Nicotto Town



遥か昔の話

カリスは揺られる馬車の中で目が覚めた。
ぼんやりとした視界には、心配そうに覗き込むキャラバン隊の一人だろう人物が入ってくる。
「気がついたか」
心配そうではあるけど、どこか固い感じの声が響いてくる。
「…どうなったんです」
目玉の攻撃以降の記憶が無いカリスにとっては、どうあって倒して馬車に乗っているのかが理解できない。
「あぁ…船長は可哀想な事したな。とりあえずは、街まで送り届けるから安心して眠ってくれ」
カリスの問いには答えず、これからの事を話し始めた。
その事を聞きながら、カリスの目に映る範囲にいるはずの人間がいない。
「…リルドは…」
目玉との戦闘で何かがあったのだろうか…船長の事しか教えてくれないキャラバンの人間に、自分の幼馴染の事を尋ねる。
一瞬、目をそらした…なんとか、違う話題に持ち込もうとしたみたいにみえたが、ごまかせないと諦めたのかため息をつきながら問いに答えた。
「もう一人のほうな…一応無事だがここには乗っていない。大怪我とかしたわけじゃねぇんだ。アイツのおかげで助かったんだがな…隔離…させてもらっている」
意味が判らなかった。助けてくれた相手を隔離する理由が思い浮かばない…疑問ばかりが湧いて出るカリスに言いにくそうに、逆に質問してきた。
「アイツ…本当に人間なのか?」
それは、考えられない質問だった。
リルドは島でも同い年の幼馴染…人間以外のなにものでもないことは、カリスがよく知っている。
「そんな理由で彼を閉じ込めたんですか!人間って見れば判るでしょ!」
確かに、姿かたちは人間以外の何者でもない…しかし、島以外のところでは人に似たモンスターなんかはよく見られる。
時には、誰も知らない間に町中で生活していたりもする。
「あんたらの島ではそうかもしれないがな…」
人の姿をしたモンスターの事をカリスに伝えて、ついでに目玉を倒したときの状況も話した。
とても、人とは思えない力で目玉を倒す姿は、人型のモンスターを知るキャラバン隊にとっては、モンスターにしか見えなかったのである。
「…彼に会わせて下さい…」
カリスにとっては当然の願いである。
すぐに願いがかなえられ、会えることになった。誰も、助けてくれた人をどうこうしたいとは思わない。ただ、純粋に怖いだけだった。

「リルド…」
暗闇に声をかけると、返事は思いのほか元気そうな声で返ってきた。
キャラバン隊はいくつもの馬車で編成されており、本来はそれぞれに何人かが乗り込んでいたのだが、今…この馬車にはリルド一人が乗っている状況である。
特に酷い扱いを受けている感じはしなかったが、やはり手だけは縛られていた。
「何があったの?」
心配そうなカリスの声。とうのリルドは、カリスの無事な姿が見れて嬉しそうなのか、心配するカリスには「へいきへいき」と軽く応えて返す。
「平気って、手…縛られているよ」
それでも、両手を繋ぐ綱に余裕がある為か日常生活に支障をきたさないようになっている。
「キャラバンの人にも聞いたけど…何が起こったの?」
馬車は、既に動き始めていて街への道を進んでいる。
長くなるだろうと判断して、動き出したのだろう…たとえ、リルドがモンスターだったとしても、カリス相手には何もしないと判断したのだろう。
「ん~それなんだがな」
自分でも良く判っていないらしいリルド。
突然、何かがはじけるように湧き出したとか…普通では判らないだろう事だが、それ以外にどう表せば良いのかが判らない。
「それによ、最近自分を操りきれてなかったじゃん?」
確かに、島の兵士の時もモンスターの時も「やりすぎ」と感じる部分はあった。
「こうして一人でいるほう場、落ち着くんだよな…なんか」
自棄になっているわけでなく、こうしている方が本当に落ち着くらしい。
「あっ!…そういえば背中背中!…照れ屋の痣…今なら出ているかも」
いきなり焦りだしたと思ったら、島を出るきっかけになった痣の事。
確かに、興奮状態に出ている可能性が高いと思っていた…しかし、今は落ち着いていた。照れ屋の痣だって消えているかもしれない。
「興奮状態じゃないんだから、出ていないかも知れないよ」
そんな事を言いながらも、素直にカリスは背中を覗く…しかし、照れ屋だったはずの痣は、今は堂々とその姿を表していた。
「…照れ屋じゃなくなっている…」
無意味に驚いているカリスに、リルドは嬉しそうにはしゃいでいた。
「なんか、あらわれている自信があったんだよな。でも、これってなんだろうな…これが背中に出始めてから力を操りきれなくなった感じなんだが」
最近の事…リルドは思い出しながら訴えてきた。




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