Nicotto Town


アオイさんの日記


side エプロンとブーケ・2

「何言っているの、アオイちゃん」
「そうよ。今日のお祝いの主役はあなたなのに」
「今日は、アオイちゃんの結婚式でしょう?」

 三人のとんでもない言葉に、えぇっ、とアオイは素っ頓狂な声を上げた。

「けっこんしきって、あの、あの結婚式ですよね?」
思わずそう確認をするアオイに、そうよ、あの結婚式よ。と可笑しそうに笑ってヤマブキが言った。
「もー、もしかして今日が自分の結婚式ってこと、忘れていたの?アオイちゃん」
「え、と、忘れたというか」
というか、いつの間に自分は結婚することになっていたのだろうか。
 今日はなんだか驚きっぱなしだなぁ。とアオイが呆然としていると、マロがぐいぐい、とアオイの足元を押してきた。
「え、マロ、どうしたの?」
「マロは早く着替えたりとか準備をしてこいって言っているのよ」
「え、え、でも、私、ドレスも何も持っていないですよ?」
途方に暮れたアオイがそう言うと、ええっ、と今度は三人が驚いた声を上げた。

「どうするの?式はもうすぐ始まっちゃうよ?」
「どうしようもこうしようも…、もうこうなったら、アオイちゃんの手持ちの服でおしゃれするしかないよ」
「じゃあ、ブーケは庭の花でつくりましょう」

 三人はそう言って、いまだぼんやりとしているアオイを中心に、わたわたと動きだした。
 ケーキを運び入れて、シャンパングラスのタワーを作り、蓄音機にレコードをかけて心地よい空間を作り出して。

「さて。アオイちゃんの服、どうする?」
「ね。裾が長いからこれはどう?」
「ん~、和風すぎるわね」
「じゃあ、こっちは?」
 
 着飾る算段をしている三人に囲まれて。
 アオイはとても基本的な疑問を結局聞けずにいた。
 それで、私、誰と結婚するんだろう?
 誰のお嫁さんになるのかな。と首をかしげていたアオイの耳に、ギイ、と入り口の扉が開く音が聞こえてきた。
「あ、来た」
ナンテンの言葉に、はっとアオイは顔を上げようと、した。




Copyright © 2024 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.