Nicotto Town



アクシデント。



事の発端は、東北新幹線の遅延。
強風で架線に物が引っかかったとかで、1時間以上の遅れが出ていたんだ。
遅延のピークは越えた辺りで乗った我々の便も、出発時には40分遅れ。
しかしよっぽど吹かして走ったのか知らないが、最終的に遅れは20分に縮まり。
元々乗り継ぎに15分の余裕があるダイヤだった為、接続便を5分待たせることで、我々は無事に予定便に乗り継ぐことができたんだ。
でも乗り継ぎできるかどうかが最終的に決まったのは、到着の数分前。
あたしだって自分のお客様に次便の席番の案内すらできず、「とりあえず飛び乗って、何号車のどこでもいいから適当に座ってて!次便の車内で見つけ出して、正しい席番に案内するから!」と言うのが精一杯。
だから決して向こうの添乗員の不手際ではないと思うんだ。

南北それぞれの接続便へ走る人たちでごったがえす北斗駅のホームを、優秀なウチのお客様は見事にくぐり抜け。
あたしの指示通り、全員しっかり飛び乗ってくれて、適当な席で待っててくれた。
なんて素晴らしいお客様。
全員に正規の指定席券を配り終え、ふぅと一息ついたかどうかの頃。
検札をして車内を回っていた車掌が、あたしの元にやってきた。
「団体のお客様で、まだ券もらってないって言ってる人いるよー」
なに?あたしの持ち券、もう残ってないよ?
ひょっとしてウチのお客様じゃない人に渡してしまった?
いやいや4泊5日の最終日、さすがに自分のお客様の顔間違えないよ?
不思議に思いつつも、とりあえず車掌と共にその方のいる号車に向かった。

そこに座っていらしたのは、見たことのない老夫婦。
ご夫婦もあたしを見て、「違う、この人じゃない」と仰る。
そこで先程北斗駅で見た光景を思い出して、車掌に言ってみた。
多分個人の方は、自らが慌てて乗り継ぎをしなければならない場面で、そこまで他人の動向を気にしていないだろう。
が、何の業種でも同じだと思うけど、異業種からの目線よりも同業種からの目線は厳しい。同業者の言動はお互い意識せずともしっかり見てしまっているものだ。
車掌に教えたのは、確かさっきの北斗駅には別の団体が1本いた、だがその団体は南向きのライナーに乗り継ぎを案内していたはずだよ、と。
そこで車掌が慌ててお客様に「この後どこ行く予定なの?」と尋ねると、「函館」とのお答えである。
我々が今乗っているのは北向き、南の函館とは真逆の方角へ向かっている列車さ。
思わず車掌と声を揃えて「あちゃー」と言ってしまった。

車掌がお客様に言った。
「次の駅で降りて、逆向きの列車に乗り換えて、函館に戻るしかないね」
そこまではいいんだ。
しかしこの大変気さくで人柄のいい車掌、続いてとんだ爆弾発言をくれたもんだ。
「俺そろそろ放送かけてこなきゃならないんだ、あと頼むわ」
あたしが対応やるんかい!
いいけどさ。

お客様に尋ねて、向こうの添乗員と連絡を取った。
さっき北斗駅でニアミスした添乗員なんだけどと名乗った時点で、「ひょっとして▲▲様の件ですか!?」との反応。
あぁやっぱり必死で捜していたんだね。ご苦労様。
でも彼がお客様にきちんと連絡先を伝えていたからすぐ連絡が取れて処理ができたし、たまたま遅延の時に慌てて購入した時刻表を持ち歩いていたものだから折り返しの次便もすぐに調べられたし、そもそも車掌が早めに気付かなければ折り返し便もない時間になっていたかもしれないし、あわや大惨事のところ非常にスムーズに話が進んだ方だと思うんだ。
また電話をするためにデッキと客席を行き来していたら、周りの客席の方々(=ウチの団体とも一切関係ない個人のお客様方)も、「緊急事態なんだろ、気にしないでこの辺で電話したらいいよ」との優しいお声がけを下さったよ。
次の駅で見送った老夫妻のその後の足取りは調べようもないけれど、きっと皆のおかげで上手く本体と合流できたんじゃないかなぁ。
その後のご旅行を、しっかり楽しんで下さっているといいなぁ。


他にもアラブ系外国人の通訳をしてみたり、あたしの荷物がなぜかタクシーで別な場所に運ばれ消え去ってしまう事件が起きたり、なんだかどたばたな5日間。
お客様のお力添えのおかげで無事に帰着したのはいいんだけれど。
アンケートを拝見したところ、概ね高評価を頂けたのは幸いながら、一言コメントの欄がひどい。
「添乗員が可哀相」
「不憫な添乗員」
「見ていて痛々しい程の頑張り」
…これ東京本社に出したら、却って怒られそうで怖い。
お客様に心配かけるな!とか言われそう。
でも船も電車も毎回々々あたしが止めてるわけではないのに勝手に止まるんだからしょうがないだろ!
むしろなぜあたしは毎度無事に帰ってくることができないのか、こっちが聞きたいわよ!




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