Nicotto Town


「時のかけら」


創作小説「次期王の行方」4

「平行世界シリーズ」

次期王の行方


  第4話

 

スタートしたゲームは、彼の予想通りに終わった。

「1位2番、2位4番です!」

「おぉ、すげぇ、当たったぞ」

担当者の声に周囲の者も歓声を上げる。

「配当金、3.5倍です」

「3500ルートか、そんなもんだな。クーデノム、ここに今日稼いだ5000ルートがある。これも予算に組み込んで検討してみてくれ」

「……国家予算を王自ら賭博で稼がないで下さい!」

「元金は俺のポケットマネーだ。寄付だよ、寄付」

 今朝に渡した書類の内容は、各地域から要望してきた公共事業の計画表。

 至急の取り決めが必要なものは既にクーデノムが抜粋して問題点等を指摘してあとは王の判断と決裁のみ、と言う所まで書類を揃えていたのだ。

 王はちゃんと目を通して覚えていたらしい。

さぁ帰るぞと腰をあげた王は満面の笑みを浮かべて上機嫌だ。

「あはははは、さすが王だなぁ」

マキセは大笑いしながら親友の肩を叩くと、王の後をついて帰ろうと促した。

 

    *     *     *

 

「ほんともう当てずっぽうだな。俺の所にも『貴方が王子ですか?』と何人か来たぞ」

期間終了まで後十日という切羽詰った状態。

相変わらずクーデノムとマキセは我関せずと雑談していた。

「私の所にも来ましたよ」

「お前のとこもか」

「えぇ、でも内容は『誰を王に選ぶおつもりですか?』と」

「もう諦めたか、自分を推すように説得にきたのか、どっちだろう」

「そうですね…考えてみたら臣の方って、王の子を探すより私に選ばせる方が楽なんじゃないですか?」

「でも、やっぱりこの国に生まれた勝負師の血が騒ぐんだろうよ」

「皆さん素直ですね」

くすくすくすとクーデノムは楽しそうに笑う。

「王になりたくないんだから、真正面から『王のご子息ですか』と言われて『はい』と返事する訳ないだろうになぁ」

「でもその人もクスイ国の血を継いでるのですから、案外素直に認めはするかもですよ、説得出来るかは判らないですけど」

果実酒を二人で一本空けてほろ酔い気分。

「マキセは探さないんですか」

「知らないヤツを王にして側にいるのもなぁ……」

不意に真剣な表情でクーデノムがマキセに問う。

「マキセ…王になる気はないですか?」

「あははははは……ないよ。クーデノムこそ」

「え?」

「王の子を説得出来なければお前が選ぶ。誰もが王や側近になれる可能性があるが、クーデノムが王になれないじゃないか」

「私にその気がないから別にいいんですよ。代わりに側近になれる可能性は高い」

「そうだけどな…クーデノムが王の子なら説得して側近になるのもいいかも知れないんだが」

「…その言葉、そのままお返ししますよ」

 
 

     *     *     *

  

王が定めた期日。

大広間に一同に集められた臣下達の前に王が現れる。

数人の側近の者と共に王座に付くと、ざわついていた広間も緊張感に包まれて静かになった。

「次期王の任命を行いたいのだが…見つけ説得出来た者は名乗り上げるがいい」

王の言葉に息を飲む臣下だったが、誰一人として動くもの、声を発する者はいなかった。

「どうした、誰も居らぬのか?」

静まり返ったままの会場を一望して小さく苦笑混じりの溜息をついた。

側近達と共に王の傍らに控えていたクーデノムに王は視線を向ける。

視線を受けた彼は小さく肯いた。

「ではクーデノム、誰を王に選ぶか?」

「次期王には……」

「お待ち下さい」

「マキセ?」

 クーデノムの言葉を遮ってマキセが一歩前に出てきた。王や皆が注目する中、はっきりした口調で彼は言葉を放つ。

「私はそこにいるクーデノムを次期王に推薦したいと思います」

                          【続く】


てことで、4話目です。
6話の予定だったけど、5話で終われそうです。
さぁ、誰が王の子でしょうか(笑)





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