Nicotto Town



11月自作小説倶楽部 ~紅葉神社~


「悪いけど、俺、他に好きな子ができた。別れてくれ」

落ち葉がヒラヒラ落ちる秋の放課後、2人きりの教室であいつがそう言ってきた。
「お前のことが好きになった。付き合ってくれ」と、自分で言いながら
今度は別れ話を突然持ちかける…。
勝手すぎる…嫌、腹立たしい言い分に、
思わず、私はしばらく呆然としたけど、我に返って
「何で?」と理由を尋ねようと口を開いた頃には、もうあいつはいなかった。
あいつを追いかけることなく、悔しいのとムカツいている感情が交ざって
カバンを持って、教室を後にして走った。
その途中で、何回か人にぶつかりそうになったかもしれない。
また、何回か自転車にぶつかったり、転びそうになったりしたのかもしれない。
けれど、そんなことを気に留められるほどの余裕なんて今はない!!

 しばらくして、息をハアハアと切らせ、足に疲れた感覚でようやく走るのを止めた。
…体育の時間でもこんなに疲れるまで走ったことはなかったかしら。
辺りを見渡すと、赤い紅葉、黄色いイチョウがたくさん周囲を鮮やかに彩っていて。
写真を取ったり、絵を描くにはもってこいな風景。
下は、暗い赤や茶色などの落ち葉がたくさん落ちていてじゅうたんのよう。
そして、その隅っこに古びた社がある。
…こんなところに神社があるなんて、生まれてから16年間この街に住んでいるのに
初めて知った。
まぁ、疲れたので社の階段に腰掛けた。
踊るように風に乗って落ちてくる紅葉が綺麗ね。
私を慰めているつもりかしら。
ぼんやりとそう思っていたら
「そなた、何か嫌なことがあって、ここまで走ってきたからさぞかしお疲れでしょう。」
と、突然白い巫女さんの服を着た狐が…。
狐のような細い目をした人とか、ずる賢そうな人ではなくて、
狐が巫女さんの服を着て、私に話しかけてる!!
あまりにも不自然すぎる姿に怯えていたら…狐が・・嫌、
「そう怯えるな。・・あ、さては親に名を告げておらぬ者に
口を利くなとしつけられたのか。
私は樟葉だ。この紅葉神社で見ての通り巫女をしている。」
「…川下千乃です。」
と、人懐っこく樟葉さんは、私に接してきた。
とても葛葉さんが明るく話しかけてくるので、親しみを感じて、
私は、放課後にあったあいつとの出来事を葛葉さんに相談した。
「それは、悲しかったな。」
「はい…。」
「そう悲しそうな顔をするな。悲しんでも千乃だけが幸せがなくなるぞ。」
「…わかってます。」
あいつのことを思い出して、泣いてしまった私を樟葉さんは
泣き止むまでそっと抱いて、時々私の頭を撫で、白い布で涙を拭いてくれた。
「よしよし。そうだ。千乃は久しぶりにこの神社に来た客だ。特別に私の舞を見せよう。」
「まい?」
「そうだ。今で言う、ダンソウだったかな?それを見せようと思うが・・・」
「ダンス」とダンソウと言い間違えているので、クスクス笑ってしまったけれど
私を励ます為にしてくれていると思ったので、見せて下さいと頼んだ。
 
 葛葉さんの踊りは、とてもゆっくりとしたテンポで
ゆっくりと動いていてまるで、いつぞや学校のイベントで見に行った歌舞伎のような
感じ。
それでも、ゆっくりと動き、落ち着いた雰囲気の樟葉さんの表情や服装
それから、鮮やかな赤い紅葉を紙吹雪のように舞い上げる姿はとても美しくって
あいつのことで泣いていたことを忘れさせた。
20分ぐらい後に、舞が終わり
見せてくれたお礼を言うと
葛葉さんは、
「千乃は笑顔の方が愛らしいぞ。このお守りは、恋する乙女にはとても効く物だ。
大事にするとよい。」
「ありがとうございます。今日はとても楽しかったです。」

