「・・・」
柔らかな香り。
ほのかな甘み。
軽い口当たり。
おや?と思った俺は、無表情なマスターの向こうにあるカレンダーに、ふと目を向けた。
『ああ。そうか。』
昨日は、六月の第二日曜日だ。
『父の日、か。』
娘から、何かしらのプレゼントでも受け取ったのだろうか。
或いは、日頃の感謝を告...
休日以外(水曜以外)、ブログ短編小説、毎日更新
「・・・」
柔らかな香り。
ほのかな甘み。
軽い口当たり。
おや?と思った俺は、無表情なマスターの向こうにあるカレンダーに、ふと目を向けた。
『ああ。そうか。』
昨日は、六月の第二日曜日だ。
『父の日、か。』
娘から、何かしらのプレゼントでも受け取ったのだろうか。
或いは、日頃の感謝を告...
「な、何だこれは!?」
周囲の人間が、ばたばたと倒れて行く。
「ちょ、ちょっと君!」
アレンは手近な女性を抱き起し、揺すって見る。
が、女性はアレンの手に従ってがくがくと頭が振れるばかりで、反応は既に無い。
「ど、どう言う事だ!?」
混乱したアレンは、女性の身体を取り落し、己の頭を抱えて煩...
「ただいま、母さん。」
久しぶりの実家は、たった三年で妙に寂れていた。
「・・・お帰り、雄一。」
母も、随分と老けこんだように見える。
が、それは年月のせいだけでは無い事を、僕は知っている。
「雄二の容態は?」
「・・・あと、半年だって医者に言われたよ。」
「・・・そう。」
弟の余命を...