Nicotto Town



置き去り事件。



某旅行会社H社のツアー客イギリスに置き去り事件。
どっちが正しいかの判断は既に司法に委ねられたようなので出しゃばるところではないけれど、同業者として非常に興味深い。

ただ思うのは、今回どっちに軍配が上がるにせよ、全ての事例に適用できる明確なルールが出来るわけではないと思う。
似たようなケースはしょっちゅうあるのよ。
待つか出発させるか、添乗員が本体に付くかはぐれた方に付くかは、もうケースバイケースとしか言いようがないな。
アタシや仲間が経験した、似たようなケースを紹介します。国内だけどね。

ケース1:公演に間に合わない
ひどい吹雪の日だったな。
高速道路が通行止で、予定の食事会場に着けなくて、仕方ないから公演会場目前のショッピングモールで食料を買い込んだ。
そこで1組が迷子になった。
→結果:本体出発、添乗員残留
公演という特殊な目的で来てるお客様の権利を奪うわけにはいかないので本体は発車。
公演会場のスタッフとも連絡が取れてたし、何よりコンサートホールでお客様に危険が及ぶ可能性はごく低い。
危険性が高いのは迷子の方だという判断で残留したけど、幸いにもその直後に発見できてね。
ほんの少し、ものの数分遅れたものの迷子さんも無事公演を見ることができました。めでたし。

ケース2:寺めぐりで行方不明その1
お寺の敷地は広いですからね。
しょっちゅう迷子が出るんだけど、この時はちょっとだけ痴呆気味のおばあちゃんでした。
→結果:本体ごと残留、発見後に全員で出発
その後はホテルに入るだけのコースで時間の余裕もあったので。
健脚なお客様がみんなで力を合わせて、大捜索。
広いといえども1件の寺の敷地内だったので、40分後に無事発見され、みんなで喜んでお宿入り。
他のお客様もおばあちゃんが痴呆気味なことに気づいていて、それまでもみんなでフォローしあってくれていたのよね。
おばあちゃん自身もとても良い方だったおかげで、みんな気分よく手伝ってくれていたし。
旅も3日目でお客様同士の仲間意識も出来上がっていた頃だったから出来た技だった。めでたし。

ケース3:寺めぐりで行方不明その2
同じような話だけれども、この寺は複数の門から出入りができるところでね。
みんなで捜してもミイラ取りがミイラになる可能性が高かったし、まだ次の観光地も残している状態だった。
→本体出発、添乗員残留…のはずだった
バスガイドがいるツアーだったので、本体はガイドに任せても問題なかろうと、添乗員が残留の上で発車したんだけど。
たまたまバスが裏門の前で信号待ちをしていたら。
行方不明だったはずのお客様が手を振りながら息を切らして駆け寄ってくるではないか!
本人も門を間違えたことに気づいていたそうで、途方に暮れていたところに見覚えのある柄のバスが通りかかって、慌てて追いかけてきたそうです。
それでお客様は無事救われたわけですが。
ということはつまり、正門に残留した添乗員だけが結局その寺に置き去りになったわけ。
わはは。
まぁ添乗員1人なんてどうにでもなるからね。お客様が無事で何より。めでたし。

ケース4:ばらばらの飛行機
各地方空港からお客様を集めて、現地では一緒に1台のバスで回るツアー。
すると当然帰りもばらばらの飛行機に乗るわけですが、その中の1つの空港が、悪天候のため遅延または欠航の判断待ちになってしまった。
しかし添乗員の帰る空港は快晴である。
こっちは予定通りの時間に飛行機は飛んでしまうのである。
→添乗員出発、お客様置き去り
万が一欠航になったとして、やるべきことは宿泊手配と航空便の振替。会社で十分に遠隔操作ができる。
お客様と会社とがいつでも連絡を取れることを確認した上で、それでもいざという場合には現地のスタッフを別に調達する方が安い。添乗員の航空券を買い直すよりもね。
旅行会社も民間企業です。
もちろんお客様の安心安全が第一、でもそれを確保した上で、第二に会社の利益を考えることも忘れてはいけないのです。
最終的には遅れたものの無事飛んで帰れたしね。その上会社の損害もなし。めでたし。


判断はその場によって違うけど、その場で正解をなんとか探すしかないんです。だからおもしろい仕事なのよ。
いつでも必ず的確な最良の判断ができる、なんて人間はいないけど。
少しでも近づくためには、仲間の話を聞いてイメージトレーニングをしておくことは大事かもね。
さあ今回のこの裁判はどうなることやら。
今回のこともアタシ自身のお勉強になりますので、失礼な言い方ながらも結果を楽しみに待っている。
まだお客様側の話しか表に出てきていないので、旅行会社側の見解をぜひ聞いてみたいと注目しています。

…しかしなぁ、お客様の主張が正しいものだったとして。
添乗員のセリフが「がんばって帰ってきて下さい」?
これはいくら図太いアタシでも、道内ツアーでさえも絶対に言えないわ…。




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