雨上がりの宴の街に
- カテゴリ:自作小説
- 2013/04/13 07:37:31
雨上がりの街角に 今日も人ごみは賑わう
ドイツ・フランクフルトの街通りは 差し込む日差しと同時に
華やいでいた。
街角の大きな排水溝から、子猫が顔を出す
続いて親猫の黒猫が、他の子猫も顔を出す
道端では、子供が戦争ごっこをして数人ではしゃぐ。
少し年増な少年が、坂道を自転車で下る。
向かい道のカフェでは、ビールを酌に談話に耽る老人の姿があった。
カフェの店員が、客相手に表情を和ます。
2013.03.24----
道端に群れる黒猫が 今日も所帯じみて聞こえない声で会話を交わす。
カフェのビールを嗜むご老体も、愛想を振りまく店員も
黒猫たちにとってはどうでもいい出来事だった。
彼らはこう言っているように聴こえる。
仲間同士で気をつかいあっている。
今日の街角事情について話している。
街角のおじさんの表情のことについて話している。
群れる数匹の猫のなかには、優雅な身のこなしの猫
痩せた猫、子供のように丸っぽい猫などがいる。
遠くから聞くと鳴き声のようだが、
近くで聞くとちゃんと会話しているのだろう。
向かいの家の窓ではミステリアスな花が首を擡げる。
花はなんの会話を聞いているのだろう。
あの花弁からただよう香りは
あの葉からただようみずみずしさは
すべては水が生み出しているものだとすると
とても信じられる出来事ではなかった。
街の通りの反対側から ミステリアスな花が
猫の集団を見つめる。
今日もフランクフルトは、雨上がりの雫に
晴れやかな日差しが 照りつけるのであった。
-*終わり。*-
すてきな短編です。
身のまわりに存在する全てに敬意している共栄共存 平和を連想する
お話でした。
おぉ、ミステリアスフラワ、黒猫の集会、両方とも混ぜてくださるとは...
そしてなんとも清々しいお話にΣ
フランクフルトの描写から、レンガ造りの通りで寛ぐ人々、香ばしいパンの香り、遠くで響く鐘の音...更にたくさんのイメージが連想されました。
黒猫も花もひそひそと我々にはわからない声で会話しているように見える...なんとも神秘的です。
ドイツの古都という選択と、各キーワードの相性が絶妙でした。
美味しくいただきました、ありがとうございましたm(_ _)m