Nicotto Town


「時のかけら」


創作小説「封夢宮」(7/10)

「封夢宮~龍の眠る宮~


第7話

 ――コンコンコン

 扉が叩かれた。

 炎朱をやっとのことで運び込み、ようやく寝かし尽かした所だったため、不機嫌さを隠そうとしないまま戸口へ出る。

「………………」

 開けた先に二人の姿を見つけて無表情になる。

「やぁ、洸水。炎朱はおるのか?」

 無理に愛想を振り撒く村長と、バツの悪そうな顔で苦笑する主神官。

「今更、何のようですか? 貴方達のせいで彼は瀕死の重症ですよ。やっと一命を取り戻して眠っているところです」

「いや…あの……こ、こちらの方が炎朱に会いたいと申しておるので連れてきただけだ」

 彼らの後ろにもうひとりの来客。

 長い黒髪の男性。

 ピンと身体に緊張が走った。

『何者なんだろう………』

 最初にそう感じた。

 普通の人間ではない、と。

 話を振られた男は洸水の前に進み出る。

「こうなったのは彼らのせいじゃない。責めても無駄だ。まぁ、あんた達の馬鹿は少し治るかもしらんがな」

 どうでもいいとばかり3人の前でそう言葉を発して、洸水の脇を通って中へ入って行く。

「え、ちょっと。待ってください」

 遠慮も何もなしに入り込んだ彼を洸水は追いかけ、先ほどの言葉に怒りを感じた村長と主神官だったが、拘わりたくないとばかりにさっさと部屋から出て行った。

 炎朱が眠っている寝室の入り口でようやく男に追いつき声をかける。

「あなたは一体、何なんですか」

「…………」

 無言の答え。

 しかし、しっかりと洸水の瞳を見た。

「!」

 驚く彼にそっと微笑んで炎朱の側に寄った。

 炎朱と同じ紅い瞳。

 全く同じ色、なのだ。

「“目覚め”ていない訳か………」

 覗き込み呟く。

「焔種(エンシュ)、起きろ」

 彼の声に答えるように目を覚ました。


 名前を呼ばれて『目覚め』た。

 視界に入った人物を見て知っていると思った。考えるよりも早く、その者らしい名前が口から放れる。

「…あれ…焔(エン)……?」

 彼の掌が額に当たられた。

 ひやりと冷たい。しかし、どこか懐かしさを含んだ感が身体を占める。

 炎朱の額に掌を当てた彼は一言呟く。

「焔種様、水龍・瑞唖(ミア)の棲む村に着きました」

 虚ろな瞳と身体が衝撃を受けたようにビクッと反応した。

 彼の口にした言葉が総てを、自分を縛っていた何かを打ち砕いた。今まで何故忘れていられたのか不思議な程の記憶の渦に呑み込まれ、覚醒していく。

「……あ…俺……」

「炎朱!?

 心配そうな、不安気に言葉をかけた洸水の声は炎朱には届いていなかった。

 はっきりと瞳を開いた眼が捕らえたのは黒髪の青年の姿だ。

「焔、何であんたがここに…身体は大丈夫なのか?」

「お前がこんな所で記憶を無くし、封印したまま生活しているからだろう。瑞唖の気配が俺の所まで伝わってきた。だからこうして来てやったんだがな。総てお前が無事に事を運んでおけば、余計な力も使わずに済んだのに」

 やれやれとため息までつけて大袈裟に言ってのけるが、表情は明るく楽しんでいるのがはた目にも判った。

「炎朱?」

 二人の関係についての疑問を浮かべた洸水の瞳に気づいて炎朱は笑いかける。

「こいつと俺は、一応親子ということになる」

「親をこいつ呼ばわりか?」

「あんたの性格が俺をそうさせたんだろ」

「確かにな」

「親子?」

 二人のやりとりを聞いてもまだ信じられない部分があった。まだ二十代半ばにしか見えない青年が、何故二十にもなる炎朱の親なのか。そう思うのも自然と言える。

「父親というよりも、片割れの方が強いかな」

 洸水の考えを全部判った上での、意味ありげな笑顔と共に返答。

 身体を起こした炎朱。

 瞳には前に見たギラギラとした闘志ではなく、静かに燃える真摯な瞳があった。

「瑞唖に会いに行くぞ」

 当然だとばかり頷く焔と呼ばれる青年。

 一緒にと洸水の前に差し出された炎朱の手。

「行こう」

 手を取ったとたん、視界が歪んだと思うと景色が一変した。気が付けばそこは荒れ狂う湖の上空だった。

「え、炎朱?」

 驚きを隠さず口にした彼は再び目を見張った。

 合った視線。

「その瞳……」

「……俺が龍珠、持ってたんだ」

 白く濁っていて見えなかったはずの彼の左目が、今は透き通った綺麗な水色に変化していた。


【つづく】




タイトルの「封夢宮」は実はサークルの名前でしたww
郵便型の創作サークルをずーっと昔にやっておりまして、タイトルからイメージしてこんな物語ができましたww 毎月の連載は泣きそうになったなぁ><
「封夢宮」は夢を封じ込めた、つまり夢がいっぱい詰まったところという意味でした。

ひっそりこっそり、小説サークルを設立しましたww
興味のある方は参加サークルの「みかん箱」を覗いて見てくださいww
読むだけ会員様も募集だよww いろいろ協力してくださいww

アバター
2010/11/18 07:51
ここまでに
今日はしとこ
(^^)
アバター
2010/11/12 23:09
とうとう 設立でしかw
サークル覗いてみ~~よおっと

親というより片われかぁ・・
合わせて、どんな力がでるのかしら?
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2010/11/12 22:44
夢を封じ込めた宮 というタイトルも素敵~~
…と思っていたら そんな意味合いがあったとは^^
ますます いい名前だな♪ と思いました
サークル設立もおめでとうございます☆
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2010/11/12 21:55
( ・ノェ・)コショッサークル設立、おめでとうございます。
「夢がいっぱい詰まったところ」・・・・いいですね。
新しいサークルも、そんなステキなところになるといいデスねw
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2010/11/12 19:03
黒髪くんは炎朱の身内なんですかΣ
まさか瞳の中に龍珠があるとか...

『みかん箱』覗いてきますね~




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