Nicotto Town



10月自作小説 ~絶望と希望~


「僕は人生を自主退学させてもらう。
生きることに僕は疲れた。
みんな、今までありがとう。     」
 僕は、自分の遺書が懐に入れ忘れていないかの確認と、
「よし、縄がゆるんでいたりしていないね。」
縄の異常がないかの確認を 今、やり終えた。
よし、今すぐいこう。グズグズしていたら、いけなくなるから。
と、決意し、縄を輪っかにした部分に両手で掴んで、
その中に首を入れ、椅子を蹴り倒そうとしたら、
「安曇和志、発見。」
 誰かの声が聞こえてきたかと思えば、
突然飛んできた刃物で縄が切れてしまっていた。
スパッと切れた縄を持って、しばらく呆然としたが、
「何のつもりだったのだ。」
 さっきも聞こえた声で我に返って、
おそるおそる声がする方向を見てみると
黒いずきんをかぶった女性が仁王立ちして僕を見ていた。
ずきんで髪型は全く分からないけれど、
透き通るような白い肌で、目元はクリクリしている。
後、朗らかに笑えば、女優にデビューできるだろう。
服装は、スーツのような黒い上着に
上の服に合った黒いズボンだ。
・・・そんなことよりも、
 僕、あなたが誰であるのか知りませんけど、
どうして、僕の名前を知っているのですか?
 僕が疑問に思っていると、
彼女はまるで命令するように厳しい口調で、
また僕に話しかけた。
「いつまでも、呆然としていないで私に付いてきなさい。」
 見知らぬ人に刃物を投げるような怖い女性と
一緒にいたくないので、逃げようとしたら、
腕を掴んで引っ張って連行された。
正直、強く掴まれているので結構痛い…。

 まず、無言で、腕を引かれた先は、どこかのオフィスの前だった。
自動販売機の前で、飲み物を飲みながら、会話している人や
徹夜明けなのか、眠そうな表情をした人達を目にした。
「ここは、お前が働く仕事場だ。」
「僕は・・・まだ就職活動に苦戦している学生ですけど?」
そして、今日就活を苦に自殺しようとしていた。という
言葉を飲み込んで彼女に言った。
すると、彼女は
「・・・もう一人のお前の姿をこれから見に行く。その間は音を立てるな。」
 彼女の言っている意味が全然分からないけれども、
また、無言で腕を引かれた。
 次は、一人の男性が資料やパソコンを見ながら、
電話の話し声に対応している姿を目にした。
「あそこで働いている人は、お前だ。」
もう一人の僕の姿を見て、少し考えたら、思わず
「あ!そういうことか。」
と声を出してしまった。すると、彼女は慌てて僕を屋上に連れ出した。
「音を立てるなと言っただろう!!約束を破るな!!」
説教する彼女に謝罪してから、僕が声を出してしまった理由を・・・
彼女の行動に推理したことを話した。
「まず、ここは警察署です。
「正解。資料やもう一人のお前の服装で分かったのか。」
「はい。もう一人の僕とは、未来の自分です。」
ゆっくりと、推理したことを話す僕に彼女は聞いている。
そして、
「ここで未来の僕の姿を僕に見せてくれたのは、
自殺せずに生きろと伝えたいから。」
と、一番重要な推理まで話し終えた僕は、彼女の顔を見て
反応を確かめた。
すると、彼女は満足だと言うように優しく笑っていた。
彼女の笑顔に、顔をリンゴのように赤くしないようにするのに
かなり苦労した。
「正解だ。流石は警察官だ。若くても推理できるのか。」
「・・・ただ、あなたが何者で、何故僕のことを知っているのか
全然分かりませんが・・・。
「それは、お前と出会った場所まで戻ったら話そう。」
と、彼女がそう言ったので、
自殺する道具を用意していた人気のない
廃墟と化した会社の中まで戻ることにした。
そして、そこで教師が生徒に授業するように教えてくれた。
「さて、お前の質問に答えよう。
私は未来のお前に追われている怪盗で
私の仲間に過去・・いや、今の時間に送ってもらったからだ。
怪盗が、いつか一度はきっと必要になりそうな人間のことを
よく調べて、電話番号なんかも暗記しておくのは当たり前だ。
 ちなみに、私が怪盗である証拠だが。
現に胸元に入れていた紙がすられていることに
気づいたか?」
彼女の衝撃的な発言に慌てて懐を探ってみると、
紙が入っていたが、それは、僕が書いた遺書ではなく
「自分が活躍できる可能性を0%にするか
それとも、100%にするかの
どちらにしたらいいかという問いに
今のお前なら簡単に解けるだろう。
私のライバルとして再び会える日を楽しみにしているぞ。
怪盗 ブラッククイーン」
僕を励ますキザなメッセージとすり替えられていた。
メッセージを読み終わって、彼女に「ありがとう」と言おうとしたら
彼女はどこにもいなかった。

 そして、あの日から数年が経って
窃盗を担当している刑事となった今
辛い仕事もあるけれども、毎日充実してる。
 あの日、メッセージ以外に絶望を希望にすり替えてくれたと
考えては幸せだと休憩時間になる度に思わずにいられない。
 さて、今日もブラッククイーンの手かがりを探そうか。







アバター
2013/10/27 12:02
未来からのライバルが救いに来る…面白いですw
未来の彼は、いろんな感情を持って、ブラッククイーンを追うんでしょね。
アバター
2013/10/23 03:36
『小説家になろう』ではUP当日45アクセスでした。まずまずの成果。
アバター
2013/10/20 09:57
怪盗と呼ばれるまでになると、追われることに快感を覚えるのかしら。

将来の銭形刑部がんばれ!
アバター
2013/10/14 21:00
衝撃的な出だしと、予想出来ない展開と結末。

着想がすばらしいし、キャラも魅力があった。

すごく面白かったです。
アバター
2013/10/13 22:37
ブラッククイーン
かっこいいですね
義賊!
アバター
2013/10/13 07:24
この作品は、親と自分の進路で、もめて気分がふさぎ込んだ時にひらめいたアイデアを
少々改造して書いた物です。
微笑ましいと思われる光景に触れたり、味わったりして癒されるだけでなく
絶望が希望に代わった時でも、幸せと言えるのではないかと思って書きました。
アバター
2013/10/12 21:16
キャラ二人でのやりとり、とてもみやすいです。絶望からハッピーエンドというのもいい感じ。
あえて注文をつけるとすれば、余りスペースギリギリまで、キャラの容姿(性格をあらわす服装・メイキャップ・髪型)とか、メインとなる建物の風景(部屋の様子)とか描写をいれると、ぐっと、物語がひきたつかなあと思いました。



Copyright © 2024 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.