Nicotto Town


「時のかけら」


創作小説「雷獣」(5)

雷獣~復活遊戯~

はじめあき

第5話


  クルトの終了の言葉で皆席を立つ。
 エンユもあくびをして首を鳴らす。
「終わった、終わった」
 
「ずっと寝てるなんてひどいです」
 「ちゃんと出来てたじゃないか」
  文句を言う戯加の頭に手を乗せ、戻ろうと促す。
 定例会議とは年に2回、それぞれ院の問題点や近況を報告し合い、それぞれ対策を意見し検討していくものだ。
 「北院の方は何かありますか?」
と、報告の番が回ってきて焦る戯加だが、出発のとき沙羅から受け取った紙を取り出した。
『困ったらこれを見なさい』
  中には北院の近況など会議で聞かれるだろう質問の答えなど、いくつか書かれてあった。
 さすが沙羅、エンユの行動はお見通しだ。
  言葉に詰まりながらもなんとか切り抜けることが出来たのだ。
 今日は各法院の長をまとめる法術師のクウマがまだ不在ということで、報告だけになり、本格的な会議は明日からになった。
 もう皆早々と退出して聖具の警備の者以外、広間に残っているのは2人ぐらい。そこに書類を抱えたクルトが近寄ってきた。
 「北院の従者殿。ちょっとよろしいでしょうか?」
 「こんな奴になんの用?」
  驚きの戯加とは対照的にふてぶてしい態度。
 「…………」
  クルトの無言で見つめてくる様子には怒りのためか威圧感。
  はらはらしている戯加を横目にエンユは諦めたように笑ってから。
 「判った、判った。だからこうして来ただろう。話を聞くよ」
  ポンとクルトの肩を軽く叩き、笑いを収めてから戯加に告げる。
 「ということなんで、先に戻っていてくれ」
 判りました」


  「お久しぶりですね」
  クルトが案内したのは西院にある彼の私室。ここなら誰の邪魔も入らない。ようやく表情を緩めたクルトに、エンユは本題をと促す。
 「世間話をするためにわざわざ呼んだんじゃないんだろ」
 「半分は世間話かもしれませんけど。元気そうで何よりです」
 「お前もな」
  部屋の椅子にドッカリと腰を下ろしたエンユ。テーブル越しにクルトも座る。
 わざわざ手紙で来るようにと告げることは至急話したい、相談事があるということだ。
  笑いを収めたクルトは真剣な表情で本題に入る。
 「先日から西院近くに邪法士が現れているそうです」
 「!  会議では言わなかったよな」
 「えぇ。まだ確認のとれていない情報ですので」
 「あの時の残党か?
 「それは判りませんが気になる事を耳にしたので、先にエンユに言った方がいいと思いまして」
  言葉を区切り一段と声に真剣さが増す。
 「邪法士は『この辺りに「父なし子」はいないか?』と聞いたらしいです」
 「『父なし子』?」
 「その者は知らなかったので答えを返しませんでしたけど」
  クルトの言おうとしている事を察して、表情を険しくするエンユ。
 「―この辺りの父なし子って……まさか……?」
 「十年前に、森の中にいた子供を連れ帰ったそうですね」
  戯加を拾った後に近くの街で彼の事を調べた。誰かが探していたりするのではないかと。
  しかし、反応は冷たかった。
  父は子供が出来ない身体だったらしく、突然子供を授かった妻に対し冷たい態度をとるようになり、果ては出て行った。身に覚えはないと言い切っていた母親だが宿った子供を無事に産み落としはしたのだが、次第に精神を病んでいったらしい。
  行方不明になってもやっぱりねぇと皆が口を揃えていっていた。
 「邪法士が戯加を探している?」
 「戯加…先程の子供ですね」
 「今年で13才くらいだ」
  不吉な数字とされている年齢。邪法士が好んでよく使うことを知っている。
「邪法士か…」
「何か心当たりでもありますか?
 「少しな……」
 戯加を拾った時の事を思い出してみる。
 「西院内にいれば、邪法士も手を出せないはずです」
  クルトが少しは安心させようと言葉をするが、
 「でも、強い術士だったら―」
  エンユが言いかけた時、少し開いている窓から風が入り込んできた。
  風の法術士であるエンユ。風が運んでくる気配などの情報を感知する術には長けている。
 「風
  何かを感じたのか、ガタンと勢いよく席を立ちクルトを残して部屋を飛び出して行く。
  クルトもエンユの後を追いかけた。


【続く】

第5話をお送りしまーすww 

あと、3回か4回くらいで終わりそうですww

アバター
2010/11/23 19:29
そんな過去が!

邪法士さんたちは、まーた何をたくらんでるんでしょうね?

国家転覆とかかな?w
アバター
2010/11/23 15:31
読んだと
(^^)
アバター
2010/11/22 18:15
会議の内容がΣ
13が不吉...やべ、私13だorz
エンユたちは何処へ向かうんでしょう...。




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