side 春雷・3
- カテゴリ:自作小説
- 2011/04/16 16:33:17
「わーああ、あ、あ、ああ。」
節を付けて歌うように、ヤマブキはそう叫んだ。
がらがらごろごろ、響く雷鳴に重ねるように、ヤマブキは叫んだ。長い付き合いでヤマブキの奇行に馴れているカスミが、くすりと笑みをこぼした。アオイと自転車の少年が、突然叫び出したヤマブキにキョトンとしているのが暗闇の中でも伝わってくる。それでも、ヤマブキはむしろそれを面白がるように再び、わーあーあ、あ、ああ。と叫んだ。
「叫べば怖くないわよ。」
そうヤマブキは言い、ぴかりと雷が光った瞬間に合わせて、あーあああ、あ、あ。と叫んだ。
「わーあああ、ああ、あ。」と、ヤマブキの横で苦笑しながらカスミも叫んだ。
「わーああああああああ。」と、ヤマブキに張りあうような様子で自転車の少年も叫んだ。
「わー、あああ、あ、あ。」と、ヤマブキはまた、楽しげに節を付けて叫んだ。
「わ、あーああ、あ、あ。」暗闇の中で、少しだけ涙で湿り気を帯びたアオイの声がそう叫んだ。
そんな事をしていたら、気がついたらもう雷はどこかに行ってしまっていて。
強風に雲は見る間に流れ去り、再び空に明るい青が戻ってきた。
「ありがとうございます。」
雨があがった後、それでもしばらく長居をしていたヤマブキとカスミが店を出る事には、もう夕日が空を赤く染めていた。
会計を済ませて席を立った二人にアオイがどこか恥ずかしそうに微笑みながら頭を下げた。
「さっき、本当に助かりました。」
そう言ってはにかむように微笑むアオイに、お礼を言われるほどの事はしていないよ。とヤマブキが照れていると、むしろ邪魔をしていたからね。とカスミが横から口をはさんだ。
「ヤマブキ、あなたがあそこで出しゃばらなかったら、少年のもうひと押しが見れたかもしれないのよ。」
「しまった。その通りだわね。私、馬に蹴られてしまうかな。」
「そうね。邪魔をしたのだから、蹴られて死んでしまうかもしれないわね。」
「うん、じゃあ帰り道は、馬に近づかないように気を付けるわ。」
ヤマブキとカスミの意味不明なやりとりに、きょとんと目を丸くしながらアオイは、再び頭を下げた。
「でも、本当に助かりました。」
ぺこり、とお礼を言うアオイに、また来るわね。とヤマブキは笑った。
――――――
タウンで、馬を背負っている人がいるからなぁ。と思ったので。
そうです~☆
ヤマブキさんは、とても書きやすかったです。
「アオイ」さんよりも、自分と性格が似ているからだろうか。
アオイさんは傍から見るとやっぱり、おっとりと頼りなげに見えるんだなぁ。と書きながら思いました。
日記を書きつつ、時々いろんな小話。という感じで好き勝手に書き綴っていくのだろうな?って感じです。
(本人もまだ方向性を模索中・笑)
突然にこんな感じで視点を変えて書いてみたりとか、誤字とか(笑)ありますが、今後もよろしくお願いします☆
ヤマブキさんとカスミさんは花柄スカートの2人組の子かなぁ。
ヤマブキさんから見たアオイさん像が見られて(読めて)楽しい ('-'*)