「アオイさん、眉間にしわがよっていますよ」
笑いながら声をかけてきたのはサハラだった。変なところをみられてしまったと頬を赤らめながらアオイはこんにちは、と頭を下げた。
「こんにちは、ところで、アオイさん。店で仮装パーティでもするんですか？」
ショウウィンドウとアオイを交互に眺めながらサハラがそう問いかけてきた。その言葉に、アオイは慌てて首を横に振った。
「いえあの、迷っているんです。可愛いなぁとは思うけれど、最近買い物しすぎだし、それに似合うかどうかわからないし…」
「まあ、でもアオイさん、こういう格好は似合うと思いますよ」
そう言って、仮装するならば教えてくださいね、とサハラは微笑んだ
「え？」
「俺も実はハロウィンの仮装したいんだけど、仲間がいないとなかなか踏ん切りが付かないので」
一人で変な格好をするのはなかなか勇気が要りますよね、とサハラは苦笑を浮かべながら言った。

「それで結局買ったの？」
夜の庭先、浜辺に座り込んだアオイに半身を海に浸したままの状態でイサナが問いかけてきた。その言葉に、ううん、とアオイは首を横にふり、言った。
「結局、まだ迷い中なんです。その代わりにマロにアクセサリーを買ってみました」
「アクセサリーっていうか、アフロのかつらじゃん」
アオイの趣味は時々変よね、と呆れた声を出しながらイサナは横にちょこんと座り込んでいるマロの頭をもふもふと撫でた。

ー海底への路は閉ざされてしまったけれど、時折イサナはこうしてこっそりとアオイの暮らす島の浜辺へ遊びに来てくれるようになった。見つかったらフカやオトヒメ様に叱られるらしいので、こっそりと、短い間だけだけれど。
　見つかったらそのときはそのときよ。とイサナはヤマブキのようなことを言ってにやりと笑った。けれど、イサナがこうして地上に遊びに来ていることがばれてしまったら、本当はとても大変なことになるのだろう。けれど、一年間会えないと思い込んでいたアオイにとって、とても嬉しいことだったー

「まあ次にくる時にどんな格好をしているか楽しみにしているわ」
そう言ってイサナはにやりと笑った。
「そんな変な格好はしませんよ」
「変なものが好きなくせに」
イサナの言葉がその通りだったので、思わずアオイが苦笑していると、それと、と言葉が続いた。
「トリックオアトリートだからね、お菓子もたんまり用意しておいてよ」
それじゃあね、と言ってイサナはぱしゃり、と海へと向かっていった。
「それじゃあまた」
波音にかき消されないようにアオイがそう言って手を振ると、波間から一度、癖のある髪がひょっこりと覗き、そしてちゃぷんとイサナは海へと帰っていった。


――――――
久しぶりのアオイさん日記で、誰がどんな特徴だったか忘れかけている罠。
なんか別人！？とか思ったら申し訳ないです。
そしてイサナさん復活です。
だってやっぱり書きやすいとかもあったりしたので…
あんなに盛り上げておいて！というつっこみは自分でしておきます。