Nicotto Town


アオイさんの日記


side嵐の後

嵐も去って、しばらくしたある日の昼下がり。

いつものように海から遊びに来たイサナにかき氷を出しながら、そういえば、とアオイは言った。
「この間イサナさんを探している人がいました」
「探している人?」
「うん。白衣を着た女の人と、30代後半の男性と女性の二人組です」
なんだか怪しげな人たちだったので、知りませんって言っちゃったんですけど。とアオイが言うと、イサナは少し考え込むようにうつむいた。
「それっていつの事?」
「この間の嵐の日です。ほら、皆で夜中じゅうゲームをした」
そうアオイが言うと、ああ、とイサナは微かに笑った。
 ヤマブキさんはすぐにむきになるから面白い、とイサナは思い出しを笑いをし、けれどすぐにその表情を硬くした。
 やっぱり知らないふりをしていて良かった、とアオイが思っていると、ここにもう来ない方がいいのかも、とイサナは呟いた。
「厄介事に巻き込まれたら、アオイだって嫌でしょ?」
皮肉の交じった口調でそんなことを言う。イサナ特有のその物言いに、アオイは苦笑しながら首を横に振った。
「何が起こっているのかよく分からないけど。イサナさんが嫌じゃなければ私も嫌じゃないですよ」
そう言って、アオイは少しからかうような口調で、けれど、と付け加えた。
「イサナさんがここに来るのが嫌じゃなければ、の話ですけど」
「なにそれ。そんな風に思ったことない」
「そんな風ってどんなふうですか?」
アオイの珍しく意地悪な物言いに、イサナは軽く眉を寄せてため息をつき、言った。
「別に、嫌じゃないよ」
その返事に、よかった、とアオイは嬉しそうに微笑んだ。




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