side 宵の客―2―
- カテゴリ:自作小説
- 2011/04/12 20:39:28
明るいところで見ると旅の人の顔色は本当に悪くて、疲れているのが一目瞭然だった。どうぞ。と一番ゆったりと座れるソファの席に案内をすると、旅の人はほっとしたように息をついて座りこみ、その足元に重たげな音を立てて手にしていたトランクを置いた。
ホットケーキやフレンチトーストなどではお腹が満たされない。メニューには載せていないのですが、スパゲティを作りましょうか?と、アオイが自分が一番手早く作れる料理を言うと、旅の人は少し申し訳なさそうにしながらも、どこか嬉しそうな笑みを浮かべてうなずいた。
自室にしている隣の部屋からスパゲティを持ってきて、アオイはきゅ、とエプロンを腰に巻いた。
玉ねぎソーセージ、ピーマンにしめじを炒めて、茹でたパスタと合わせて、ケチャップで味付け。どこか懐かしい味のするナポリタンスパゲティに、粉チーズを添えて。どうぞ、と旅の人の前に置くと、ありがとうございます。と旅の人は恐縮するようにそのひょろりとした背中を丸めながら、スパゲティを一口食べた。
うまい、です。
はにかみながらも、心の底からそう思っているのだろう笑顔で、そう言ってくれたから。嬉しくさのあまり頬を紅く染めながら、ありがとうございます。とアオイは言った。本当は、美味しいと言ってもらった喜びのそのままに、あれこれ話しかけたくて仕方が無かったのだが、相手は疲れていてお腹が空いているのだからゆっくり食べてもらわなくては。とそこはなんとか我慢をした。
「ここには、旅行で来たのですか?」
食後のコーヒーを出しながら、好奇心を抑えきれずにアオイがそう尋ねると、旅の人は曖昧に頷いた。
「ちゃんとは決めていないんです。」
そう旅の人は言った。そういう旅行に仕方もあるのだろう。とアオイも小さくうなずくと、旅の人は何故か恥じ入るように俯いた。
「何も、決めていないんです。先に進むかも、どこかに留まるかも。」
そう俯きながら言い、旅の人は濃いめに入れたコーヒーを一口すすった。
コーヒーの芳しい香りにひとつため息をついた旅の人に、それじゃあ一休みですね。とアオイは微笑んだ。
「迷っている間は、この街でひとやすみできますね。」
この旅の人がこの街で一休みしている間、お店にまた来てくれないかな。なんて事をこっそりと思いながらアオイがそう言うと、男は少し驚いたように目を見開き、そしてそうですね。と少し苦笑気味に笑った。
「一休みか。そうだな。そういうことに、なりますね。」
そう笑いながら旅の人は言い、御馳走様でした。と立ち上がった。
重たげな大きな鞄をそれでも持ち上げて、ありがとうございました。と少しだけ明るくなった顔で男は言った。
またどうぞ。と少しだけ疲れが落っこちたその背中にアオイは頭を下げた。
コメントありがとうございます!
喜んでもらえて嬉しいです~☆☆☆
基本はアオイさんの日記で、ときどき三人称の小話を挟んで行こうかな。と考えています。
いや、最初は日記だけで行くつもりだったのですが、色んな限界が来ました(笑)
一人称での描写はやっぱり難しかったです…。
>Mizさん
コメントを消すなんて、もったいなくてできません!!(笑)
本当に、コメントありがとうございました!
最初は一人称での描写の練習のつもりで「アオイさんの日記」を書いていたのですが、まだそこまでの技術はありませんでした~。
そんなわけで、逃げの一手だったのですが(笑)喜んでもらえて幸いです!!
そして、そうですね!自分の日記にコメントが書かれてたら、「アオイさん」は吃驚してしまうに違いない(笑)
兎にも角にも、コメント、ありがとうございました!!
ココに書き込んでもいいのか悩んだけど書いちゃいます。
もしアレなら消してくださいませ。
むしろアオイさん宛に書いてるので読んだら消して貰った方が気が楽かも(笑)
日記調と、その時の様子が別々に書かれているのは、とてもいいと思いました。
なぜなら、やっぱり細かいところが分かりやすい。
あと「アオイさんの日記」にコメントを残すのは、どうなのかな?と思って書き込めなかったから。
だって盗み見してるって事になりそうじゃない?(笑)
こっそりお店に忍び込み、プライベートルームにまで入り込み、日記を読んじゃうMiz……
そこに書き込まれる謎のコメント……ホラーになっちゃう!(笑)
そんなわけで、これからも「アオイさんの日記」も続けて欲しいな。
引き続き楽しみにしています。
いちファンより^^
こういうのとても好きです。素敵です!!
これって続きあるんですよね?
あるのだったら楽しみです!!
そしてついでに勧誘です。
私、【春秋社(仮)】っていうサークルやっています。
よかったら入って見て下さい!!
続きあったら、また訪問させていただきます!!