春雷
- カテゴリ:自作小説
- 2011/04/15 20:54:16
今日の夕方のちょっと前のこと。
お店には、いつも自転車でやってくる男の子と、すっかり常連になってくれた花柄さんとそのお友達(花柄さんは常連さんになってくれたのに、名前をまだ聞いていない。何となくタイミングを逃してしまったの)がそれぞれの席でコーヒーを飲んでいた。
私はカウンターの脇に立ってグラスを拭きながら、時折花柄さんとお喋りをしたりしていた。
そんな感じで呑気にしていたのだけど。不意に、がたがた、と大きな音を立てて風が窓ガラスを揺らしたから、その音に吃驚して窓の外を見たら、気がつくともう、雲行きが怪しくなっていた。
これは雨が降るかもなぁ。そんな事を思っていたらもう、あっというまに辺りは真っ暗になって大粒の雨がぼたぼたと降り始めて。季節の変わり目の、冬と春のせめぎあいが空の上で始まっていた。
びゅうびゅうがたがたと強風が窓を揺らして、ばちばちと雨粒が家の屋根や外壁を大きな音を立てながら叩いた。
ぎしぎしと風で窓や外壁が軋むのに、このお店が飛んでいってしまったらどうしようって思ったりもして。
ちょっと風の音が怖いから店内のBGMの音量を上げようかな、って思った時だった。
がたがたと風が一段と強くなって、そして、暗雲で真っ暗になってしまった窓の外で目が眩むほどに鮮やかに白い光が、一瞬またたいた。
あ。と思った瞬間。どかんとまるで何かが爆発したんじゃないかと思ったほどに大きな落雷音が響き渡った。
あまりに大きな音に、きゃあ。って思わず叫んでしまって。
そして近くに雷が落ちたせいで、電気も消えてしまって。
どうしよう。って思ったら、またごろごろぴしーん、って大きな音で雷が追い打ちをかけてくるものだから。
情けないことに、お客様が居る事も忘れてその時の私は泣き出しかけていた。
そしたら、暗闇の中で花柄さんが、わーあああ。って大きな声で叫んだの。
雷に負けないくらい大きな声。だけど雷と比べてちっとも怖くない大きな声。
なんだか楽しげな節を付けて、わーあああ。って花柄さんは雷に合わせて大きな声で叫んだ。
思わずキョトンとしていた私に、叫べば怖くないわよ。って真っ暗ななかで笑いながら花柄さんは言って、わーああああ。ってまた、叫んだ。
わーああああ。って、花柄さんが叫んで。その横で、くすりと笑みを落としながら花柄さんのお友達もわーああ。って叫んで。自転車の男の子も、お二人に負けないくらいわーああああ。って大きな声で叫んで。
私も、わーああああ。って叫んでみた。
気が付いたらもう、雷はどこかに行ってしまっていた。
コメントありがとうございます☆
面白く感じていただいて、良かったです!
アオイさんと違って、私は雷が鳴ると喜んじゃうタイプです(笑)
読んでいただき、ありがとうございました~☆
読んでいてとても面白かったです!!
他のも読ませていただきますね!!