Nicotto Town


うみきょんの どこにもあってここにいない


水と道と町と季節の境目4 あることとないことの

仮想タウンでキラキラを集めました。

2022/05/22
キラキラ
集めた場所 個数
展望広場 3
ペット海浜公園 10

四択 ペアのもの…。
(ペアのものを持った記憶がないが、昔別れた男が作ってくれた指輪は
 いまも大切に持っている。)

 どうしてこんなに、川に惹かれるのだろうか。昼間のポスティングの仕事で、となりの市をくばることになった。となりの駅には買い物などで比較的よく出かけているし、なんとなくなじみのある場所。全国的にもちいさい市なのだが、実際に自転車で廻ると、意外と大きいなといつも思う。家からすぐ近くも、五キロほど離れたところも同じ市だ。
 家と配るエリアが乗っている地図をしらべて、プリントアウトした。どこを通っていったら、そこに着くのか、いまいちわからなかったからだ。この市はとくに家の近くだと、道が入り組んでいる。近道をしようとして道に迷い、かえって遠回りしたことも何度かあった。
 地図をプリントアウトした時、あきらかに緑道になっている箇所があるのに気づいた。しかもこれは……。
 家のすぐ近くに小さな川がある。S川という。地下水位が上がったときにしか流れが見えないし、案内板にも「かつてここには川が流れていました」と、過去形になっている。それにネットの地図では、川を示す青い線が見られない。けれども流れているときは、湧水も注いでいるので、きれいな水だ。最近の世田谷区の案内マップにはちゃんと名前と川が載っている。
 あることとないことのあいだを流れる川、といっていいだろうか。たしかに以前は、流れていないことのほうが多かった。けれどもここ数年は、流れている期間が多くなった。ありがたいことだ。
 この川は、もとはこれから行く、となり駅ちかくの池が源泉。池自体が、今は枯渇したものを復活させたものなので、今もこの水と関係しているのか、わからない。
 池と川の関係は前から知っていたが、家からその池までの道のり、およそ二キロちょっとの間、川のほとんどが暗渠か緑道になっているので、途中がほとんどわからなかった。池から二〇〇メートルほど離れたところに、S川公園がある。あの川だ。緑道の一部を公園にしたもので、何年か前に、通りかかったとき、偶然知って、なかに入ってみたのだが、公園も緑道もすぐに途切れてしまう。それ以来、なんとなく気にかかりながら、忘れていたのだが、地図をみて、川の跡が七割ぐらいはたどれる気がした。S川公園から駅の南側までが、配るエリア内に入っていた。池は駅の向こう側、北口にあるのでエリア外。
 だが、配布している時はさすがにこれらのことに注意をはらえない。ただ、隣町との境目が、地図だとわかりにくい私道みたいなところがあった。大きな通りから伸びた妙な境目の線。基本、町と町の境目に沿って始めることにしている。町が四角形だと仮定すると、少なくともその一辺か二辺、時には全周することもある。そうすると、あとは枠内だけに目を向ければいいので、方向音痴気味のわたしにはやりやすいのだ。ともかく境目の一点からスタート…、やはり最初の境目がなかなか見つからない。マンションのブロック塀の裏に、ようやく発見。あきらかに暗渠、昔は水が流れていたと思われる細い道だった。川だった名残として、道に沿った両側が少し高く、土手のようになっている。家は道を背にして建っているものが多い。だがこれは家の近くを流れるS川ではないのかもしれない。S川公園も、ここと一五〇メートルほど離れている。もっとも地図では比較的早く先で合流するように見えるが。あとで少し調べると、このあたりは用水路も流れていたというから、その名残か、S川の支流なのかもしれない。川の跡のうねうねした、特に区切りがわかりにくいところは通過した。このあたりは、家からそれほど離れていないのに、初めて通る。家家と、意外と大きな畑が拡がり、そして保存樹林なのかもしれない、こんもりとした木々の緑。
 そのうち、川跡から離れたこともあり、おまけに雨も少々降り出したので、配ることに集中し、ほぼ忘れた。終了間近に、駅の南口、通りからそれた裏道のようなところに、やはり川の跡らしい箇所を見つけたが、ああ暗渠だなと思っただけだった。あとで調べて、これもS川だということがわかった。配り終わった時、ちょうど雨がまた強くなってきた。駅近くだというのに、やはり来たことがない一画。銭湯があった。銭湯にもノスタルジーを感じる。子どもの頃に住んでいた家にはお風呂がなかったので、銭湯に行っていた。そのせいかもしれない。銭湯近くの庇の下で、スマホで配布終了の報告操作をする。
 帰り道、大通りまで出たら、雨が少し小降りになった。S川公園の写真を撮る。そのあとで家の近くのS川でも写真を撮った。
 次の日の午前中、他の用事で、また駅へ行った。もう面倒なので名前を挙げる。狛江駅だ。そして北口にある弁財天池で、写真をとった。ここは狛江弁財天池特別緑地保全地区となっていて、敷地の大部分は限られた時しか入れないが、湧水源だった弁財天池には足を踏み入れることができる。柵越しに、また別の池が見える。ひょうたん池という。だが最近まで、入れないほうが弁財天池かと思っていた。名前が弁財天池特別緑地保全地区となっているからだ。柵越しに見るひょうたん池は、ここが駅前なのかというほど、周りは緑に囲われ、静かに水を湛えている。弁財天池の敷地の入口には小さな橋がかかっている。堀のように下に小さな流れがあるからだ。これがS川なのだろうか。だったらいいと来る度に思う。
 ちなみに、名前を一部解禁したから、このことにも触れよう。弁財天池のある住所は元和泉。狛江市は江戸時代の和泉村、猪方村、岩戸村、覚東村、小足立村、駒井村の六つの村がほぼ合わさったもの。このうち和泉の名は、弁財天池がこんこんと湧き出る泉だったことに由来するとか。
 家の近くまで戻って来て、また川の写真を撮った。今年に入ってから、少ない水量のときもあったが、ほぼ枯渇することなく流れているのではなかったか。
 カラーの花がミズバショウみたいに咲いている。おなじサトイモ科だし、花のかたちも似ているし、色も白だから、よけいにそう思う。水辺によく似合っている。そして、ジャーマンアイリスだろうか、菖蒲や杜若に似た紫色の花が咲いていた。こちらもおなじアヤメ科だ。アヤメは乾いたところを好むらしいが、勝手なこちらの印象で、この手の花はやはり湿地に咲くイメージがある。こちらも水辺に合っているなあと、澄んだ流れを感じながら思った。
 後日、またネットの地図を調べて、プリントアウトした。狛江駅からこの川まで跡を辿ろうと思ってのことだ。どうして、こんなにわくわくするのだろうか。あるいはこうした気持ちが、ひさしぶりなので、そのことに戸惑いを覚えている。かつてほどのはしゃぐ感じではないが、こんな気持ちになったのが、それでもありがたかったのだった。

いつも読んでくださって、ありがとうございます。
きょうも、どうか、おすこやかにお過ごしくださいますよう。
感謝をこめて。




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