Nicotto Town


「時のかけら」


創作小説「雷獣」(4)

 

雷獣~復活遊戯~

はじめあき


第4話

   森を抜けてきた所は大きな街。
  緑溢れる北院と違い、奇麗に舗装された道には露店の市が賑わっている。
  西院の《聖具》は杯で水を司るという事で、溢れんばかりの水を使ったモニュメントが至る処に設計され、どこにいても水の流れる音が聞こえて絶えることがない。
 水は土地を清める意味もあることから、邪気を祓う役目も担っていた。
  広い土地を有する西院の片隅に設けられている宿舎にエンユと戯加は一日前に辿り着いた。
 
西院の者に案内され、落ち着いたのは夕暮れ時。
 
しかし、バタンッと前振りもなく扉が勢いよく開いたと思えば、ひとりの少女が飛び込んできた。
「!」
「エンユ!」
 
驚きの戯加のことなど目に入ってない様子で少女はエンユに飛びつく。
「わーい、本物のエンユだ!久し振りー」
「シエロ?」
「クルトが呼ぶって言ってたから、楽しみにしてたんだよ」
「元気だったか?」
「うん」
 なんか親し気な様子に戯加は少々複雑な気持ちだ。
 彼女が兄妹なのかなぁとふと思った戯加の視線を感じて、エンユは苦笑い。
「ここの居心地はどうだ?」
「いいよ。クルトの側は安心する。でもエンユの側はワクワクするから」
「シエロの属性は火だからなぁ」
 ぽんぽんと宥めるように頭を撫でてから、
「会議が終わったら遊んでやるよ」
「絶対だよ」
 何度も念押しをしてシエロは帰っていった。
「さっきの人…妹ですか?」
「違うよ」
「仲、いいんですねぇ…沙耶さん、知ってるんですか?」
「そんなんじゃないよ」
 エンユはそう言い切って、優しい笑顔を見せた。 

 
翌日の会議当日、エンユが楽しそうに戯加に衣装を渡した。
 
「ちょ、ちょっとエンユ様?」
 
「なんだ?」
  慌てたような戯加に対し、含み笑いのエンユ。
 上等な布一枚を戯加は羽織らされ、うろたえる。 
「なんで私がこんな格好を……」
  朱色、黄色を基準とした北院の服装。 
「俺は西院に行くとは言ったが、長として会議に出るとは言ってないもんでねぇ」
 
「えー!?
 
「頑張って、院長代理を果たしてくれ。俺は従者として控えているから」
 
「そ、そんな~~」
 
 遠くから集合を促す鐘の音が聞こえてくる。
 
「ほら、時間だよ。院長代理さま」
 
「エンユ様~~」
 
 訴えもむなしくエンユに追い立てられながら戯加は会議に向かった。
  会議の行われる広間には五角の形に組まれた机に、それぞれ院ごと別れて席が設けられている。
  戯加が入ると小さなざわめきが起こった。 
「北院殿はまた代理の者か?」
 
「それもあんな子供を寄こすとは」
 
「北院の長としての自覚が足りないようだな」
 
「院の信用に拘わる問題だ」
  聞こえるように非難をぶつけてくるのは主に東院の席から。
  助けを求めるように振り向くが、気にするな堂々としてろと視線を返される。 
「無駄話はそれくらいに」
  皆の正面に立った西院の法術士・クルトの一言で静まりかえる会場。蒼い色を基準とした数枚の布をまとったような服装は、水を司る西院の正装だ。 
「西院長のクウマ様は王宮に参内のため、戻りは明日になります。よって今日は代理である私が進行役を努めさせて戴きます」
  クルトの視線が北院席で止まる。
  その視線を受け、不敵に笑ったのはエンユ。 
 その様子を見て戯加は気付く。
 雰囲気は全く違う二人だが、容姿が酷似していることに。
 不思議と深みのある紫色の瞳などめったにいない。
「《聖具》を祭壇へ」
 
クルトの言葉で各院の者が席を立ち、正面に作られた祭壇の段の上に聖具を奉納する。
 この国を築いたというかつての初王が地水火風の力を有したこれらの道具を使って国を造ったとされる宝物。
 所在確認のために会議に持ち寄るのが定めとなっている。
 戯加が最後に剣を台に置き、席に戻ったところで、
「それでは会議を始めましょう」
と、クルトが会議の始まりを告げた。

【つづく】

第4話のお届けです~ww
コレでキャラ全員そろったかな?

アバター
2010/11/22 16:58
なんだかカオスな会議になりそうな...w
アバター
2010/11/21 22:19
やっぱり、4つに分かれているとそれぞれに対立があるのですなぁ~

主義、主張が違うからでしょう

さてはて、どんな会議になるのかしら~~w




Copyright © 2024 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.