 葛葉さんからもらったお守りは、すぐに効いて。
翌日には、あいつなんかよりも優しくて頭が良い彼氏ができた。
何故か、私に恋愛の相談を持ちかけた友達や、進路のことでお世話になっている先生にも
恋愛や結婚の縁結びの効果まで発揮してくれた。
 改めて、お礼を言いたくなったので、記憶を頼りに、紅葉神社へ行ってみた。
けれど、そこは、あの綺麗な紅葉とイチョウの木しかなかった。
いつも、紅葉神社付近を散歩しているという、おじいさんに
場所を尋ねてみたけれど、紅葉神社のことなどそもそも知らないと言われた。

あなたのおかげで新しい恋ができました。
それから、友達と先生にも恋や結婚できたのはあなたのおかげです。
ありがとうございました。
樟葉さんに会う手段を思いつかなかったので、
一番大きな紅葉に向かってお礼を言ってから、
彼氏とデートの待ち合わせ場所に行った。












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2016/02/18 19:04
素敵な狐さんに出会えてよかったですね

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2013/11/30 19:58
若い内には辛い経験もしておいて方が幸福を掴み易いんでしょうね。

僕はそんなアドバイスされても生かせないトシになっちゃいましたが(自爆)
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2013/11/30 13:02
不思議な空間における、不思議な体験。
千乃ちゃんに新しい彼氏がすぐにできちゃうなんて、すごいご利益^^

歌舞伎という言葉の方が通りはいいですが、頭の中では神楽舞を想像していました。
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2013/11/26 04:01
 転載先「小説家になろう」で54アクセスを記録。更新日に40を越えれば、優良可でいうところの優と判断しています。
 いい話ですよ。ちょっとした約束事を守れば、ちゃんと読者の皆さんは評価してくださる。逆にアマチュアなのに、いきなりラノべ作家が意図的に壊した文体を、真似ると、こいつ下手だ、とみなされてしまうリスクを抱え込む、と考える私です。
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2013/11/25 05:36
 初心な少女と妖精との出会い。あいかわらずの絵本にむいた微笑ましいお話。ここ1年で、各会員のレベルアップは凄まじいものがあり、文章技巧のお約束的なところで、勝手ながら手を加えさせて頂きました。そろそろ知っていたほうが有利だと思いますので。あとは知ったうえで無視なさるのもよいでしょう。

☆ 台詞「!」 「?」の使い方
 昔は英語なので使うなとされたものですが最近はOKになってます。「!!」はラノベにつかわれるのですが、もともと漫画技法で、小説につかうと、特に持ち込んだとき、稚拙な文章だと判断されかねないので「!」にしたほうが良いと考え、本文が素敵でしたので、転載先では改めさせて頂きました。
 また、「!」「?」といった符号をつかうとき、「なんだ? ばか野郎!」みたいに、「?」と次の文の間に1字スペースをおき次の文を入れるのです。

☆「…」は、出版社では、「……」で統一します。

☆あと、改行ですが、「小説家になろう」の場合、ふつうに文章を打ち込んだほうが見栄えがいいため、改行の仕方も、通常のやり方としました。
    
☆「」の使い方。
 句点は、「~。」とするのが国語作文。多くの小説は、「……」というように最後の句点を省きます。
 また、 


  「第1行台詞」  ……1字スペースあけてから「」を開始。 
「第2行台詞」    ……第1段から「」開始。

 台詞が5~10行続いたら、間に、地文で、キャラの表情や仕草なんかをいれ、また台詞を続けます。


    もし問題がこだわりがあったら、のちほどご相談ください。
    ども、失礼しました^^
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2013/11/21 19:20
おどりのシーンがよかったです。

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2013/11/20 07:06
一番大きな紅葉の木が神社だったのですね^^
心に隙間が出来た時、ふっと道を開いてくれる
神域への空間、私も覗いてみたいです~



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