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純潔のマリア

著者:石川雅之

フランス百年戦争を舞台にした、魔女の物語。
2008年から2013年まで月刊アフタヌーンで連載、全三巻、他に外伝(ラストの書下ろし以外はほぼ前日譚)としてexhibitionがある。
2015年にアニメ化された。
ここでは原作準拠に折に触れアニメの解説も加えて行く。

用語:

百年戦争:一時期フランス王に仕える貴族がイギリス王を兼任してしまった為、力があるのがイギリス、権威があるのがフランスと言う歪な関係を成し、フランス王継承にイギリスが口出しする伝統を作り出した上、さらにその中でローマカトリックが勢力を強硬に伸ばした情勢の元行われた泥沼戦争(それにより「敵対する者同士が同じ神の加護を口にし、正義は我にありと掲げる」と言う異様な状況を作り上げた。戦争終結後はイギリス・フランス両国よりローマカトリックの支配地の方がはるかに拡大している)。
それによって決定した国境が、現在の英仏を分ける境界である。

魔女狩り:強硬な勢力拡大を推し進めたローマカトリックが、それ以外の宗教を「悪魔の教え」として糾弾した為に行われたジェノサイド。
異教徒の信者が「異端」、祭司が「魔女」として拷問の末に処刑されて行った。
「純潔のマリア」作中では、それとは別に「実際に魔術を使う魔女」が存在している事になっている。
※作中のマリアの台詞に「偽物の聖者と偽物の魔女で何やってんだか」と言う物がある。

登場人物:

マリア:フランスの魔女。外見上、十代半ば(アニメではその姿のまま孫のいるマーサの子供の頃から在り続けている設定になっている)。処女であり、良く周囲からそれをからかわれる為(当時は十代前半での性交渉や結婚も普通だった)「処女なんか欲しければ犬にでもくれてやる!」と発言している。
自称「フランス最高の魔女」「戦争を止める最強の抑止力」。その言葉通り強大な魔力を持っており、戦争(局地的な戦闘)を魔獣の召喚などでぶち壊す(死人は出さない)活動を続けていたが、大天使ミカエルから「人の世の理から外れる」と警告され、処女を失うと同時に魔力も失うと言う枷を負う事になる(マリアの主義主張を通すには魔女であり続ける必要があり、自身の女としての快楽や幸福と世界の平和を天秤に掛けさせる、と言う意図)上、強大な魔力(魔獣の召喚等)を使用した際には「断罪の槍」で貫かれる事を決定された(が、その後も目付け役のエゼキエルの目を盗み、しばしばそれを行ってはとぼける、を繰り返す)。
戦場を巡って来た為、達観した面もあるが、基本的に子供っぽく負けず嫌いで、すぐムキになる性格。

アルテミス:マリアの使い魔であるサキュバス。外見上は二十代半ばの女性。マリアの十年後の容姿から造られた。正体はシロフクロウ。
主従であるにも関わらず主に処女である事をネタにマリアを良くからかうが、彼女の危機には命を賭しても救おうとする等、本気で心を配っており、言うなれば悪友か姉妹の様な関係。

プリアポス:マリアの使い魔であるインキュバス。外見はジョセフから取って造られた。正体はシロフクロウ。
マリアが処女の為、性器が曖昧(ついてない)で、インキュバスとしての仕事が出来ず、苦言を漏らす。
マリアとの付き合いは短いが、マリアを傷付けた者に鬼の形相で襲い掛かる等、高い忠誠心(と言うより親愛の情)を抱いている。

ジョセフ:フランスの通信兵。仕事の依頼でマリアと出会い、一目惚れ同然に想いを寄せられている(インキュバスであるプリアポスを彼の姿にした事から、マリアに”魅力的な男性”として認識されている事が解る)。彼自身もかなり直接的な言動(手の甲に口づけ、「家族になりたい」と発言する等)でマリアに愛を告げているが、全く通じていない(終盤で自分の気持ちが全く理解されていなかった事に驚いている)。
一見優男だが武術の心得があり、特に弓の腕前は狙いも正確、威力は甲冑を貫通する程。
愛する者(マリア)の為なら自身の信仰対象であるミカエルにも弓引く度胸や覚悟もあり、また敵兵である筈のイギリス兵でも窮地の者を見過ごせない漢気も持つ。
が、何故かアニメ版では領主に逆らえず自身の非力さに逆ギレするヘタレキャラとして描かれた。

ミカエル:「天の教会」の使者として、マリアに警告を与えに来た大天使。
機械的に天の教会の倫理を告げる。
その力は強大で、マリアですら一方的に打ち負かす。

エゼキエル:ミカエルの名代として、マリアに付けられた目付け役。十代前半程の少女と鳩、断罪の槍の、三つの姿を持つ(いずれが正体なのかは不明)。
最初はミカエルから課せられた役目を忠実に果たそうと考えていたが、マリア達と過ごす内に心境の変化が現れる。
強大な「天の教会の加護」で守られており、自身も季節外れの花を咲かせる等の力を持っている。
因みに、男女の営みの快楽についてビブに話を振られた際、原作・アニメ双方で同じ答えを返しているが、原作では「経験者」のように、アニメでは「未経験者」のように描写された。

ビブ:イギリスの魔女。戦争の協力で報酬を得ている為、その戦争自体をぶち壊しにしてしまうマリアに苦言を呈しに現れる。
が、後にマリアを気に入り「友達」となり、その友情の為にミカエルに単身無謀な戦いを挑む。
実は以前に未熟故の大失態をマリアに収めてもらい、エドウィナ(の使い魔)に匿われた過去がexhibitionで語られている。

エドウィナ:フランスの魔女。傷付いたマリアを(ビブの手によって)住家に運び込まれ、それに「迷惑」と激昂しつつも結局は受け入れて、手厚く看護し、また「平穏に暮らしたい」癖にマリアが兵士に拘束された事に(放置しとけばいい物を)パニックになるお人好し。
「そんなに大した魔女じゃない」と自称するも、本気を出せば武装兵に囲まれ、鎖で拘束されたマリアを真っ向から解放するだけの力はある。
彼女とビブの出会いが、exhibitionで語られている。

エドウィナの使い魔:正体は猫のサキュバス。原作では名は未出だったがアニメではレグリスと名付けられていた。
天真爛漫な性格をしており、主人であるエドウィナを深く信頼し「ご主人はカッコイイ」とパニックに陥ったエドウィナを落ち着かせ、慰める。
exhibitionで語られた所によると、ビブが最初に出会ったフランスの魔女側の存在で、彼女を気に入り、結果的に大量虐殺を犯してしまったビブを匿った。

アン:マリアの住処である「マリアの森」の近くの村に住む、マリアとは旧知のマーサ(原作では名前のみ登場、アニメでは寝たきりの姿が描写された)と言う老婆の孫。
聖マルグリッドを崇拝する敬虔なカトリック教徒だが、子供ならではの真っ直ぐな視点から、マリアを邪悪な存在と考えず懐いている。

exhibitionの書下ろしに後日譚が描かれたが、マリア本人は(声のみしか)登場しない。




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