Nicotto Town


「時のかけら」


創作小説「雷獣」(2)

雷獣 ~復活遊戯~



第2話

 大きな2階建の建物にエンユと戯加は向かっていた。
 
王都の貴族が建てた別荘が完成したとウワサを耳にしたエンユが外出ついでに寄ってみようと言い出したからだ。
 
目的の場所に近づくと、ざわざわと慌ただしく人が出入りしている建物があった。
 
一人の女性がぐったりした感じで数人の者に運び出されていた。
「どうした?」
「気分が悪くなって倒れたんです」
 彼女にまとわりついているのは普通の人には見えない澱んだ空気。
「ちょっと見せてみろ」
 そう言って彼女に手を向けると風が彼女の身体を包み込み駆け抜けた。
 
ぐったりしていた彼女が意識を回復させる。
「原因を取り除いたから  後はゆっくり休めば良くなる」
「ありがとうございます」
 
礼を言った彼女に頷いてみせながらエンユの視線は建物へと向けられる。
 
王都式の石と石膏で造られた建物の壁は威圧感を与え立派だが、土地を駆け抜ける風の道筋を塞いでしまっていた。
 
人に害が表れている以上、法術士としては放ってはおけない。
「建物の様子、見せてもらってもいいか?」
 
家の者に声をかけてエンユは中庭に足を向けた
「建物の形が、風の通り道を塞いでいるその為に淀みが出来て人の身体に悪影響を与えるんだ」
 
光に遮られた薄暗い部分を指して説明を行う。使用人達は固唾を呑んで彼の行動を見守っている。
 彼らのような力も持たない…法術士でない者でも妙に気になる気配がその場所に感じる。
 
放っておくと異形な生物が生み出されたりするのだ。
 
エンユは掌を天へ向けてから、腕を一振り。その腕から巻き起こった突風は中庭を一気に駆け抜けた。
「とりあえず淀みは散らしたが、何の対策もしなければ同じ繰り返しだ」
 
そこに、
「何事だ?
と、突然かかった声の主は熟年の男のもの。
 
今帰ってきたのだろう、堂々とした風体で近寄ってくる。
 態度からしてこの家の持ち主…つまり王都の貴族だろう。
「また気分の優れぬ者が出まして…通りかかった法術士様が見てくださるというので……」
「通りすがりの法術士だと?」
 
不機嫌そうな表情で戻ってきた主人はエンユと戯加の姿をジロジロ見て高飛車に鼻で笑った
「今、北院に様子を見に来るように依頼してきた。もうすぐお前達よりも高位な法術士が来るだろう」
「なんなら今すぐ原因を取り除いてやろうか?」
 
小さくボソリと呟くエンユの言葉が聞こえ、戯加は少々焦る。
 
原因を取り除く……つまり建物を破壊すること、だ。

 エンユ様ならやりかねない…と戯加は胸中でつぶやく。

「私より高位な法術士ですか、それは結構なことですね。いつ来られるのか私も楽しみにしています。では戯加、帰ろうか」
 
満面の笑顔で主人に言い放ち、さっさとその場を立ち去ろうとする。
 満足そうな主人を横目に、使用人たちは表情を無くして立ち尽くしている。
地元で雇われた者はエンユの存在を認知しているらしい。「エンユ、エンユ!」
 
敷地内の正門から往来に出た所で突然名前を呼ばれた。
 
捜し回っていたらしく息を切らしている。
 
綺麗な長い灰色髪の20才くらいの女性。
「沙耶?」
「兄様が呼んでます」
「沙羅が? でもよくここだって判ったな」
「勘です。ウワサ好きのエンユのことだから、ね」
 
確信と笑ってみせる沙耶にエンユも苦笑い。
「どうせ法院長の恒例会議を出席しろって事だろう」
「えぇ。でもエンユ宛に西院の方から手紙が届いたらしくて」
「手紙が?」
 
去って行く彼らの会話が耳に届き、疑問を感じた主人に、使用人が告げる。
「彼が、新しい北院の長様です」
「何!?
 
その後、この建物に法術士が訪れたかどうかは判らない。


【続く】



てことで第2話ですーww
無事に、編集も少し交えてお届けすねことができましたーww

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2010/11/19 21:41
うぉ
なんか展開が速いぜいw




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