Nicotto Town


うみきょんの どこにもあってここにいない


キラキラ、イチョウの黄葉、秋との和解 2

仮想タウンでキラキラを集めました。

2021/12/13
キラキラ
集めた場所 個数
おしゃべり広場 3
教会広場 5

四択 ビーチサンダル(たしかに!)

野川公園、続き

 そして、自然観察園へ。東八道路の手前で、色づいたモミジ、まさしく紅葉をみたが、こちらは本当に褪せていた。見頃の頃は、さぞや赤さが燃えるようであったろう。道路にかかる橋は三つあるようだが、いつも真ん中の中之橋から渡っている。すると野川が現れる。うちの近くにも流れているが、公園のそれは十キロほど上流になる。それぐらいしか距離ははなれていないのに、こちらの野川はずいぶん川幅が細い。土手との間が緑で覆われているためか、家からだいぶ離れたところの清流といった面持ちがある。うちの近くの野川も水は澄んで見えるのだが。
 野川にかかる小さな橋の上から、川を眺めていると、自然観察園側から、小さな川と水をためた池があり、そこから滝のように野川に注ぐ小さな場所があった。今まで気づかなかったものだ。橋を渡って、そこまで降りてみる。案内板があった。「この池と小川には、野川公園の湧き水が流れています。魚たちが卵を産んだり、大水や水涸れのときに避難できるようにみんなで作ったものです」。小川はほたる川というそうだ。
 手作りの小さな流れたちが、清らかで、心にしみた。近くでカルガモが休んでいる。
 自然観察園にやってきた。こちらも案内板によると、野川と国分寺崖線のあいだの細長い敷地で、湧水による湿地や池があり、観察できるように木道が作られている。そしてバードサンクチュアリやホタルの里など、立ち入ることができない保護エリアがある。
 彼岸花を見たのはどこだったかしら。もはやわからない。花のすくない季節だなあとあらためて思う。小さな白い菊(シロバナアブラギクというらしい)、そして咲き残ったアザミぐらいしか見つけられなかった。
 そのかわり、あちこちに紅葉、黄葉。
 最初に野川公園に訪れた、桜目当てでお花見に来た時、十年以上前だろう。この観察園で、ふと携帯で撮った写真が、あまりに綺麗で、自分で撮ったとは思えない、ふしぎな一枚となったことがあった。
 澄んだ池に映る、青々とした木々たち。携帯だったので今から思うと画素数が粗い。探し出すのも一苦労だ。だが、その画像が妙に心に残っている。構えることなく、軽い気持ちで、撮ったものだからよけいなのかもしれない。なにげない、そうした瞬間に、美しいものと出会うことがある。それは大切な僥倖の時だ。
 今日で三回目の野川公園だが、前回に続き、写真を撮った場所を探している。どこだったろうか。この観察園のなかの池に違いないのだ。いや、二回目に来たとき、おそらく池の名前、場所は特定しただろう。だが、あの写真のようには、その場の写真が撮れなかった。だから、いくぶん気落ちし、そうしてほぼ忘れてしまったのだった。
 二回目の時は気負いがあった。だが三回目の今回は、もはやあの奇蹟的な景とは会えないだろうと、だいぶ穏やかに探していたから、よかったのかもしれない。あの場所だと、知ることができた。ああ、たぶん、ここで、こんなふうに木々が映っていたのだろう。そう思える場所に巡り会えた。何枚か写真を撮った。もちろん、あの美しさにはかなわない。だが、この色づいた木々たちが、春の柔らかな新緑だったら、そしてこの時間、この冷たい冬の気温ではなかったなら、明るい陽射しであったなら。それらの条件が重なったなら、きっとこの場所なのだという、確信に似たものを感じることができた。それだけで満足だった。池の名前は「まる池」。狂躁的ではなかったが、それでも何枚かスマホで写真を撮った。覚えておくこと。いや、もう心に残った。
 ここに来る数日前、季節外れの落雷があったり、風が強かったりしたことがあった。そのせいだろうか、ムサシアブミの赤い実をてっぺんにつけた茎が、あちこちで折れていた。サトイモ科のムサシアブミやテンナンショウ、ウラシマソウは、どこか好きな花で、たしか野川公園で、桜の時期に花を見たことがあった。好きな花だが、赤い実のなる秋に、みたことがほとんどないので、ここで出会い、複雑な思いがした。倒れている姿が、痛ましいようだったから。
 観察園の入口に自然観察センターがある。観察園の紹介展示や、イベントが開催されているようだ。標本ではなく、木彫りに色をつけたバードカービングによる、野鳥の紹介コーナーもあった。
 もう鬼籍に入ったある人が、バードカービングに思い入れがあったなと思い出す。剥製を使うことなく、博物館などで展示できるから、鳥にやさしいと。難しい問題を含んでいるのだろうが、このセンターで見ても、人の手になる鳥たちは、実際の鳥を使った剥製よりも、不思議なことに実物に近い面もあると感じられた。うまくいえないが、人の手により、特徴のようなものが幾分誇張され、それでそのものに近いような感覚になるというか。そして剥製には、やはり生が感じられない。だが木彫りの鳥たちには生の気配がある。
 自然観察センターには、ほかに公園で見られる植物、動物、鳥などを紹介する紙などが置いてあった。
 観察園を出て、ゆっくりと公園を通りながら帰る。観察園などの閉園時間は四時半で、この時、四時ぐらいだったか。一時間半以上公園にいたようだ。日がだいぶ傾いている。あと30分ぐらいで日没だ。イチョウたちもいくぶん黄色をひそめている。カサカサ、足元の感触を最後にあじわう。バーベキューをする人たちも帰り支度をしているようだ。暦の上ではもうとっくに冬だけれど、秋の黄色を感じられる、休日となった。秋冬との和解…こちらが勝手に思っているだけだけれども。それにしても日が暮れるのが早くなった。
(この項おわり)

いつも読んでくださって、ありがとうございます。
どうぞ、きょうもおすこやかにお過ごしくださいますよう。




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