side エプロンとブーケ・2
- カテゴリ:自作小説
- 2011/06/06 21:23:03
「何言っているの、アオイちゃん」
「そうよ。今日のお祝いの主役はあなたなのに」
「今日は、アオイちゃんの結婚式でしょう?」
三人のとんでもない言葉に、えぇっ、とアオイは素っ頓狂な声を上げた。
「けっこんしきって、あの、あの結婚式ですよね?」
思わずそう確認をするアオイに、そうよ、あの結婚式よ。と可笑しそうに笑ってヤマブキが言った。
「もー、もしかして今日が自分の結婚式ってこと、忘れていたの?アオイちゃん」
「え、と、忘れたというか」
というか、いつの間に自分は結婚することになっていたのだろうか。
今日はなんだか驚きっぱなしだなぁ。とアオイが呆然としていると、マロがぐいぐい、とアオイの足元を押してきた。
「え、マロ、どうしたの?」
「マロは早く着替えたりとか準備をしてこいって言っているのよ」
「え、え、でも、私、ドレスも何も持っていないですよ?」
途方に暮れたアオイがそう言うと、ええっ、と今度は三人が驚いた声を上げた。
「どうするの?式はもうすぐ始まっちゃうよ?」
「どうしようもこうしようも…、もうこうなったら、アオイちゃんの手持ちの服でおしゃれするしかないよ」
「じゃあ、ブーケは庭の花でつくりましょう」
三人はそう言って、いまだぼんやりとしているアオイを中心に、わたわたと動きだした。
ケーキを運び入れて、シャンパングラスのタワーを作り、蓄音機にレコードをかけて心地よい空間を作り出して。
「さて。アオイちゃんの服、どうする?」
「ね。裾が長いからこれはどう?」
「ん~、和風すぎるわね」
「じゃあ、こっちは?」
着飾る算段をしている三人に囲まれて。
アオイはとても基本的な疑問を結局聞けずにいた。
それで、私、誰と結婚するんだろう?
誰のお嫁さんになるのかな。と首をかしげていたアオイの耳に、ギイ、と入り口の扉が開く音が聞こえてきた。
「あ、来た」
ナンテンの言葉に、はっとアオイは顔を上げようと、した。