Nicotto Town



お見合い

「じゃあ、後は若い人同士で、ね?」

何が”ね?”なのかは知らないが。
確かに、私も世間一般にはイイ歳、ってヤツで。
まぁ、その”イイ歳”にもなれば、こう言う話も来るだろう。

「・・・」

だけどなぁ・・・

「・・・あ、す、すんません。」

「・・・はい?」

「お、俺、南条光輝って言います。」

「・・・」

「あ、さ、さっき、おばさんが言いましたよね、それ。」

「・・・ええ。」

「後は・・・えーと・・・」

「・・・」

どうやら、特に何の話題も用意していなかったらしい。
困った様な顔。
宙を彷徨う視線。
落ち着かない仕種。
”先方は乗り気”だと、おばさんは言っていたけど。
先方イコール”本人”じゃない。
大方、その”乗り気な先方”とは、”お節介な目上の身内”ってとこだろう。
何の事は無い。

『この人も、無理矢理連れて来られたクチね。』

くす。

・・・私、何笑ってんだ?
そりゃ、似た境遇に、連帯感を感じなくは無い。
いちいち、私の笑い声に狼狽する様子も、少し可愛いと思わなくは無い。
容姿も・・・今までの私の好みとは少し違うけど・・・まぁ、悪いとは思わない。
だからって、今日、始めて会った男と意気投合するような、簡単な女じゃ・・・





「えぇ!?意外!」

「あ、やっぱ可笑しいっすか?」

「可笑しいって事はありませんけど、光輝さんみたいな人が甘い物お好きなんて、ちょっとびっくりです。」

「いやぁ、結構、食べるんですよ。コンビニスィーツとか。」

「あ、私、ファミマのプリンアラモード・・・」

「あ、あれ旨いっすよね!」

「ですよね!ですよね!」

「はい!良く買うんすよ!」

・・・知らなかった。
私は簡単な女だったんだ。

「後は、レアチーズとかもいいっすよねぇ!」

「あー!そうそう!ベイクドも捨て難いですけど、やっぱりレアですよね!」

・・・いや。
簡単とか、そう言う問題じゃない。
だって。

「コンビニもいいですけど、俺の行きつけの喫茶店で出すレチケがまた絶品で!」

こんな・・・
輝くような笑顔を見せられたら・・・

「今度、御馳走しますよ!」

・・・駄目。
そんなの、駄目。

「・・・由美子さん?」

だって、私は。

「あの、光輝さん。」

「え?あ、はい?」

「光輝さんは、確か・・・一般企業にお勤めなんですよね?」

普通のサラリーマンの、手に負える女じゃ無い。

「・・・あー。おばさん、そんな事言ってました?」

「・・・は?」

え?
違うの?

「いや俺の本当の職業は・・・何て言うか・・・団体職員って言いますか・・・非営利組織の構成員って言いますか・・・」

「・・・」

まぁ、何であっても。
結婚はおろか、男性との交際なんて、望むべくも無いのだ。

「・・・あの、私・・・」

「・・・由美子さん?」

「この辺で、失礼します!」

「由美子さん!?」

私は、駆け出した。
自分の気持ちが。
自分の心が。
これ以上、傾かない内に、と。

「由美子さん!」

でも。
街の喧騒の中。
光輝さんの声だけ、やけにはっきりと捉える事の出来る私は。
ひょっとしたら、手遅れなのかも・・・






翌日。
私は、昨日の思い出を振り切る為に。
”仕事”に没頭した。

「行け!怪人ドリル男よ!街を穴だらけにしてやるのだ!」

部下である怪人がドリラアァァ!と雄叫びを挙げ、破壊目標のビルへと向かう。
周囲では下っ端の戦闘員達がヒーやらキーやら奇声を挙げ、逃げ惑う一般市民を威嚇する。
そこへ。

「待てぇい!」

やけに野太い、良く通る声。

「出たな!憎きお邪魔虫めが!」

私はマントを翻し、手に持った水晶付きのポールで、いつもの様に高所に立つ”超人”を指し示した。

「とうっ!」

超人はくるりと一つ宙返り、すたっ、と地面に着地して

「正義と太陽の使者!ライトシューター!」

全身ゴールドメタリックの身体を輝かせ、名乗った。

「お前達!掛かれ!」

「とうっ!」

・・・しかし、いつもの様に、下っ端達は簡単に一蹴され。

「ええいっ!小癪な!ドリル男!目に物見せてやれ!」

「ドリラァァァ!」

「たあぁっ!」

「ドリッ・・・!」

「・・・え?」

おかしい。
いつもなら、ライトシューターは怪人には多少の苦戦をする筈なのだが。
ドリル男は、一撃を受け、あえなく爆発。

「・・・あ。」

兎に角、私一人ではコイツに敵う筈も無い。

「お、覚えておれ!ライトシューター!」

早く逃げなければ。

「逃がさんっ!」

「えええええ!?」

これも、いつもの”お約束”と違う。
普段は私を取り逃がす筈のライトシューターは。
逃走経路に回り込み、私の両手首を掴んで身柄を拘束してしまった。

「は、離せ!離さんかっ!」

「離さん!」

「くそっ!私をどうするつもりだ!」

決まっている。
”正義の味方”が、”悪の組織の女幹部”を捕えたのだ。
退治以外、他の行動があるはずは・・・

「一緒に、喫茶店に来てもらう!」

「・・・え?」

「レアチーズケーキを、御馳走させてもらうぞ!」

「・・・あ!」

間抜けな私は・・・
漸く、その声に聞き覚えがある事に気付いた。

「いいな!」

「・・・私は負けたのだ。好きにしろ。」

困った。
両手を掴まれている所為で。
私は、恐らく真っ赤に染まっているであろう、火照る顔を隠す手立てが無いのだ。




そして。




彼の言う通り、その店のレアチーズケーキは、美味しくて。





私は、その後、何度も店に足を運ぶ羽目に陥った。




もちろん、一人では無く。





三度目の春には、”三人”で・・・







[完]

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2015/02/28 18:42
にゃんさん、とりあえずこちらに御返事させて頂きます。

了解しました。

また何かあればご連絡ください。

これからも宜しくお願い致します。
アバター
2015/02/28 16:56
すいません。ここに失礼します。

ご無沙汰しています。サークルの方、本当にお世話になりました。
あの、すこしお願い、というか要望というかなんなんですけど…。

サークルの入会申請のほうは、私の方で許可してもいいでしょうか?
あの、やっちゃダメとかそういうのではなくて、管理人である私があまり活動できなくて、せめて申請許可だけは管理人の仕事としておきたいんです。

この期間はインできないっていうときは、またコメントしておきます。
あと、なるべく「にゃん」と言ってる方を優先して入れてください。

すいません。なんかわがままで…。 こんなん私ですけど、今度ともよろしくお願いします。
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2015/02/28 12:22
ふふふふw
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2015/02/28 11:23
なんだこれ(笑)



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