Nicotto Town


うみきょんの どこにもあってここにいない


蛍袋をともす


 またホタルブクロの花の季節がやってきた。ホタルブクロの花が一番好きかもしれない…、このごろ、仕事外出先のあちこちの庭で咲いているそれをみて、一瞬そう思う。けれども、ほかの季節、ほかの花が咲いているのを見て、それぞれにそう思うことがあるのではないか、そのことに気付いて苦笑する。
 それでも、やはり今の時期、この花が咲いているのをみかけるたび、心がやわらぐ。釣鐘状の花のなかにホタルをいれてともしたことから、花の名前がついたといわれている、うつくしい由来。つい、その光景を想像してしまう。あるかなきかのあわい光が花びらからもれる。山間の道で。ガレかティファニーのランプのようだなとも少し思う。
 仕事中に、そう思ったことはほんとうだ。けれどもこうしてことばにすると、なんというか、思った以上に、幻想性をおびてくるような気がする。実際はもっと日常にかかずらっていた、幻想はわたしのまわりにたぶんいたのだけれど、距離感があった。日常が壁をつくっていたのだ。
 壁たちがこのごろ厚い。たぶん疲れているからだ。疲れて、ことばにすることがすこし減っているから。ことばはわたしにとって幻想へむかう杖なのだ。自分がこんなふうに書く言葉も、そして読む言葉も。




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