なら、打倒した旧王朝の支配層である満州族の居住地などどうでもいいと漢民族も思ったかもしれない。

しかし「大中国」意識が広がった時代に日本が行った満州国建国は、漢民族自身にとっても侵略行為と映った。台湾の時とは漢民族の受け止め方が完全に変わっていたわけである。


その後日中戦争、第二次世界大戦を経て漢民族は新生中国、共産主義国家である中華人民共和国の指導的民族の地位を回復した。
ところが外国勢力の脅威から解放された途端、漢民族のナショナリズムは「漢族対国内異民族」の対立に焦点が戻ってしまったようだ。

その第1段が1950年のチベットへの軍事進攻だった。
冷戦時代には程度の差はあれ、漢民族の間で国内少数民族がソ連にあやつられて中国から分離独立を企てるのではないかという疑念があり、特に人口の多いチベット族、ウイグル族に対してきびしい思想統制が行われた。

そして現在はさらに一歩進んで「異民族の漢化政策」に踏み込んでいるように見える。
沿海部だけとはいえ驚異的な経済成長を遂げて自信をつけた漢民族が、積極的に将来漢族の脅威になる可能性のある少数民族を同化しようとしているのではないだろうか?

漢民族が支配層であり比較的国内が安定している時代には、国内少数民族に寛大な態度を取り、場合によっては無関心でさえあった。漢族の中原を脅かさない限り、異民族は勝手にやってくれ、という感じだ。

しかし漢民族が被支配階級になったり、「版図」の防衛が中原の命運にも重要な時代には、漢民族は国内少数民族を潜在的な敵とみなす傾向がある。

これが漢民族の持つナショナリズムの二重性であり、これを理解しないまま中国政府を非難しても、少数民族問題の解決にはあまり役に立たないと思う。

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2010/01/14 04:43
純粋に遺伝子レベルでの漢民族は後漢末からの戦乱でほぼ消滅したらしいです。
これは漢の時代と唐の時代の服装の変化を見てもわかります。

しかし、おっしゃるようにアイデンティティーとしての漢民族は未だ健在な訳で。
漢民族と他民族の区分は「中華思想を信奉するか」というところにあるのでしょうね。
「元」は漢民族化しなかったけれど「清」は漢民族化した。
だからモンゴル自治区は外様の扱いだけど旧満州は当たり前のように国土の一部となっている。
チベットやウイグルも、もし中華思想の門徒となれば、いずれ漢民族化してしまうのでしょうね。

日本も古代には朝貢した記録があるので、これを元に「中国の版図である」といわれたら本当に他人事ではないですね。
現実には「天皇」の存在を主張して以降は「化外無礼の国」であったのですが。
それだけに民主党は国の象徴たる天皇に対してもう少し敬意を持っていただきたいものです。
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2010/01/01 22:38
    .__●__
    (___)  いつも優しい言葉をありがとう。
   _(___)_      あたたかい心に感謝です。
  └□――□┘       
  ■|  寿  |■         ずーと、友達でいてくださいネ♪
◇  u― ―u   ◇  
☆〓 謹賀新年 〓☆
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2010/01/01 01:21
                 年賀状!!

      謹んで新春のお慶びを申し上げます

 旧年中は格別のお引き立てを賜り誠にありがとうございました。
 本年も変わらぬご愛顧のほどよろしくお願い申し上げます
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2009/12/31 20:28
こんばんわぁ(@^▽^@)
もぅすぐで(2010年)ですね(≧U≦)/
今年も色々とお世話になりましたm(_ _*)m
来年もよろしくお願いしますッ!!!!!!
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2009/12/30 16:59
今年、最後の訪問(●^o^●)
いっぱい いっぱい 感謝の気持ちをこめて~  でっかいステプを押していきます(●^o^●)
来年もよろしくね♪
ありがと~(●^o^●)v
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2009/12/29 22:57
『民族の自立と国家』という構図は、中国だけに限らず欧州・中東・アフリカ
と言った、大陸の中で国境の線引きをしている場所ならどこでも起こり得る
永遠の課題ですからね。
過去に何度となく民族浄化という名目上でジェノサイド(抹消大量殺戮)が
行われた経緯があって今の国家分布が出来上がった訳で、それが犯罪で
あるとか人権侵害等と言った所で何の意味も無いし。
ただ、現状ではグローバル化という怪物に飲み込まれてしまい、旧態然の
国家運営は難しくなっているのも事実。
そこで我を通すのか、それとも流れに身を任せるか―それこそが内政問題
で、他国が口を出してもこじれるだけ。

最新の報道で英国籍の麻薬密輸犯の処刑が執行されたとありました。
メディアは一斉に総スカンですが、法律できちんと定められていて犯人も
その事を知らないはずはない。それを人道に反するからとねじ曲げれば
1つの国の存在を否定する事と同義。
大使館・軍事基地内の治外法権や外交官特権等の特例は別として(これ
も隠れ蓑になっていますが)1つの国家としての尊厳は守られるべき。
その点で言うと、日米地位協定は著しく日本の国家としての尊厳を貶めて
いる訳なんですが・・・・・・・どうにかなりませんかね;;
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2009/12/29 21:24
昨日のダライ・ラマ14世チベット問題の次は
新疆のウイグル族ですか。
オリンピックの時にもこの問題がクローズアップされたことがありましたね。
中国の経済が日本の景気回復への足がかりになる以上、
あまり深入り出来ない気がします。
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2009/12/29 20:32
なるほど。中国の民族問題にはこのような背景があったのですね。

私も”中国人悪者論”を八割がた信じていましたw
実際中国はその不安定な状態のせいか日本人よりも色々と激しい人が多いので、つい中国政府を非難しがちなのだと思います。


少数民族が潜在的な敵となり得るのは理解できましたが、
じゃあその少数民族を国から追い出しちゃえばいいんじゃん。。。
(弾圧するのではなく独立させるなど無血で)
と思ってしまうのは平和ボケなのでしょうか^^;
アバター
2009/12/29 20:14
ふーむ、なるほど。

今、ちょっとした必要から中国の歴史を大雑把に調べていて、
あれほど文化や国民性の違う少数民族を、同じ「中華人民共和国」に包括しておくのは
大変なことじゃないのかな、などとも考えていたので
「領土」と「版図」の関係には納得するところがあります。

今、中国は高度経済成長を遂げることで、
世界における国際力を得て、国際的地位を取り戻そうとしていますからね。
まさしく「版図」の防衛が中原の命運に重要な時代なのかも。
防衛は、戦争などの防衛と言うよりは、
経済的な防衛――「大国でいなければ国際力を得られない」という意味での防衛力かな、
という気もしますが。




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