Nicotto Town


アオイさんの日記


side ハロウィン・1

「ハロウィン?」
「そう。街中はハロウィン仕様になってるのよ、もう」
そろそろ空気が肌寒くなってきたあるひ、お店にやってきたカスミが瞳を輝かせながらそう言った。
「もう数日したら街中仮装した人たちであふれかえるわよ、きっと」
今年はヴァンパイアの格好が流行みたいね、なんて事をおしゃべりするカスミに、アオイはそうなんだ、と温かなカフェオレとビスケットを出しながら思った。
 つい先日まで、街が誕生した記念のパーティでドレス姿の格好の人があふれかえっていた。かくいうアオイも、路行く人々の着飾った姿を目にして思わずドレスを買ってしまったりしたのだけど。
 それにしても、つくづくこの街はそういったお祝い事に目がないらしい。
「それにしてもハロウィンの仮装って、当日だけじゃないんですね」
「勿論当日だけ仮装してもいいのだろうけど、どうせならば長く愉しんだほうがいいでしょ?」
「それもそうですね」
カスミらしいその言葉に、アオイはくすりと笑った。

 次の日。
 早速アオイは買出しの途中で洋品店に寄ってみた。まだ買うか決めたわけではないので、ショウウィンドウの外からそっと覗く。
 カスミの言葉の通り、どうやら今年はヴァンパイアの格好が流行のようだ。黒を基調にしや衣装や裾の長いマントなんかが目に付いた。中にはステッキや、背中にしょうのか魔方陣のようなものまで売られている。
「これ、可愛いなぁ」
つい目が行ってしまうのは、ひらひらしたスカート。丈が短いような気もするけれど、以前に着たことのある赤い給仕服と比べれば大差ないだろう。
 こういうひらひらした格好が好きなアオイにとって、かなり魅力的な一着だ。
「でもなぁ…」
つい先日、ドレスを買ったばかりである。高い買い物ではないけれど、安くもない。それに似たような形ならば同じようなものを持っている。
 でもおしゃれは心の栄養になるし。とショウウィンドウをアオイがにらみつけていると、不意に横からどうしましたか?と知っている声がかかった。




Copyright © 2024 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.