8月家具で改装しました。
ブログには書いてない、一個前の改装と似てるけど気にしない！（笑）

民宿、というか安宿というと浮かぶイメージがあります。
ランデヴーという昔のドラマに出てくる、岸田今日子が女主人をやってたホテル。
（このドラマ分かる人いたら嬉しいけど、いないだろうなぁ…だってしらべたら1998年のドラマだったよ）
今でも覚えてて、雰囲気があって、すごく好きな感じでした。
あの雰囲気を再現したいなぁ、とも思ったのだけど、できませんでした（笑）

――――――
「やっぱり恋愛したかったわぁ」
安ホテルの前庭に置かれた古びたソファに陣取って、前触れも無くそう言ったのは黒招きネコだった。
「え、恋愛？」
突然、なんの前触れもなくそんな言葉が出てくるとは思ってもいなかった私がそう聞き返すと、そう、恋愛。と黒招きネコは真顔（とはいえ表情は基本のっぺりしてるんだけど）で言ってのけた。
真昼の暑い盛りを過ぎて、日も落ちたこの時間。昼と夜の狭間の、少しだけ夜に近づいた時間帯。青い空気が夕暮れの涼しい風と共に周囲に満ちていた。
黒招きネコは宇治金時を食べていて、私も氷を食べようか、それともビールか梅酒などのアルコールでも飲んでしまおうか。なんてことを頭の片隅で考えたりしながら、もう一度、確認するように口を開いた。
「あの、恋愛って、あの恋愛よね？」
もしかして知らないうちに、レンアイという名前のかき氷ができたんじゃないか。などという愚かな思いつきは、黒招きネコの冷たい視線で消えた。
「ほかに恋愛というものがあるならば、聞きたいくらいだけど」
「そうよね、恋愛って言ったらひとつしかないわね」
少し機嫌を損ねた様子の黒招きネコをとりなし、それで、と私は首をかしげた。
「それにしても何故急に、恋愛？」
「今年の夏が何事も無く終わってしまいそうだからよ」
「海にも行って、花火も見て、皆でバーベキューもしたじゃない？」
「確かに楽しかったわ。だけど、全て女子だけの集まりだったじゃない」
私はときめきも欲しかったのよぅ。
そう金切り声をあげる黒招きネコ。悪い子ではないけれど、時折感情的になるのはいただけない。少し離れた場所で井戸端会議をしている招き猫（大）と雪だるまが迷惑そうな視線を向けてきたのが痛い。ほかの人の迷惑よ、とたしなめると、失礼、と肩をすくめた（ように見えた）
「ちょっと興奮が過ぎたわ。このまま夏が終わってしまうと思うと、つい、ね」
「まあ、気持ちはわかるけど。でも恋愛なんて無理をしてするものじゃないでしょう？」
そう諭すように言った私の言葉に、黒招きネコはつまらなそうに顔をしかめた。
「それは正しいけれど、面白みがないわよ。それに恋愛なんて基本的に錯覚みたいなものだから、ちょっと強引にことをすすめるぐらいの方がいいのよ、多分」
そう言い切って、黒招きネコはふんと鼻を鳴らした。
「よしわかった。競争よ」
「え、何？競争？」
再び唐突に放たれた言葉についていけず目を白黒させていると、黒招きネコはまるで宣誓をするかのように片手を上げて、のたまった。
「夏が終わる前までに、先に彼氏を見つけたほうが勝ち」
「それって拒否権は？」
「ありません」
厳かに宣言されてしまった恋愛競争に、私は軽く頭が痛くなるのを感じながら、空を見上げた。
昼間の湿度が冷えて水滴になったのか、淡く光る月が輪郭をにじませていた。