Nicotto Town


ふぉーすがともにあらんことを、あなたにも。


三日月と研究室

ガラス瓶のなかに揺れる 三日月が
 

猫の眠気を誘い 

底に残った薬品が 妖気を匂わす

割れたフラスコの隙間から 薬品がこぼれ流れる


この研究室は 先代から継いだものだった

飼い猫も 先代から継いだものだった

3歳のころから飼われている

もう3代目だが


マンドラゴラの端くれが フラスコの隙間からはみ出して机を汚す

しみの付いた 本が  異様な実験を匂わす

ひびの入った机が 染み込んだ薬品の 異常さを表す

そこに置かれたランプが 薄暗い異様な部屋を映し出す


「ああ、のどがいたい」

私はそう思った。

人間どものすることにゃ、てんでわからんが

この部屋は環境が悪い。直にわかる。

フラスコの中で“フラスコの中の小人”が踊り出す。


かのフランシスコ・ピサーロは

南米を征服したそうだが、

かの地を開けるが如く

かの地に踏み入るが如く

まさに禁断の毒薬を開けるがごとく、だったのだろう。


一日中分厚い本を眺めさせられていては、

こう博学になっても仕方がない。

本に刻まれた金字が 薬品でかすれて読めなくなっている。

私の座るクッションは 同じく薬品の霧で汚れていた。


壁に描かれた絵には 真理の扉と書いてある。

彼の研究は 哲学に関するものだろう。

へこんだ壁も 傷んだ柱も

この研究室の年季を物語っている。

まぁ、おどろおどろしい話はこれくらいにしておいて。


今日の夕飯は、魚だそうだ。

漁師町からほど近いこの家で

今日も夕飯にありつけるのは幸せなことだ。

鍋からいい匂いの魚がにおってくる。

やつは、今日は何を食べるのだろう。


研究者の頭の中は、時々見えなくなる。

なにを考えているのやら、だ。

自由に暮らせばいいのに、一日中研究室にこもっている。

薬品とおともだちのようだ。


世の中の真実は、時々見えなくなる。

この世の終わりに、何が待っていようとも。


まあ、私には関係ないのだが。


~Fin.~

アバター
2013/04/16 11:30
出来るだけ詳細を描写して活写になるように
してるんですよb

おほめいただきありがとうですb
アバター
2013/04/16 10:52
にゃぁ~…('-'* 不思議でステキ~ いつも思うけど…情景描写がきれいですね~

alfonceにゃんになってる(´∀`*)? 素敵なお話ありがとう~♬♫♬




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